表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
197/1360

カルマってあるんだよ?

さて。

帰るとするか。


どうせなら最低でも最寄りの駅まで送って貰いたいところだが、誘拐犯は二人とも天罰で碌に身動き出来ないっぽい。

勝手に車を借りて駅のそばのコインパーキングにでも乗り捨ててくる事も考えたが、軽自動車ならまだしも、こんなミニバンの運転なんて自信が無いし、どっかにぶつけたり擦り付けたりしても困る。


第一、下手にヤクザ(多分)の車なんぞ運転していて警察に止められたりしたら、話が面倒になりすぎる。


嫌がらせも兼ねて退魔協会担当の田端氏を電話で呼び出して誘拐されかけたと通報するのも面白そうだが・・・あまり退魔協会のヘイトをかき立てるような行動は取らない方が良いだろう。


取り敢えず、バッグの中から携帯を取り出し、移動案内アプリを立ち上げて帰宅ルートを確認する。


普段は電池節約の為(プライバシー保護も兼ねて)GPSをオフにしているのだが、それをオンにして確認したところ・・・現在地はかなり駅から遠くて不便な場所だった。


駅まで歩いて電車で帰ると1時間以上掛かるらしい。

しょうがないのでタクシー会社のアプリを立ち上げて、呼び出しボタンを押した。

このタクシー代は協会の江藤氏(だっけ?)に請求しよう。

今回の誘拐騒ぎの費用だと言えば、きっと払うだろう。

文句があるなら『先生』とやらに請求し直せばいいんだ。


「そう言えば、カルマって存在するんですよ、知ってました?」

タクシーの待ち時間が5分と出てきたので、暇つぶしに髭もじゃに話しかける。


『うむ。

全ての業は生き物の魂に刻み込まれ、記録される』

白龍さまも私の嫌がらせに協力する気になったのか、私の言葉を後押ししてくれた。


「・・・それがどうした」

髭もじゃが宙に浮く白龍さまを凝視しながら尋ねる。


「悪事を繰り返すと悪いカルマが積み重なって、次の転生の際に悪い影響を及ぼすんですって。

悪人同士で殺し合ってもカルマに大した影響はないかも知れないけど、お偉い政治家の先生の為に一般人を脅したり痛め付けたりしていたら、次の命は『貧乏人』どころか『畜生』か『虫クズ』になるかも?

ヤクザなんて鉄砲玉として早く死ぬことも多いんでしょ?

死んじゃってゴキブリに生まれ変わったりしないように、今からでも頑張って良いカルマを少しでも稼いでおいた方が良いんじゃない?」

別に政治家の悪事を暴く事が善行として悪いカルマを打ち消すのに役立つかは知らないが。


『まあ、犬や猫の命も悪くは無いとも思うがの。

源之助なんぞ、甘やかされて碧よりも良い生活をしておる様な気がするぞい』

白龍さまが私の言葉を肯定する感じで応じた。


髭もじゃの顔が固まった。

いや、元々固まっていたんだけど、更に凍りついた感じ?


今までだって『呪ってやる!』とか『碌な死に方をすると思うな!』ぐらいの事は言われてきただろうけど、威圧感満載の氏神さまにカルマが存在し、自分の来世が今世の悪行に影響を受けて劣化すると言われるのはかなりのショックなのだろう。


ピー。

アプリから通知音がした。

どうやらタクシーが来たらしい。


「それじゃあ、帰ります。

二度と会う事は無いと期待していますね」

そう言い捨て、倉庫から出た。


折角の捨て台詞なのに、中々出口が見つからなくって手間取ってしまったのでちょっと格好良さ半減だったけど。


◆◆◆◆


「お帰り!!

大丈夫だった?!」

タクシーでは15分程度で家に着いた。

タクシー代を払い、しっかり領収書を受け取って部屋に上がると碧に熱烈に歓迎された。


「ただいま〜。

帰るのがちょっと遅れたけど、殴られもしなかったし特に問題なし!

白龍さま、今日はありがとうございました」


『うむ。

碧の大切な相棒だからの』

タクシーを乗った時点で碧の元に戻っていた白龍さまが碧の後ろでふわりと尻尾を振って応じた。


「ごめんね、私のせいで巻き込まれて」

碧が情けない顔をして謝ってきた。


「いやいやいや。

悪いのは政治家と、そいつに安易に協力したあの協会のおっちゃんでしょ。

碧に責任はこれっぽっちも無いよ。

まあ、気になるんだったら、タクシー代をあの江藤とやらに請求するのを協力して」

それに、これで今後は協会から私を使い潰そうとするような行動もなくなるだろう。


碧と出会わずに独自に何処かで退魔協会の事を知って登録していたら、誰にもコネの無い若い退魔師なんぞ協会に都合良く使い潰されていた可能性はそこそこ高い。


今回の騒動で、それなりに白龍さまの保護があると知らしめる事になったのは却って良かったかも知れない。


「任せて!

慰謝料もついでに請求しておくから!!」

碧が熱く請け負ってくれた。


「しっかしさぁ。

ヤクザとか政治家まだしも、退魔師がヤバいカルマを溜め込む様な悪事に加担するって何を考えてるんだろ?」

退魔協会内でのちょっとした派閥争いとかでは無いのだ。

誘拐とか、人身売買なんてどう考えても真っ黒だろうに。

まあ、私がどっかの娼館に売り払われる前に碧が折れると思っての行動だろうが、それでも悪事である事に変わりはない。


「いや、退魔協会はカルマの存在なんて信じてないでしょ?

私も白龍さまの話を聞くまで実在すると思ってなかったし」

碧があっさり答えた。


なるほど。

迷信だと思われて信じられていないのか。

本人達が迷信だと思われている退魔師の癖に。

笑えるね。

まあ、私も白龍さまに言われるまでは転生しても半信半疑だったけど。


「江藤氏の来世はゴブリンか、野良犬か、ゴキブリか。

ある意味楽しみだね」

ゲームやラノベみたいに人のカルマ値が読めれば面白いのに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ