あれ??
古い知り合いの娘とその友人が遊びに来たから家族へ紹介と言うことで、岸坂さんに温泉宿の運営側へ案内してもらった。
まあ、『家族』といっても彼女のご両親は転嫁にされててもダメージはないから、今不妊になったら困る夫と、疑惑を持たれてる従姉妹とその女に味方しているかもしれないお祖母さんがメインなんだろうとは思うけど。
とは言え、一応ご両親も紹介された。父親は何やら事務室みたいなところでPCの向かって難しい顔をしていて、ちょっとストレスが溜まっているっぽかったが転嫁はなし。
母親は調理場でシェフらしき白い服を着た人と話している最中だったので、『今じゃなくていい』と首を横に振りながら、声をかけようとしていた岸坂さんに触れてパス。
予想通り、転嫁先でも呪詛を掛けた元でも無かったからね。態々話し合いを中断させる必要はない。
夫の樹さんとやらは外で温泉へ繋がる水道管(?)の確認をしているとかなので、外に出てちょっとワイルドな日本庭園っぽい庭を抜けた奥にあった小屋に会いに行った。
うん。
やっぱ転嫁先にされてるね〜。
「呪詛の転嫁先にされていますね。
解除するのに暫く触れますので、その間に状況説明をしておいて下さい」
説明は岸坂さんと碧に任せる。
見知らぬ赤の他人に触れられたら痴女か?!と思われかねないが、違うからね〜。
若い夫婦に不妊の呪詛とその転嫁先って、中々いやらしい。
呪詛だとわかっても、うっかり神社で厄祓いとかすると却って呪詛が確定しちゃうんだから、困ったもんだよね。
安易に何かに合意しちゃダメなんだよ?
名前を書くとか捺印とかだったら皆気をつけるんだろうけど、最近はネットのクリックで転嫁受け入れの承認扱いにできちゃうような呪詛が広まっているからなぁ。
碧の活躍でここ数年の間に呪師が大幅に減った筈なのに、ネットを活用する術師を排除できなかったのは痛い。
マジでそのやり方が広がり過ぎる前に国が強権でも振るってプロバイダーに協力させて、ネット経由の呪師を徹底的に取り締まるべきだと思う。
まあ、それはさておき。
旦那の腕を触れて呪詛の詳細を確認する。
うん、やっぱ不妊の呪詛だね〜。
思ったよりも元が近くはないみたいだけど。
今日この後にちゃちゃっと訪れられる距離にいるお祖母さんと一緒な可能性が高い従姉妹さんじゃないのかも?
もしくは従姉妹さんが今日はお祖母さんのところに居ないか。
首都圏近辺な感じだけど、鶴巻温泉駅周辺じゃない感じがする。
「はい、転嫁は消しました。
これからはネットでポップアップとかを閉める時も、できるだけクリックせずにキャンセルボタンを押す様にして、署名や捺印も出来るだけ他の従業員に任せる方が良いかもしれませんね」
終わってから二人に注意事項として伝えておく。
「不妊の呪詛なんて!」
樹氏が怒った様に言っている。
「残念ながら、素人の場合は呪詛をかけても最初の一回は『悪戯のつもりだった』という言い訳が通用してしまうので、退魔協会や警察に通報しても罪に問えません。
今回の呪詛を掛けた人が分かりましたら呪詛を解除した事実を退魔協会の方に報告しますし、呪詛返しを受けているのも術師には一目瞭然になりますので、同じ様な事をまたやったら殺人相応の罪に問われる事にはなりますが」
よっぽどの金持ちで呪師に直接呪詛を掛けさせて返しも呪師が受ける様にしているのでない限り、普段は呪詛返しを受けたら相手もかなりのダメージを喰らうから、司法で罰せられない事もそれほど大きな問題じゃないんだけどねぇ。
今回は不妊と言う、特定な相手にはダメージが大きいけど日常生活にはさほど問題がないタイプの呪詛だからね。
呪詛返しした後の自衛が重要な問題になりかねない。
「ちょっとじゃあ、お祖母さまのところに行ってくるわ」
岸坂さんが樹氏に言って、小屋から出た。
なんか樹氏は何か言いたげな顔をしていたが、急いでいるのか岸坂さんはそれに気付かずにズンズンと右の方へ行ってしまった。
お祖母さんって、敷地内に住んでるの??
怒りのせいか早足で歩いている岸坂さんに小走りで追いついたら、ちょうど敷地から出て斜め向かいの家に入っていくところだった。
ここなんだ〜。
従姉妹さんはいないのかな?
と、思ったが。
バン!と岸坂さんが扉を開けた先には老婦人と、若い女性が居た。
「違うみたいです。
彼女は呪詛に繋がっていません。
握手して最終確認するので、知り合いとでもして紹介してください」
岸坂さんが口を開く前に、慌てて腕を掴んで止める。
何らかの理由で呪師が直接呪詛を掛けている可能性もあるから、一応記憶を読ませてもらって確認したい。
さて。
そうなると、どうやって呪詛の元を探るかなぁ。
日帰りの予定だから源之助の晩御飯は出してきてないんだよねぇ。
あまり遅くなるのは困るんだが。




