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緊急時の医者?

「どうしましたか?!」

急に起きた騒ぎに、ウェイターが慌てて駆けつけてきた。


「ちょっとバッグの中身を落としちゃって、拾おうとした際に手が触れそうになったらこの人に『触れるな!』って怒鳴られたんです。

その際に急に後ろに下がったと思ったら、突然頭を抱えて倒れてしまって・・・何かストレスで発作でも起きたんでしょうか?」

碧が困惑した様な表情で倒れた男とウェイターを交互に見る。


「どなたか、お医者様はいらっしゃいますか?!」

ウェイターが声を上げるが、誰も反応しない。

どうやら医者は居ないらしい。


上の階に獣医が居るし、隣のビルにはクリニックっぽいのが入っていたと思うが、こう言う場合は現場に医者が居ない場合(居てもか)は救急車を呼ぶ事になっているのだろう。


ウェイターの声に走り寄って来たマネージャーらしきもう少し年上の女性が、携帯を取り出して電話をかけ始めた。


「はい、〇〇駅前ビルの2階にあるスタフォルト・カフェです。

お客様の一人が突然倒れて意識不明の様なので至急に救急車を寄越して下さい。

はい。

脈拍は・・・あります」

首筋を触れて答える。

慌てた様に碧がコンパクトを取り出して男の鼻元につけたら、曇るのが見えた。


「呼吸もしているようです。

はい。

横向きに寝かせてベルトを緩めるんですね。

分かりました」

女性の身振りに従ってウェイターがオペレーターの指示どおりに男の身体を横向きにして、ベルトを緩める。


こうやって呼吸ができる様に気管を確保するんだっけ?

その間に私は男のリュックから財布を取り出して運転免許と保険証を探し出す。

住所はしっかり覚えたが・・・ここに住んでいるのかな?


まあ、数日は入院するだろうって碧が言っていたから、病院へお見舞いに行くフリをしてコンタクトすればいいだろう。


「斎藤・・・タケシ?さんみたいですね。

こう言う場合って店の誰かが付き添うんでしょうか?」

まあ、付いて行っても良いが・・・偶々側にいただけの人間が病院で色々検査している間中ずっと何時間も付き合うと却って怪しまれないかな?


「そうですね・・・田中くん、付き添って差し上げて」

マネージャーらしき人がウェイター君に声を掛ける。


「え?!

・・・わかりました」

哀れなウェイター君はギョッとした顔をしていたが、上司命令で従うしかないと思ったのか、ウェイターのエプロンを外し始めた。

「ちょっと財布と携帯を取ってきます!」

うむ。

待っている間に、そっと男の裾に擦れて昏睡状態をしっかり深めておく。


うっかり意識を取り戻して勝手に退院されても困る。

少なくとも24時間は意識が浮上しない様にしておこう。


数分後、救急車が現れてウェイター君と一緒に慌ただしく消えた。

「何かの縁ですし、もしかしたら私が驚かせてしまったのが発作?の原因かも知れないので明日の朝にでもお見舞いに行きたいと思うのですが・・・どちらの病院に搬送されたか、後で教えて頂けますか?」

碧がマネージャーに丁寧に尋ねる。


クルミを付けているので場所は一応分かるが、どうやって場所を知ったのか怪しまれない様に出来れば店経由で教えて貰いたい。


まだ15時前だから源之助を家に連れて帰った後に病院に行っても良いけど・・・お見舞いって何時まで受け入れているんだろ?


社会人とかが会社の後に来るかもとか考えると、19時とか20時ぐらいまで開いているんだろうか?

それとも忙しい看護婦に余計な負担を掛けないよう、もっと早く店仕舞いしているのか。


「そうですね。

後でお電話いただけますか?私はマネージャーの鈴木です」

マネージャーさんが名刺を出して自己紹介してくれた。


「藤山 碧です。

落ち着いて適切に対応されてらした様ですが、こう言う事って時折あるのですか?」


「ごく稀にはあるので、マネージャー研修の一環として研修は受けているのですが・・・毎回、心臓が止まるかと思うぐらい驚きますね。

では、またいらして下さい」

マネージャーさんが軽く答えながら男が倒れた際にひっくり返したカップ諸々の整理を始めた。


「あ!

ちょっと失礼します」

携帯電話が鳴って、碧が慌てて応答する。

源之助が麻酔から覚めたのかな?





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