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採取活動

「これで刈るから、そっちの熊手で集めてポリ袋に入れてくれる?」


今日は碧の実家に聖域の雑草刈りに来ている。

以前、碧の実家に来る際にどっかの水力発電所でも見学に行って精霊(に近い存在)を探そうかという話もしていたが、可能性があまり高くなさそうだし、草刈りでかなり時間が掛かるらしいので今回はやめておいた。


碧の手にあるのは充電式の中々本格的な草刈り機。

長い棒の先に鋭い回転式の刃がついていて、屈まずに足元の草が刈れる様になっている。

私の熊手も中々大きくて立派だが・・・ポリ袋に入れる為には屈む必要がありそうだから後で腰にきそう。


まあ、碧だって軽くない草刈り機を振り回すのだ。

腕や肩に負荷がかかるだろう。


後で交代かな?


草刈り機のスイッチを入れて動かし始めた碧に声を上げて尋ねる。

「毎年草を刈ってるの?」

広いと見るか、狭いと見るか、微妙な所だけど・・・考えてみたら真夏に来た時も極端に草がぼーぼーと言う訳ではなかったが、どうしているのだろうか。


「何かに使いたい時は刈るし、そうじゃない場合は白龍さまが火を吹いて燃やして、和紙を作るのに使う草を育ててる方向に灰を適当に吹き飛ばすね〜」

碧が答える。


ちょっとした焼き畑もどきな手法だな。

かなりダイナミックそうだけど。


確かにここから漏れる空気だけよりは、ここの魔素を多めに含んだ灰を撒く方が確実に含有魔素量は上がるだろう。

「今年みたいに雑草を使う予定がある場合はどうなるの?」


「大丈夫!

全部なんて刈れないから。

地形的にも難しいところがあるし、どちらにせよ数日で刈り尽くせないから、取り敢えずこの週末に体力がもつだけ刈って、最後に白龍さまか炎華に焼いて貰って吹き飛ばせば十分!」

碧が力強く答えた。


そっかぁ。

畑の収穫ならまだしも草刈りなんてやった事がないんだけど、どうやら小さく見えるこの程度の小さな谷っぽいスペースでも、電動草刈り機を使っても刈り尽くせないんだ。


・・・なんか筋肉痛で明日か明後日に物凄く苦しみそうな気がする。

気のせいだと良いなぁ・・・。


◆◆◆◆


「なんかさぁ。

ゲームやラノベとかで薬草集めてポーションを売って金儲けする設定とかあるじゃん?

・・・こうやって実際にがっつり草刈り作業をしてみると、ポーションを作るために必要なだけの薬草を集めるのって実は滅茶苦茶ハードそうだと思わない?」

藤山家の大きな風呂に一緒に身を沈めながら碧がうめいた。


「まあ、どの程度の量の薬草がポーションを一本作るのに必要かとか、ポーションの単価が幾らかとかあると思うけど、比較的簡単にポーションが作れるんだとしたら肉体労働がかなりハードになりそうだね。

普通に一人生活できるだけの資金稼ぎって言うのはよっぽどの特殊技能を持っているんじゃない限り、それなりにハードなんだと思う。

つうか、碧は今まで草刈りやった事あったんじゃないの?」

ある意味、黒魔導師の時は私の特殊技能はかなりレアリティが高かったから、労働時間そのものはクソッタレな王族による変則的な時間帯での呼び出しがあったものの、長くはなかった。

精神的な負荷は大きかったが。


寒村時代は確かに朝から晩までくたくたになるまで働いて、やっと栄養失調にならないで済む程度だったなぁ。


今世ではずっと『机に向かって勉強するのが仕事』扱いだった学生だったせいで長時間の肉体労働の大変さを忘れていたよ・・・。


「今までは雑草を使うために刈ると言ってもちょっとした実験程度が多かったから、1時間程度刈ったら終わりにしてたんだよねぇ。

1日中働くのがここまでハードだとは思ってもいなかった・・・」

碧が深くため息を吐く。


「まあ、明日は3時ぐらいに止めて帰るんだから、今日よりは楽・・・かも?

あんまりにも辛かったら適当に切り上げてお風呂で身体を解して帰ろう。

お守りが思っていたよりも売れて雑草素材が足りなくなったらその時点でまた採取に来ればいいよ」


「なんかなぁ・・・。

聖域は一族の人間しか入れないから、お守りを大量に売るとなったら雑草刈りが出来る人間って限られているんだよね。

考えてみたら、ちょっとこれってビジネスプラン的に問題かも」

右腕を揉みながら碧が呻く。


昔だったら名家でもそれなりに子供が多かったからお小遣い稼ぎに親族のガキンチョにやらせればそれなりに集められただろうが、今は少子化の時代だからなぁ。

塾とかゲームで忙しい一人っ子の子供だったらこんな肉体労働の小遣い稼ぎなんてやってくれないだろう。

考えてみたら電動草刈り機を小さな子供に使わせるのは危険だろうし。

まあ、今日刈ったのでそれなりの量になったから、あれでどの位のお守りが作れるのかにもよるよね。

場合によっては数量を限定して売り出して、希少性を前に押し出しても良いし。

とは言え。

「・・・ちなみに、今日刈った雑草って魔力が抜けない様に保存する手段ってあるの?

それなりの量だから3ヶ月で使い切るとは限らないし、お守りビジネスが軌道に乗っても雑草が収穫できる時期にしか売り出せないとなったら問題だよ?」


少量だったら符を作る和紙を保管する箱とかに入れれば良いだろうが、大量の雑草を保管できるのかね?


「段ボール一個分ぐらいの保管箱はあるからそれに入れて持って帰れば大丈夫。

余った分は聖域に置いておけば魔力も抜けないし、必要に応じて実家から送ってもらうか取りに来ればいいんじゃない?

一応物置があるから野晒しにはならないし」

茹ってきたのか、碧が身体を押し上げて湯船の縁に座りながら答えた。


物置。

あったっけ?見た記憶はないが。

まあ、保管場所があるのはいいことだとよね。

頑張って採取した分の雑草を使い切るぐらいお守りが売れるといいんだけど。



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