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有口無行を希望!

「こちらの席になります」

ランチを食べ終わり、お皿が下げられたのでデザートメニューをゆっくりと見ていたら隣の席に若い男性が案内された。


ちぇ。

それなりにテーブルが空いているんだかたもっと離れたところに案内すれば良いのに。

まあ、既に源之助の手術が無事に終わって後は麻酔から醒めるのを待つだけなので、隣に人が来ても特に問題は無いけど。


それに程よく混んでいる様相に見せかけつつウェイターが楽に対応できる様、案内するテーブルの順番とかも決まっているんだろう。


もしかして、最適化プログラムみたいのがあるんかね?

そんな事を考えつつ、メニューを再度見つめる。


ティラミスとガトーショコラ、クリームブリュレ、各種ジェラートと季節のタルトにイチゴ系とチョコ系のパフェ。

う〜ん。

ガトーショコラは定番だけど当たり外れがあるからなぁ。

久しぶりにティラミスにしようか。


そんな事を考えつつ、碧が決めるのを待っていたら、隣からなにやらブツブツと低い声が聞こえた。


「コロス、コロス、コロス、コロス・・・」


はぁぁ???

一瞬、斑鳩颯人がトチ狂って私を殺しにきたのかと焦ったが、隣に居る男は知らない人間だ。

しかもこちらに注意を払っている様子も無い。


慌ててクルミの分体を呼び寄せ、男の後ろから手元のタブレットを覗き込ませる。

なんかここら近辺の駅の混雑予想グラフを出して人通りを確認しているっぽい?

人通りが多い時間帯を探しているのか、それとも少ない時間帯を探しているのか。


どちらにせよ、不味くない???


「どれにする?」

男の声が聞こえていなかったのか、碧が呑気に聞いてきた。


「あ〜。

ティラミスでお願い。

飲み物はホットのミルクティーで」


碧がウェイターに手を上げて呼んでオーダーしている間に、そっとクルミを男の背中に貼り付かせてそいつの精神を覗き込む。


意識が無いならまだしも、起きている他人に触れもせずに精神を覗き込むのは難しいが、クルミを私の第三の手みたいな感じに使えば少しはマシだ。

まあ、なんか不穏なオーラみたいな感情は触れなくても滲み出ているのが感じられるんだけどね・・・。


これが術者相手だったら精神の読み取りは無理なんだけど、幸いにも相手は特に能力がある訳でもない一般人の様だったので、なんとかクルミ経由で精神の外縁に侵入出来た。


怒りは本人の周りに滲み出ていたが、精神の中も怒りで荒れまくっていた。

今すぐ包丁を取り出して誰か殺しに行っても不思議がないぐらい。


とは言え、特に誰か特定の人物を恨んでいる訳ではないっぽい?

どうでも良い事を態とらしく人前で注意してきたバイト先の男や、こっちをみて笑っていた若い女子高生(女子高生っていつでも笑ってんじゃん。コイツのことなんざ認識もして無かっただろうに)、電車で狙っていた空席に先に座った中年女性、これ見よがしに高級腕時計をしているスーツ姿の男性等々、次々と怒りの対象が浮かび上がっては他の姿に取って代わられている。


う〜ん。

これって単に、世の中が自分の思う通りにならないのを全て人のせいにして八つ当たりしたがっているってやつ???


前世は魔物もいる世界だったしそれなりに死が隣り合わせな社会だったので、八つ当たりの通り魔なんて殆どいなかった。


と言うか、それなりに多くの人間が戦闘能力を持っていたから、ちゃんとそれで上手く稼いでいける人間が多かったし、いけない奴が八つ当たりで周りを攻撃しようとしてもあっさり直ぐに切り殺されたのだ。


だが。

日本は平和ボケの極みなので、戦闘能力なんて殆ど誰も持っていない。

殺意さえ有れば、それなりに人を巻き添えにして死ねるだろう。

まあ、死ぬ勇気すらなく『死刑にして欲しかった』なんて甘えた事を言う奴も多いみたいだが。


銃を振り回して発砲しているならまだしも、包丁を持っているとか車で歩道を暴走とかの場合、人をそれなりに殺すまでは警官が銃殺して止めるのも世論的に難しいだろう。


どうしようかと考えていたら、男がどっかの掲示板に『俺が世の中の間違いを指摘してやる!今時、命は尊くなんてないんだ!!』と書き込んでいるのがクルミ経由で視えた。


うげ〜。

マジでコイツ、通り魔になるつもり??


有言実行とか不言実行ではなく、有言無行を期待したい。

『はいはい、アンタが認められない世の中が間違ってるんだね〜。犯行予告乙ww』

とか他にも男の書き込みを馬鹿にした様な煽り文句が書き込まれていく。


おいおい。

せめて無視してよ。

まあ、無視もあまり良い対応じゃないだろうけど、煽るのは止めろ!!


「どうしたの?」

ちょっとフリーズしちゃった私に碧が声を掛けてくる。


う〜む。

隣にいる男の事をどうやって相談すべきか。




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