頑張れw
「天罰を収めてくれないかって退魔協会が泣きついてきた」
誘拐から3日後、大学から帰ってきたら碧が教えてくれた。
大学の授業って最近はオンラインで出れるのも多くなったんだけど、碧はそちらが多い。
私は運動も兼ねて大学に行っているのだが、碧は源之助との時間を大切にし過ぎて少し引き篭もり気味。
まあ、碧は大学に行っても授業が終わったら一目散に源之助を求めて帰っちゃうんだからあまり変わりはないか。
彼女なら筋肉が落ちてもなんとか出来ちゃいそうだし、太らないし。
・・・羨ましい。
せめて元素系魔術師だったらガンガン魔術を使えばカロリーを消費できるんだけどねぇ。
黒魔術師だとガンガン魔術を使うとなると死霊の使役とかになるからイマイチ周囲や自分の精神衛生上良くないんだよねぇ。
毎晩コツコツと収納用亜空間を広げる為に魔力は使い切っているが、あれってカロリーを消費しているんかなぁ?
まあ、地味なところで野良猫の霊を一時的に大量に使役して、落ちてるお金探しでもさせると言う手もあるが・・・探させても得るものが少ないとやる気も起きないんだよねぇ。
泥だらけの一円玉が大量に集まっても、あまり嬉しく無い。
ダイエットだと思えばやれるが、今となっては碧と言う強い味方がいるから無理に魔力を消費してダイエットする必要も無いし。
それはさておき。
「二週間で治るんでしょ?
その程度だったら在宅でオンライン経由ででも仕事させりゃあ良いじゃない」
二週間休んだらどの位悪事がバレるか、密かに楽しみにしていたしね。
前世では、『絶対に休まない真面目な人』って実は色々隠れて職場で悪事を働いていた事が多かった。
突然休むことになると色々隠していた悪事が表に出て中々面白いことになる。
裏帳簿とか、悪事を誤魔化すための裏業界の人間への支払いとか。
時折、突然の発作とか日帰り出張中での転移門の故障とかで予期せぬ休みを取る羽目になって悪事が発覚した後の調査に呼ばれ、中々楽しませて貰ったものだった。
まあ、江藤(だよね?)の場合はああも堂々と悪事に参画していたんだから、全然隠していなかったかもだけど。
でも、退魔協会内では公然の秘密だったにしても外部には流石に違法行為とかは隠していただろうし、やはり二週間も突然休む事になったら大惨事になって失脚しないかな〜と密かに願っていたのだ。
オンラインで働けたら色々隠蔽出来ちゃいそうだけど。
「退魔協会だよ?
オンラインで在宅勤務なんて出来る訳ないじゃん」
碧が肩を竦めた。
おっと。
「電話で指示するとか?
そんなに重要な仕事していたの?
二週間程度、交通事故にでもあったら白魔術師を使わないこっちの世界なら休む事になっても不思議はないでしょ?」
と言うか、もしもの時の休職カバーは常時手配しておくべきでしょうに。
「そんなもん、医療機関と手を組んで回復師に治療させるに決まってるじゃん」
そっかぁ。
一般人や回復師に不自由は強いても、自分達はその規制外な訳ね。
よくある話だよね〜。
「ギックリ腰だって治せばいいじゃん」
「白龍さまの天罰だよ?
普通の回復師には治せないよ。
私に酒を飲ませて襲おうとした時も下痢が治せなかったらしいから、今回は諦めて泣きついてくるのが早かったね〜」
ニヤニヤしながら碧が言った。
「ふうん。
つまり、私らに白龍さまに天罰を撤回して下さいと説得させたい訳?」
全部政治家のせいにして、表立った謝罪すらないのに何を言っているんだか。
「今回は政治家の先生のお願いを仲介しただけで、誘拐とかの違法行為は知らなかったんだってさ」
政治家の先生の方からも謝罪は無かったけどね。
流石に違法行為を認めたら政治生命が終わりという事で、二週間寝て過ごす事にしたらしい。
江藤の方は自分は悪くないとそこまで割り切れていないのかね。
もしくはそこまで偉くないから二週間も寝たきりでは実務面で問題があるとか?
「そう。
じゃあ私からの条件では、『悪行を働くと悪いカルマが溜まり、来世の転生ルーレットが悪い方に偏る』って言う事実を100人の人間に信じさせたら白龍さまに頼んでも良いよって事で」
悪行が避けようがなく自分に返ってくると分かれば悪事を働く人間も減るだろう。
退魔協会だけでも100人ぐらい関係者は居るだろうから、説得は難しくないんじゃない?
「マジ?
それは・・・良いかもね」
碧が吹き出した。
まあ、100人に信じさせたかをどうやって確認するかは問題だけど。
その努力をする過程で少なくとも退魔協会の人間がカルマと転生の事実を信じてくれればいい。
白龍さまの後押し無しにカルマの話を信じさせられるかは知らないけど。