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無知

「どうやらこの子ですね」

録画していた防犯カメラの映像を早送りで確認していた青木氏だが、30分もしないうちにあっさりそれらしい映像を見つけた。


「・・・子供?」

どうやら部屋を探している両親に連れられて来た子供の様だ。


画面の端っこで、カバンからキノコの形をしたチョコを取り出して、自分が食べつつ寄ってきた輝にもあげていた。


「子供だけで子猫と遊ばせると危険なので、社員か保護者が一緒にいる事になっているのですが・・・ちょっと電話があって席を外した拍子に食べさせてしまったようですね」

他のカメラの画像も確認していた青木氏が付け加えた。


「これからは子連れの場合はおやつを子供から取り上げておいて貰うようにした方が良さそうですね。

この家族は今度初めて猫を飼おうとペット可の物件を探しに来たとの事なので、チョコレートが猫にとって有毒だと知らなかったんでしょう」


そうであると期待したいね。

こんな小さな子が小さい命を弄んで楽しむ危険な精神異常者だと思うのは怖すぎる。

マジでホラー映画みたいだよ。


まあ、それまでの遊んでいる様子は普通だったから、多分無知からきた行動だと思うが。


「ここの猫部屋で猫の魅力にメロメロになってはじめて猫を飼う事にした人向けに、パンフレットでも作って貼っておいて配ったらどうです?

ポトスがダメとか、百合は滅茶苦茶危険だとか、コーヒー、チョコ、玉ねぎやタバコの吸い殻で猫は死んでしまう事もあるって」

安易に『可愛いから』だけで飼い始めては危険だ。


「それは猫部屋を始めた時に考えたんですが、あまりにも危険な植物や食べ物が多すぎて・・・さらっと目にして理解できるサイズに纏められないのですよ。

だから全般的に人間の食べ物を与えない様にお願いしているんです」

眉をハの字にして困った顔をした青木氏が溜め息をこぼした。


なるほど。

確かに、源之助を飼い始める時にチラッと調べたら大量に有害とされる物があったね。

お陰で植木鉢のかなりの部分はベランダに追い出されて一部は死滅しちゃったし、食べ物はキャットフードと猫用おやつだけと碧と私で合意した。


今まではちょくちょく食卓やリビングのローテーブルに出してあったおやつ類も全て食べ終わったら即時撤去となったし、誤食しないようにオヤツとかおつまみのパッケージも開けたらすぐに蓋つきのゴミ箱に入れるようになったし。


ゴミ箱に関しては認識阻害の結界を張る様になって一々蓋をしなくて良くなって少し楽になったけど、以前に比べるとウチは凄く整理整頓が進んだ。


代わりにあちこちに猫用オモチャが転がってるんだけどね。


「取り敢えずこの家族に関しては、ちょうど明日にまた来る事になっているのでその際に人間用のおやつは危険だと言うのを説明しておきましょう」

防犯カメラの映像を止めて、青木氏が言った。


「何時ぐらいに来るんですか?

一応あの少年が態と猫にチョコを食べさせる様な子じゃない事を確認しておきたいんですけど」

悪意が無かったのなら、良い。

なんらかのストレスが溜まってちょっとした悪戯のつもりだったのだとしても、かなり心配だがなんとかなると思いたい。


何の理由もなく、態と有害なチョコを猫に食べさせたんだったら・・・どうすっかねぇ。

前世では精神異常者を制御する為にも制約魔術を使っていたが、子供にガチガチなキツい制約魔術を使うと副作用がヤバい事もあるし、魔力的に厳しいかも知れないし、何と言っても親から合意を得るのが難しいだろう。


いくら問題行動を起こす子を見かけたからって、手当たり次第に私が自己判断で制約魔術を使いまくるのは危険だ。


制約魔術の存在そのものが退魔協会とかにバレるのも、私が使えると知られるのも不味いし、それを考慮しなくても・・・私が勝手に法の代わりに人を裁いて制約を課していくのは危険だ。


最初は無辜の猫の為にと思ってやっていた行動が、そのうち独善的で独りよがりな正義になりかねない。

自分の判断だけで決めつける正義って言うのは、そのうち判断基準が主観的になっていきそうで怖い。


少なくとも、私は自分をそこまで信じてはいないぞ。

歴史の中で色々とやらかした黒魔術師の中には、善意から色々始めたのに暴走しちゃって悪の権化みたいになった人間がかなり沢山いたのだ。

黒魔術の適性持ちが暴走しやすいのか、それとも人間誰でも独善的になりやすいのかは不明だが。


願わくは、このチョコ少年は無知なだけだと期待しておこう。

ヤバい子だったら・・・碧と相談だな。



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