雨天決行!
取り敢えず、ここでこの話は終わりです。
「「「ピコーン!」」」
学内ネットワークの通知はオフにしている人が多いのだが、流石に今日は皆も気になっているのか、謝恩会の会場でも通知音が一斉に鳴り響いた。
「あ、犯人が捕まったって!」
一早くスマホを操作した白木さんがさっとメッセージを読んで声を上げた。
「お!
本当だ!!
良かったぁ、やっぱ犯人が捕まってないと明日の卒業式にも参加するの心配だったんだよね〜」
自分もスマホを確認した近藤さんが声を上げる。
近藤さんはサークル仲間では無かったが、意外にも白木さんと知り合いだった事が判明して、謝恩会の会場で一緒に話していたのだ。
碧は自分の学部の友人と話していて、近くには居ない。さっき、さらっと白木さんとは話していたけどね。
「うわぁ、就職戦線で脱落した生徒がノイローゼになって凶行に及んだと書いてある。
迷惑〜」
私も大学からのメッセージを読み上げてコメントする。
確かにあのハイな精神状態は正常じゃあ無かっただろうが、ノイローゼって事で心神喪失状態だなんて言い出したら許さないよ!
まあ、今回は被害者になりそうだった卒業生にもお金持ちや偉い人の家族が多いだろうから、きっと皆さんがお高い弁護士か精神科医を提供してくれて、そんな抜け道は潰されるよね。
どこまであのアホは自白したのかな?
あの後、講堂からでた後に瀬川にさりげなく接触する機会が無かったから、嘘を言わず本音を吐くように意思誘導しておく機会も無かったんだよねぇ。
アホすぎて、同情たっぷりな刑事にでも誘導されたらあっさり何をやりたかったのか、自慢げに話したのかな?
警察が田端さんの助言に耳を貸さずにあのアホを解放したりしたら、最悪の場合は碧への殺人未遂ってことで天罰案件として白龍さまに協力を頼む必要があるかなぁとも思っていたのだが。どうやらちゃんと警察が動いてくれたらしい。
クルミにあいつが解放されたら教えてと頼んであったけど、流石に色々バタバタしていたからあいつが拘束された後のことはモニター出来てなかったのだが、無事逮捕となって良かった。
予想以上に早い。
大学側も圧力を掛けまくったんだろうねぇ。
やっぱ卒業生と家族が集まった式典で大量殺人を犯そうとした放火犯が野放しじゃあ、再卒業式にも怖くて集まれない人が多かっただろうし。大学側の面子も丸潰れだ。
「一気に卒業式に参加しても良いって人が増えていってる〜」
アンケートのページを見ていた白木さんがちょっと笑いながら言った。
「あ、更にメッセージが来た。
明日、十三時に記念館で略式の卒業式をしますだって。
来賓のスピーチは削って在学中に頑張った人の表彰だけするらしい」
アンケートを見ようと操作していたら、ちょうどメッセージが来たせいでうっかりそちらの通知にタップしたせいでそっちを開いてしまったので、ついでに読み上げる。
「あ、良かった、室内なのね。
下手したら安全のためにサッカーグラウンドとかでやるって言い出すかとちょっと心配していたのよねぇ」
白木さんがふうっと額の汗を拭うジェスチャーをした。
「サッカーグラウンドじゃあ女性の参加率がダダ落ちでしょう。
流石に卒業式じゃあ日傘をさせないだろうからね。
卒業式は大切だけど、直射日光の中で2〜3時間も座っているなんてありえない!」
近藤さんが言った。
確かに。
晴れている方が暖かいし雰囲気も良いが、日除けがなく、日傘も使えないサッカーグラウンドで卒業式はないわ〜。
安全性は記念館の中よりも高いだろうけど。
「取り敢えず。
特に用事もないし、変なヤツに私らの卒業式が台無しにさせるのもムカつくから、明日は参加っと」
白木さんがそう言いながらアンケートの画面にポチッと返答していた。
そっかぁ。
何が起きているか分かっていなかった人たちは、アンケートを答えるのも保留していたのか。
さっきまで『参加』が3分の1以下で大多数が未回答だったアンケート結果のスクリーンが、どんどん『参加』と『不参加』で埋まっていく、
意外と参加が多いね。
半分を超えそうだ。
それでも半分ぐらいだけどね。表彰される予定だった人たちがちょっと可哀想だ。
精神的苦痛に対してあのアホを訴える集団訴訟でもやろうって誰か言い出さないかな?
集団訴訟がこう言う場合に身使える制度なのか知らないけど。
まあ、どちらにせよ。
それなりにうちの大学も司法業界に伝手があるらしいからね。
きっとあのアホの将来は真っ暗だろう。
こうなるなら、最初に会った時に何かすべきだったかなぁ……。




