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ろーるけーき

おやま。

流石神様。

ミニチュアサイズでも私の魂が普通と違っているのが視えるらしい。


碧とはこれから一緒に戦い、働いていきたい。だとしたら、秘密は少ない方が良いだろう。

『実は私、前世は魔術師だったの』なんて自分からは言い出しにくいが、白龍さまが聞いてくれたお陰で信じて貰いやすくなった。


とは言え、氏神と言う人間を超越した存在から私がどう見えるのかは気になる。

「そうですね、ちょっと人とは違うと自覚していますが、白龍さまにはどんな風に視えているのですか?」


『人の魂は木の幹の様なものなんじゃ。

表面が今世、中の年輪が過去に積み重ねてきた経験とカルマじゃ。

だが、お主は層にはなっているがまるで『ろーるけーき』の様じゃ。

ここまで過去が分厚くてはっきり視える人間は初めてじゃの』


ロールケーキっすか。

中々上手い表現だが、なんとはなしに微妙な気分にもなる。

しかもカルマってやはり存在するのかぁ。


あの転生魔法陣を解読できた限りの推測だと、私の転生は一応知性がある存在に限定されると思われる。

だが、カルマがあるとしたら・・・悪事を重ねたらどうなるんだろう?

隷属状態でやらされた悪事でゴブリンになったのだ。

自発的に悪事を重ねてマイナスなカルマを増やしたらそれこそ昆虫とか動物に転生する筈なのだろうが、あの魔法陣のせいで対象がある程度以上に限定されている。


そうなると、何が起きるのだろうか。

延々とゴブリンやオークとして繰り返し生まれてくるとか?

それとも、めっちゃ悲惨な状況に生まれるのだろうか。


ゴブリン生では幸いにも覚醒してほぼ直ぐに老衰死したが、オークの寿命ってどのくらいなんだ?

オークとかオーガで何十年も生きるのは嫌だけど、自殺がカルマに与える影響が分からないから次の転生へのショートカットを取るのも怖い。


・・・元々悪事に手を出すつもりはなかったが、これまで以上に頑張って清く正しく生きるよう心掛けよう。


それはさておき。

白龍さまが私の様な人間を見るのが初めてと言う事は、どうやら碧の知り合いに転生者は居ないらしい。

退魔の仕事の時は安全の為に白龍さまが同行しているんだろうから、一緒に仕事をした他の退魔師とかを白龍さまも視ているだろう。


その中に転生者はいない、と。

そのうち退魔協会のセミナーとか忘年会に白龍さまも参加してくれないかなぁ。

それとも退魔協会に転生者は一人も居ないのだろうか?


「私、前世では魔導師だったの。

魂が『ロールケーキ』状なのは、私が過去の記憶を持っているからだと思う。

だから魔術の使い方は独学って言うよりも、過去の記憶って言った方がより正確だね。

まだ今世では試した事は無いけど、前世では悪霊退治もやった事があるから問題なく出来ると思うよ。

多分だけど」

碧を見つめながら告げる。


「転生?マジで?」

碧が目をひん剥いて聞き返してきた。


「マジで。

剣と魔法の世界で、魔物もいたよ。

ダンジョンは無かったけど」


奴隷同然な状態で命じられたからといっても酷いことをやってきた過去の詳細は語りたくないし、転生の魔法陣についても言及しないつもりだ。

『何故か記憶が残っている』で押し通す。


『自分もラノベ生活クラブで研究した事を活かしたいから転生させてくれ』なんて言われたら困る。


ずっと転生し続けるのだ。

いつか疲れ果てて後悔する可能性だってあるから、頼まれようが人に使う羽目にはなりたくない。


白龍さまが他に転生者を見たことがないと言うのも気になる。

あの魔法陣を開発した古代文明の人達だって転生魔法陣を使った筈だ。

彼らがどこにも居ないのは、単なる確率論的な偶然なのだろうか?

それとも何百年、何千年(はないか?)も記憶をリセットせずに転生し続けることで、魂が磨耗して消滅してしまったのか。


まあ、消滅そのものは構わない。だが、そこに至るまでの摩耗のプロセスが辛そうだ。


「なるほどねぇ。

だから独学で魔術を学んだ人に会ってみたかったんだ」


「寂しいとか懐かしいとかじゃなくて、単に好奇心なんだけどね。

前世の事を思い出したのって15歳になってからだったから、今世の自分が主人格で、前世は記録的な情報って感じなんだ」

そう考えると、あの転生魔法陣はよく考えられている。

これがもっと幼い時点で前世の記憶が戻ったりしたら、今世の人格が過去の記憶に乗っ取られてしまっていたかも知れない。


そうなると一つの人格が絶える事なくずっと続くことになり、それこそそのうち摩耗で狂うだろう。


「前世って本当にあるんだぁ。

白龍さまの話に生まれ変わりとかって全然出てこないから、人間死んだら終わりなんだと思ってたよ」

碧が深く息を吐いて呟いた。


「まあ、死んだら違う世界の違う時代に生まれ変わるみたいだから、白龍さまの様な長生きな存在ですら生まれ変わって再び会えることはほぼ無いんじゃない?

だとしたら本人はまだしも、周りにとっては死んだら完全に終わり。

そう考えると、変に今世に見切りを付けて次に賭けようなんて思われる様な事は言いたくなかったんじゃないかな?」

肩を竦めながらコメントする。


死んでしまったら、例え転生するにしても直ぐに同じ世界の同じ地域に生まれ変わると言うのでない限り再会は無理だろう。

沖縄の人が北海道に生まれ変わるだけで再会の可能性はグッと下がるし、インドや中国、もしくはアフリカなんかに生まれていたら、たとえ同じ時代に生きていても再会は絶望的としか言いようが無い。


再会できるかもなんて変な希望を持つのではなく、精一杯今の人生とその中での人との交わりを大切にするべきだ。


『そうじゃの。

転生を拒否して子孫を見守ることにした霊となら時折昔話に耽る事はあるが、儂の知っている限りでは死後に生を得て再会した者はおらんな』

白龍さまがあっさり言った。


「じゃあ、子孫の守護霊ってどうしたらなれるの?!」

碧が白龍さまに尋ねる。


『まずは、子孫を作る事じゃな』


ははは。

甥とか姪じゃあ駄目なのかね?


まあ、白龍さまとしてはお気に入りな碧に子孫を残して欲しいんだろうから、変な突っ込みは入れないでおこう。






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