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巻き込まれ?

「出しゃばらないで身の程を弁えなさいよ!」

大学の授業を終え、帰ろうと駅に向かっていた私の前に突然現れて声を荒げたのは先日の祝賀会で同じテーブルだった綾川とかいう女性だった。


「・・・はぁ?」

出しゃばるなって何のこと??

身の程を知れって言うのも階級社会だった前世ならまだしも現代日本で言われるのはちょっと違和感があるし。


黒魔導師と言うのは精神や魂に関連する術に適性があるせいか、他の適性持ちよりも人の内面に対する感知力が高い。

だから精神異常があったり、強い敵意や怒りを抱いていると感じる事が出来る。


綾川さんは私に対して敵意と怒りを抱いているが、精神異常がある訳ではないっぽいので変な妄想に囚われている訳ではないっぽい。

まあ、誤解とか思い込みによる暴走って言うのは精神異常が無くても頻発するけど。


「ええっとぉ〜。

何に関して出しゃばったと責められているんでしょうか?」

ちょっと歩道の脇に寄りながら尋ねる。


心当たりが無いし、例えあったとしても出しゃばろうが身の程を弁えなかろうが私の自由だろうと無視しても良いのだが、ある意味態々私の大学を調べてご足労して貰ったのだ。

一応付き合うべきだろう。


・・・どうやって大学を調べたのかとか、私の予定をどう知ったのかとか、気になるけど。

大学の情報は退魔協会が漏らした可能性は高そうな気もするが、授業の日程は退魔協会だって知らない筈。

興信所にでも調べさせたのかね?

勘弁してくれ!


「斑鳩さまの事よ!

どこぞの『愛し子』とやらとのコネを使ってあの方に取り入ろうとするのを止めてちょうだい!」

憤懣やる方ないといった様子の答えが返ってきた。


ああ〜。

あの斑鳩氏ねぇ。

一応同業者としていつか仕事を一緒にする可能性もあるからと言われると連絡先の提供を断れなかったので、仕事用に開設したチャットアプリのIDを教えたが・・・ちょくちょく連絡が来るんだよねぇ。

基本的に碧を含めた飲み会や食事のお誘いなんだけど、碧本人は興味がないとの事なんで毎回断り、仲良くなろうとしているっぽい上から目線な雑談も基本的にスタンプだけ返して気のない応答をしているのだが、まだへこたれて無かった。


ある意味、良い家の御坊ちゃまにしては打たれ強いなと思っていたのだが・・・こちらが興味は無いと態度で示している事に気がついて無いの、もしかして??


私もしくは碧を理由に綾川さんとの付き合いを断ったのだとしたら、斑鳩氏の方がちょっと危険なぐらい思い込みが激しいのかも。


まあ、単に角を立てずに女性を断る方法を考えるのが面倒になって言い訳に私を使った可能性もあるかもだが。

「あ〜斑鳩さんですか。

白龍さまの愛し子である碧と縁を結ぶのに私に利用価値があると思っているのかちょくちょくお誘いのチャットが来てますが、全部断っているんでそのうち諦めると思いますよ?

興信所を雇ったのなら確認出来ると思いますが、祝賀会以来あの人とは会っていませんから身の程を弁えるも何も、関係をこれ以下にはしようがありませんね」


女の敵は女とも言うが、下手すると襲ってくる可能性のあったり、変な自惚れじみた誤解をしたりする男よりは女性の同業者と仲良くしたいので、取り敢えず穏やかに答える。


まあ、家柄重視な考え方が変わらないなら綾川さんとの付き合いは最低限のままの可能性も高いが。

前世の貴族の知り合いでもナチュラルに貴族以外を一段下に見ている貴族の人も多かったけど、意外と知り合うと真面な人もいたんで、取り敢えずは切り捨てずに綾川さんとも対応しておく。


「・・・利用価値、ですか」

綾川さんの怒りの勢いが多少削がれた感じだ。

いや、最初に愛し子のコネを使ってって自分でも言ったじゃん。

自分から使うんじゃなくって相手が使おうと思う場合、それは『利用価値』って言うんだよ?


「食事や飲み会の誘いのたびに、今まで彼が一度も会ってもいない碧も一緒にどうかと必ず毎回言ってくるんですよ?

明らかに私と会う事が目的ではないですよね?」

ここまで露骨だと誤解の余地が無く、断り易くて助かるが。


「・・・なるほど、紹介を拒否したから連絡を取り続けているのですね。

相手の望む様に行動する事が仲を深めるのに必ずしも最適では無いと言う訳ですか。

分かりました。

お時間をいただき、ありがとう」

何やら『利用価値』と言う言葉に思い当たりがあったのか、暫し沈黙したあと軽く頭を下げて綾川さんは姿を消した。


彼女も誰かと一緒に食事をしようと誘われて、応じた後に連絡が絶えたのかな?

もしくは私を言い訳に振られたか。


しっかし。

斑鳩〜!

勝手に人を巻き込むなよ!!



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