直前の手配は色々問題あり
「う〜ん、春休み最後の週末直前なせいか、花見シーズンなせいか知らないけど、明後日にレンタル出来る車がない〜。
でも、調べてみたら秦野駅から桜が綺麗な山の公園にあるハイキングコースで2時間半ぐらい歩いたら鶴巻温泉に出て来れるみたい。
ハイキングと温泉と両方カバー出来るし、これでどうかな?」
タブレットで調べ事をしていた碧が聞いてきた。
あらま。
突発的に思いつくと車もレンタル出来ないのか。
まあ、近いのが利点だし、最後は鶴巻温泉でのんびりランチと温泉を楽しんで帰るだけだから、電車の方が良いか。
運転って疲れてるとキツイからね。
碧に任せて寝ちゃうのも悪いし。
前世だと実質奴隷だったので花見……と言うかレジャーとして遠出するなんて贅沢は出来なかったし、元々貴族以外は特に目的もなく旅行に行くと言う考え方もあまり無かった。
魔術師なら転移門を使って遠距離移動が出来たけど、目的を聞かれるから『仕事の為』とか『結婚式(もしくは葬式)で家族に会う為』みたいな理由がないと白い目で見られたらしいんだよねぇ。
と言うか。
個人的な転移門利用の費用は、現代日本の国内飛行機や新幹線の値段よりかなり高かった気がするし。
私は建前上は高級取りな王宮魔術師だったし、好きにお金を使う事も殆ど出来なかったせいでお金に困ると言う経験も無く、物価に関して疎かった。が、他の王宮魔術師が結婚式とか葬式で遠方の家族に会うために転移門を使うと財布にダメージが!!と嘆いていた。だから高かったと思われる。
まあ、現代日本だって結婚式やお葬式で例えば東京から北海道へ移動したら、交通費に関して愚痴る可能性は高そうだけど。でも元同僚や知人の愚痴の度合いが家族に買う宝石とかよりも大きかったから、比較的大きな出費だったんじゃないかなぁ。
魔術師時代の前世は魔術と魔道具のお陰で現代とあまり違わないぐらい便利だった(少なくとも王宮では)が、大量生産社会では無かった。なので今の日本に比べると比較的高い物が多く、王宮魔術師でもお財布に余裕があまり無かった可能性もある。
そう考えると、魔術師だった私の貯金が死んだ後どうなったのか、ちょっと気になるなぁ。
ほぼ確実に国に没収されていたんだろうけど。
どうせだったらこっそり孤児院にでも寄付しておけば良かった。
それこそ、魔術師の適性検査を逃れて逃げる子供を助ける地下組織みたいのがあったら、そう言うところにあげておきたかった。王宮魔術師がそんな組織に近付いたら警戒されて逃げられるし、私経由で情報が漏れちゃったら本末転倒だけど。
それはさておき。
「じゃあ、電車で行こうか。
ちなみにその碧パパの思い出の温泉旅館のランチは予約取れそう?」
そっちも碧が調べてくれてるんだよね。
完全におんぶ抱っこで頼りきりだ。
しかもハイキングでも、多分私が疲れ果ててその後ぐったりして役に立たない可能性が高いから、当日も色々と碧に頼ることになっちゃいそうなんで悪いなぁ。
ハイキングの最中にアイスでも買えるところがあったら、奢ろう。
「そっちは大丈夫!
既に仮押さえしてある。
ちなみに和風なお弁当という名称の料理だけど良い?
懐石料理もあったけど、既に予約が一杯だった」
碧が言った。
やっぱこう言うのって2日前に突発的に決めるもんじゃないんだねぇ。
でも単なる温泉旅行ならまだしも、花見となると天気や花の開花具合に左右されるからしょうがないよね?
下手に予約して、花が咲いてないだけならまだしも、大雨だったりしたら困るだろう。
「全然おっけー。
ありがとね。
懐石料理ってちょっと苦手だし、助かった!」
食べられない事はないんだけどね。
高額であろう懐石料理と言う出費に対して満足度が低い可能性が高いから、
普通の豪華なお弁当の方が良い。
「予約は1時だから、秦野駅に10時半に着くのを目指して、9時前に家を出れば良いと思う」
碧が付け足した。
「ちなみに、ハイキングで想定よりもバテるのが早くて1時に辿り着けなくても、ランチがキャンセルされたりはしないよね?」
ハイキングコースの時間が山歩きに慣れている人では無く、普通の大して運動していない平均的なオフィスワーカーを基準に測っていると思いたいが。
私と碧では、明らかに山歩き能力に差があるからなぁ。
「電話して連絡すれば大丈夫だって。
まあ、あまり遅れると温泉に浸かる時間が減るけど。
代わりに、早く着いたら10分ぐらい先に温泉に入るのもありだね」
碧が笑いながら言った。
う〜ん。
「いざとなったら、疲労回復のご協力をお願いします」
強制的に筋肉の疲れを感じられないようにするのは黒魔術でも可能だけど、下手にそれで無理に山歩きをしてると転んで足を捻ったりしかねないからね。
黒魔術よりは、白魔術の疲労回復の方が合ってそう。
「任せて!」
碧が楽げに言った。
なんかかなり楽しみにしてる感じだねぇ。
実は碧って山歩きが好きだった?




