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虫除け

「ふんっ!!」

碧が気合を込めて結界を展開する。

うわ〜。

魔力込めまくってるね。

今まで見た中でダントツじゃない?


その威力に押されたのか、冷蔵庫の後ろから慌てた様に2つの黒い物体が飛び出してきた。


「「ぎゃぁぁぁ!」」

窓の方へ逃げようとしたのか、運悪くその方向に立っていた我々の近くまで来る。

思わず悲鳴をあげてしゃがみ込んだら通り過ぎていた。


Gと顔面衝突なんて、悪夢の中でも遠慮したい。

現実でなんて絶対に嫌だ。


恐る恐る立ち上がってGの姿を確認したら、窓際で源之助が蠢く何かに飛び掛かろうとしている。


「きゃぁぁぁ!

源之助、だめよ、そんなのに飛び掛かろうとしたりしないで!!」

碧が悲鳴をあげるが・・・近づけない様だ。

源之助が側にいるから殺虫スプレーを使えないし、飛行Gのショックで結界が途切れてしまったし。


窓を開けて逃しても良いのだが、あのカサカサ動いている存在の方へ手を伸ばして窓を開けるのは難しい。


ここは読み終わった雑誌に活躍してもらおう。


そっと近づき、碧が源之助を確保し、私が雑誌で数回ぶん殴る。

まだこっちは読み終わって無かったんだけどなぁ。

床に落ちて弱々しく動いているGを先程放り投げたチリトリを使ってビニール袋に回収。

まだ脚が動いてるよ。

背中がゾクゾクする。


「碧、もう一度家中に結界を広げて。

《《これ》》がちゃんとそれで死ぬかも確認しよう」


家全体まで広げた結界でもちゃんと中にいるGを抹殺できるのか、確認した方がいい。これがちょうどいいサンプルになるだろう。


「分かった」

碧が力強く頷いた。


結局、家の中にはGが5匹ほど居た。

ビニール袋の中の2匹はちゃんと碧の結界でとどめが刺されたし、碧が『なんか死んだと思う』と言った冷蔵庫の後ろから3匹程死骸が出てきたのだ。


マジで、1匹居たら複数居るんだね、Gって・・・。

外から迷い込んだ単体のハグレGだと思っていたのに。


「これって虫除けのお守りを作ったら売れるかなぁ?」

一緒に協力して動かした冷蔵庫の後ろからGの死骸を回収し、捨てて帰ってきた私に碧がふと呟いた。


「・・・普通だったら殺虫剤とかバルサンとか使うから、あまり需要が無いんじゃない?

第一、あまり虫の命に関与できる事は明らかにしない方が良いよ」

ある意味、黒魔術の死霊使い(ネクロマンサー)が忌み嫌われたのと同じくらい、蟲使いも嫌われる能力だった。


まあ、前世では滅国の職業とも言われる蟲使いが白魔術の適性持ちだと言う事実はあまり広く知られていない知識だったが。


誰も、命を救ってくれた白魔術師が《《あの》》蟲使いにもなれるなんて、噂でも口にしたくないようだったんだよねぇ。

黒魔術師の悪評は有る事無い事広められまくったのに。


「・・・たかが虫だよ?」

「白魔術で虫を殺せるって事は育てる事も出来るって事だからねぇ。

虫って嫌がらせとかにも凄く効果的だし、農村地帯でやれば軍事攻撃並みに効果があるから」


前世では、歴史の中では蝗害で滅びた王朝もあった。

まあ、自然現象の可能性もあるが・・・本来ならば蝗害は強力な白魔術師が居ればそれなりに効果的に対処できる。


それが出来ずに農業地帯の収穫を食い荒らされて国が傾いたのは、途轍もなく上が馬鹿だったか、白魔術師が何処かで虫を増やす方に力を振るっていたかだ。


まあ、それでも死霊使い(ネクロマンサー)が率いる膨らみ続ける不死者の軍隊程の即死性は無いし、自然現象との見極めがつかないので白魔術師には風評被害が無かったが。


「え"?

Gを・・・増やす??」

碧がフリーズしてから、ギギギと音が鳴りそうにゆっくりとこちらに向いた。


「白魔術師なんだよ?

殺すより生かす方が楽でしょ?

多分、ちょっと集中したら虫を育てて繁殖できる結界を作れるんじゃない?」

昔に知り合いから聞いた話だと、黒魔術師が霊を使って使い魔を作るのと同じぐらい簡単に出来ると言う事だったよ?


「止めて〜!!!

虫なんて増やしたい状況は、無い!!!」

寒気がしたのか、両腕を擦りながら碧が首を横に振った。


「虫レベルの存在の生命指標(マーカー)を認識出来ない白魔術師も多いらしいんだけど、認識できるとなったら生かすも殺すも自在って訳じゃん?

まあ、碧が作るお守りからそこまで読み取れるだけの知識がある人間がこの世界に居るかは知らないけど、変な連中に目を付けられない様に、虫関連の魔道具やお守りは作らない方が良いと思うな」

まあ、地球では魔力が足りなくて本格的なテロ行為は難しいかもだが。

ただ、ゆっくりと少しずつ魔力を使っていく魔法陣だったら時間さえ掛ければ規模を大きく出来る可能性もあるので、下手に虫関連の能力は発揮しない方が無難だろう。


いざとなれば白龍さまの天罰攻撃があるとは言え、変な連中の注意を引く様な代物を売り出さない方が良い。

現実的にそれ程金儲けになるとも思えないし。


「なんか、凜の前世って物騒だったんだねぇ。

ありとあらゆる事に危険な使い道がありそうで、剣と魔法の世界のふわっとしたファンタジーさ加減がぐっと減った気がするわ」

溜め息を吐きながら碧が言った。


「言うならば、前世の魔術ってこっちのインターネットとか化学の知識に近い感じ?

凄く便利だけど、突き詰めればハッカーが会社や病院を機能停止に追い込んだり、化学兵器で大量殺戮出来たりするのと同等な技術だったんだよね。

こっちの世界の魔術は言うならば日本の戦国時代の技術って感じかな。

刀と槍で殺し合っていて危険だし、場合によっては火縄銃ぐらいの武器もあるかもだけどそこまで効率的に人を殺せる訳じゃあ無いって感じ」

それなりに荒っぽいけど、まだ問答無用の危険さは無い感じだよね〜。


是非ともこのまま平和に過ごしたいところだわ。





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