子供への注意
ペット可物件を探しに来たと言う家族は、若い30代前半ぐらいの夫婦と小学校に入る前ぐらいの子供だった。
中々お洒落なお母さんだが、あれは共働きタイプかな?
専業主婦系ってもう少し地味な人が多い気がする。
まあ、専業主婦でも子供を保育園か幼稚園に預け、お洒落にお金と時間を掛ける余裕があるならそれなりに綺麗にするんだろうが。
小さい子供がいて大変なのにお洒落もきっちりしている人って職場に毎日出ている人が多い気がするんだよね。
まあ、ママ友付き合いの為にお洒落も必要なのかもだけど。
小さな子がいるのに共働き(かも)で更にペットまで飼って、大丈夫なのかね?
子供へのご褒美チックな感じにペットを与えるのは色々と問題な気がするが。
源之助で実感したが、子猫って中々大変だ。
落ち着きがないし色んな物を噛みたがるし、思いがけないところにも入りたがるし。
子猫だけでも大変なのに、子供までいたら大変さが倍増どころか三倍増ぐらいしそうだ。
それとも、手のかかる子供と子猫がお互いと遊ぶ事でお母さんの手が空くなんて言う効果が期待できるのかね?
難しいと思うけど。
勝手に人の家の問題を考えていたら、青木氏が子供に猫と遊ぶ様誘導して(所持しているおやつを提出させた上でしっかり社員に見張る様言っていた)夫婦にそっと昨日の映像を見せた。
子供がおやつをあげているシーンと、数時間後に輝がぐったりしている場面だ。
胃液を嘔吐しているシーンも私たちが帰った後に見つけたとかで、それも見せていた。
「実は、昨日の晩になって子猫の一匹が急に嘔吐した後ぐったりして慌てて治療してもらったんです。
猫部屋の動画を確認したところ、どうもお子様がチョコのお菓子を猫に与えていた様でした。
それで今日から猫部屋に行く際にはおやつを持ち込まない様お願いすることにしたのです。
昨日の件に関してはお菓子を持った小さなお子様が遊んでいるのに席を外したこちらの社員の責任なので、こちらで予防策を講じていきます。
ただ、これからペットを飼う予定でしたら確認しておきたかったのですが・・・人間のオヤツや観葉植物の多くは犬や猫に食べさせると最悪の場合は死んでしまう事もある事をご存知ですか?
折角ペット可の物件に引っ越して猫と暮らし始めたのに、直ぐに死んでしまったりしたらどちらにとっても残念だと思ったので一応お尋ねさせて頂こうと思いまして」
青木氏が二人に説明する。
責めるのではなく、今後猫を飼うつもりなら気をつけた方が良いですよ〜と情報共有するのか。
中々上手いね。
青木氏は碧に治療費を払っていたが、子供の悪意ない行動なのでと言う事で夫婦に補償は求めないと言っていた。でも、注意喚起はしておかないとまた同じ事が起きたら困る。
下手をしたら猫部屋の猫を引き取り、すぐに死なせてしまって青木氏との関係が拗れる可能性もあるのだ。
しっかり理解して貰っておくのは重要だろう。
夫婦も輝が吐いてぐったりしているのを見て慌てて謝罪していたが、補償するとは言い出さなかった。
ちょっと吐く程度なら謝れば良いと思うのかね?
まあ、実際問題獣医が医療過誤でペットを死なせてもほぼ弁償しない現行の法制度だったら、子供がうっかりお菓子をあげて死なせても補償を求めるのは難しいのだろう。
しかも彼らは青木氏にとってお客さまだし。
まあ、それはさておき。
ちゃんと子供にダメだって理解させられるのかね?
取り敢えずそっと探った様子ではあの子は精神異常者では無さそうだったけど、子供と子猫の組み合わせじゃあ悪意なくても死なせちゃいそうで怖いね。
特に、共働きで親の目がキチンと届かないような環境だと。
暫し猫について話し合い、その後ペット可の物件の資料を見た後、子供(シュウ君と言うらしい)が猫部屋から連れてこられた。
シュウ君はまだ遊び足りなかったのか輝を抱いて連れてきたがったが、『新しい家を見に行かないの?』と言って連れ出していた。
見に行く前に青木氏の前で足を止めていたが。
不思議そうな顔をして両親の顔を見上げたシュウ君に、お母さんがしゃがみ込んで説明し始めた。
「猫ってシュウ君と違って耳が立ってるし4本足だし、ふかふかな毛で覆われているでしょ?
この子たちは私たち人間とは違うの。
だからシュウ君の食べる物をあげると気持ち悪くなっちゃう事もよくあるから、シュウ君が大好きなオヤツでも猫ちゃんにあげちゃ危険なのよ。
輝君も昨晩、シュウ君があげたチョコのせいで気持ち悪くなっちゃって大変だったんだって。
これからは猫ちゃんにシュウ君の食べ物をあげないって約束してくれる?」
上手だね〜。
どうせなら吐いてぐったりしている輝の動画を見せたらいいのにとも思ったけどね。
そこまでやらなくても良いと青木氏は言っていたが・・・確かに、それなりにシュウ君も納得したっぽい。
これでシュウ君がどのくらい今日の注意事項を覚えて居られるかがポイントだな。
子供も子猫も自分の衝動で動き回るイキモノだと思うのだが、源之助はクルミ経由で説明しても翌日には忘れてるからなぁ。
まあ、願わくはシュウ君のご両親がしっかり見張っていると期待しよう。
取り敢えず、シュウ君は私が手を出さなくても大丈夫そうで、良かった。