表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
185/1361

猫と餌

「子猫の水分補給用のスープがあるので取ってきます」

魔力を使って水を飲むよう輝に命じようと思っていたら、青木氏がさっと裏に戻っていった。

猫用グッズはフードや飲み物類も含めて色々と買い揃えてあるらしい。


だったら、不調感を消しちゃえば、空腹感を思い出して自分からスープを飲むかな?


知り合いの買っていた猫用スープはやたらと魚臭くて部屋であげていた時にちょっと辟易としたものだが、オフィスであんな強烈な臭いをさせちゃって大丈夫なんかね?


まあ、臭いやアレルゲン対策として空気清浄機はそれなりにパワフルなのを置いてあるっぽいが。

なんと言ってもうっかり発情期を見定め損ねてスプレー行為をされちゃったら強烈に臭くなるからね。

いくら子猫が客寄せに適していると言っても、悪臭は不潔な印象を与えるから不動産屋としては致命的だろう。


そんな事を考えつつ、輝の不調感を誤魔化していたら、青木氏が小さめのボウルを手に戻ってきた。


意外と臭わないなぁ。

メーカーとかブランドによって臭いも違うのか。

まあ、源之助は別に無理に頑張って水分を摂取させなくても、腎臓や肝臓に問題が起きたらさっさと碧が治すから食べ物も飲み物もそれ程気にする必要はないんだよね〜。


もっとも何も干渉しなくても健康である方が理想的だから、健康的と評判が良いドライフードをメインにあげているが。


ネットの口コミも、どれが信用できるかは微妙に不明だけどね。

ほぼどのどのメーカーも、『獣医監修』とか『獣医オススメ』とかを謳い文句にしているし、比較サイトだってメーカーが金を払って書かせている可能性がそれなりにあるだろう。


どこの誰が書いたのかはっきりしない様なネットの匿名なサイトにどんなスポンサーがついているかなんて、一般の読者は誰も知らない。


まだ、家電とかPCとかだったら価格サイトとか家電店のサイトの口コミをそれなりに見て回れば嵩上げ出来る評価点はまだしも、問題点とかは大体分かった上で買えるが・・・ペットの餌はねぇ。

ペットが喜んで食べているから体に良いとは限らない。

と言うか、人間だってジャンクフードの方が健康的な鳥の胸肉よりも美味しく感じるが、10年とか20年とか続けて食べて長生きに繋がるのは胸肉だろう。


もっとも、猫の場合はある日突然今まであげていたブランドに飽きて食べるのを嫌がる事も多くて不定期的に餌を変える羽目になるので、どの餌をあげていたらどの程度寿命が変わるかも不明だろうが。

源之助の場合は碧がいるから何を食べても長生きするだろうしね。


それはさておき。

「にゃあ!」

不調感を消したせいで空腹感を感じていたのか、さっさと何か寄越せと鳴いていた輝はボウルが出されたら即座に首を突っ込んで舐め始めた。


舐め終わったところで碧が抱き抱えてトイレに動かし、輝はちょっともぞもぞとしていたと思ったらシャーとオシッコをした。


見事だね、碧。

自分の体ですらそうそう思い通りに排尿が出来るとは限らないのに。

毒を全部排出出来たのか、オシッコが終わった輝は元気に碧の手から抜け出して仲間の猫達の方へ突っ込み、追いかけっこを始めた。


おや。

他の猫は別の所に隔離されているのかと思っていたが、上のボックスの中にいたのか。


『クルミ。

母猫や他の子猫達に、今日来た人間で変なのが居なかったか、聞いてみて。

特に、子猫達に何かを食べさせようとした奴』

子猫の集中力は極めて短いから何も覚えていない可能性も高いが、変な人間を察知する勘が優れた猫も多い。


何か気が付いたか、聞く価値はあるだろう。


「ふう。

ありがとうございました。

では、ちょっと監視カメラの方を調べてみますね」

青木氏が安堵と共に大きな息を吐いて、顔を両手で擦ってから立ち上がった。


「このオシッコの固まった猫砂を調べても何を食べさせたのか分かるかも知れませんが・・・この体格でこの濃度だったら、多分夕方の客だと思います」

碧が言った。


血の中の毒とかならまだしも、猫砂に含まれる有害物質を調べられるラボみたいな所ってあるのかね?

犯人を見つけ出して直接聞く方が早いかも。

まあ、犯人を見つけ出せたら毒が何だったかはそれ程重要じゃあないけど。

「ちなみに、あれって子猫がちょっと具合が悪くなる程度だったの、それとも殺す事を想定したものだったの?」

まあ、猫に対する毒の窒死量がどの位かなんて情報はあまり無いかもだが。


「子猫なのよ。

大抵の有害物質で死んでもおかしくないのは分かってやったんだと思う」

碧が不快げに言った。


成る程。

ちょっと気分が悪くなるとか、下痢になる悪戯を人間相手にするのとは違うのか。


猫だったら殺しても良いじゃんと思っているロクデナシがやったんだろうけど、猫を殺す様な奴は人間だって平気で害するタイプだろう。


輝くんを苦しめた罰は、受けてもらおうじゃない。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ