義理の家族(予定)
怜子さんのお祖父さんって去年亡くなってたんだ??
既に結婚の話が出てただろうからお葬式に兄貴も行ったのかな?
流石にまだ結婚してなかったから、将来の義理の家族な私には話が来なかったんだろうね。
まあ兄貴にしてもまだ正式に婚約してなかったかもだから、お通夜で済ませたかな?
と言うか、今の時期で一周忌ってことは、3月ごろに東京に来てたんだろうに。だったら実家に顔を出さなかったのかね? 薄情な。
マジで年末に実家に顔を出す時にタイミングが合えば会うだけな私の家族って、高校時代の同級生とか並みに全員揃って会っていない気がする。
まあ、会ったところでそれ程話したい事はないけどさ。
そんな事を考えていたら、またスマホからチャットアプリの通知音が流れてきた。
『なんか怜子がお祖母さんの周りに何かが居るって言っているんだが。
ちょっと見に来てくれないか?』
はぁぁ?
怜子さんも退魔師としての鍛錬を既に一年以上(だよね?)続けているんだから、霊の存在にはそれなりに敏感になってきていると思うが、まだ悪霊じゃなくてふわふわ居るだけの浮遊霊だと上手く捕まえて尋問出来ないのかな?
いや、考えてみたら師匠弟子両方が雪がある間はゲレンデに出っ放しで鍛錬をしてない筈。そうなると、実質的には鍛錬しているのは半年ちょっとだしね。
風に対する適性が強い元素系魔術師だから、霊とのやり取りはそれこそ相手の名前が分かっているとか、相手が強い心残りがあって現世にしがみ付いているとかじゃないと、難しいのかも。
もしかしたら、単にお祖母さんが飼っていた猫か犬か文鳥かの霊で、話が通じないだけな可能性もあるが。
『いくら将来の義理の家族になるとは言え、今会いに押し掛けていくのはちょっと気が引けるんだけど〜』
面倒だったのでちょっと後ろ向きな返事を出す。
悪霊じゃないなら、構わないじゃない別に放置したって。
ペットの霊だったらお祖母さんの慰めになるかもだし。
『10万円払う!
あと、北海道のチョコを一箱、渡すから!
何か食器類か花瓶で気に入ったのがないか、見に来るって事にすればそれ程不自然じゃないだろ??
他にもスカーフとか帽子とかバッグとか手芸の道具や生地や毛糸とか、色々あるぞ!』
兄貴がグイグイと押してくる。
ちょっとぉ〜。
そっちに行って霊を見るだけでなく、処分に困ってる食器まで押し付ける気だね??
帽子やバッグはどう考えてもお祖母さん世代の人のは私の趣味に合わないでしょう。
手芸は……寒村時代の前世では自分で布から家族の服を縫っていたから裁縫は出来るが、ミシンを使い熟せていないし、今の時代なら自分で縫うより買う方が圧倒的に効率的だし出来も良いのだ。
だから手芸の素材なんて、絶対に要らない。
まあ、花瓶程度だったら小さめなのがあれば一つぐらい貰っても良いかもだけど。
社会人になるんだし、週に1回ぐらいは花を買ってさしておいたら心が豊かになれる……かも?
あと。
そのチョコって実家に持っていく母親用なんじゃないでしょうね??
スペアを買って来てるなら良いけど。
まあ、いざとなれば今だったら東京駅でも全国各地のお土産を買えるのだ。
私に横流ししたら、その分は実家に行く前に怜子さんが補充するだろう。
多分。
「なんか兄貴の婚約者がお祖母さんの家かどこかで霊の存在を感じたらしくって。私に来て欲しいみたいなの。
断捨離しつつある物をお裾分けしてもらうって名目で行く事になりそうなんだけど、小さめな花瓶でも受け取って来ても良いかな?
ちなみに手芸の素材とかもあるらしいけど、誰か知り合いで生地や毛糸が欲しい人っていたりする?」
碧に尋ねる。
一応シェアしている部屋だからね。
相談はしておくべきだろう。
生地や毛糸も、捨てられるよりは誰かに貰われる方が世のためだし。
「ここら辺に置くのは構わないけど、源之助がうっかり走っている時にぶつかって落とすかもだよ?
あと、手芸系は要らないね〜。
母親が昔経済的に厳しかった時に私達の服を作ってたらしいんだけど、お金に困らなくなったんだから絶対にもうやらない!て言ってるから」
碧が答えた。
おやま〜。
そっか、諏訪神社の修繕か何かでお金が必要で、碧パパが頑張って退魔師として働きまくってた時期があったって言ってたもんね。
単に家族を食わせるだけなら退魔師の報酬で全然大丈夫だろうし、夫婦で退魔師として働けばかなりの収入になっただろうけど、宮司としての仕事もある上にウン百年の歴史がある神社の修繕金を自力で賄おうと思ったら、それなりに資金的に頑張らないとダメだったのだろう。
古くからある家系って金持ちな事が多いけど、宮司や回復師的な働きが多い藤山家は投資や金儲けに考えが及ばない人が多かったのかな?
今は碧ママがしっかり資金計画を管理してそうだから、大丈夫だろうけど。
「どうせタダで貰うんだから、花瓶が割れたらそれが運命って事でいいよ」
そんじゃあまあ、兄貴にどこに行けば良いのか、聞くか。
……将来の義理の家族に会うなら服装はどうしたら良いのか、怜子さんに確認させよう。




