結界って意外と・・・
「ううう〜」
昨日買って来てベランダに置いておいたGホイホイを前に、碧が唸っている。
一晩で、2匹もGが捕まって居たのだ。
Gホイホイで呼び寄せられる様な至近距離に2匹も居たなんて。
嫌過ぎる。
まあ、それはさておき。
対G結界だ。
これさえ出来上がれば、このGホイホイも捨てられる。
ネットで書いてある記事によると乾燥クローブを100円ショップで売っているお茶パックに入れて置いておくだけでもかなり効果があるらしいので、ベランダにはそれを置きまくろう。
猫が食べたら有害らしいので家の中は碧の結界頼みだが、ベランダも排除しておきたい。
源之助を迎えるにあたって猫に有害とされる植木鉢は全部ベランダに出されたので、幾つかは夏の暑さに負けて死んじゃったけど、残りの為に毎日交代で水遣りの為に出ている。
清々しい朝の空気を楽しみながら水やりをしている場面で、Gと顔を合わせたくは無い。
見かけないので居ないと思っていたんだけど、先日家の中に出現したし、Gホイホイにあっさり一晩で2匹も捕まっているし。
事態は思っていたよりも悪かった。
マジで知らぬが仏ってやつだよねぇ。
そのうち源之助が何でも手当たり次第に飛びつかなくなったらベランダに椅子でも出して優雅にお茶を楽しんでも良さそうと思っていたのに、実は近くにGが潜んで居たなんて!!!
さっさとクローブを買わないと。
近所のちょっとお洒落な高級路線系のスーパーには色々と香辛料があったから、クローブも売っているに違いない。
無かったらネットで買えば良いし。
「よし!
出来たと思う!」
これからのベランダ対策を考えていたら、碧が大きな声をあげて立ち上がった。
「じゃあ、効果がちゃんとあるか確認する為に結界をそのままGホイホイの向こうまで広げて」
流石に、Gホイホイに捕まっているGを何らかの手段で解き放って結界に向かわせる訳にはいかない。
なのでGホイホイにいる動かないGに向かって結界を広げていけばいい。
「広がれ〜おら行け〜出てけ〜」
碧が何やら怪しげな言葉を呟きながら目を閉じて集中する。
最初は中々動かなかった結界だが、やがてコツが掴めたのかグイグイっと大きくなり・・・Gホイホイの手前で一瞬とまったと思ったら、3秒後ぐらいに飲み込んで更に広がり、ベランダ全体を覆った。
おやま。
結界にGホイホイが物理的に押し出されるかと思ったが、動かなかったか。
暫し均衡した様に見えた結界にGの生命力が負けて、次の瞬間死んでいた。
ある意味怖いな。
もしかして、白魔術師の人避け結界って無理やり人間を押し当て続けると、死ぬの???
黒魔術の人避け結界は忌避感を感じさせるモノなので、動けない人間がいる場所に無理やり広げると触れていた人間は基本的に気絶するのだが・・・もしかしてあれも長時間そのまま結界内に放置していると精神障害とかの後遺症が残ったり植物人間化したりするのだろうか。
まあ、Gと人間では害するのに要する魔力量が全然違うので、黒魔術にせよ白魔術にせよ普通に設置した結界だったら人が死ぬ前に結界の魔力が尽きる方が早いだろうが。
「もういいよ〜」
目を閉じたままで更に結界を広げそうな碧に声を掛ける。
「どうだった?」
「見事死んでる。
多分、動けるGを相手にやったら死ぬ前に逃げると思うけど。
ちなみに、死んだの感知出来た?」
逃げ損ねて死んだGがいる場合は、それを感知出来るなら死体を見つけ出して処分した方が後で想定外な死骸との遭遇を避けられる。
「あ〜。
なんか抵抗があってそれを押し潰した感覚はあったかな。
よし!
家の中でやろう」
碧が家の中へと戻る。
私はチリトリと箒を使って持ってきたビニール袋へGホイホイを入れて、しっかり口を結んで後に続いた。
あれをそのままベランダに置いておいて更にGを引き寄せる意味は無いからね。
碧がG排除の結界を展開してくれるのだ。まだ家の中にGが居て、碧の結界でGが死んだ場合は私が責任を持って回収して捨てようじゃないか。