情報提供
「で、その菅野さんはどこに軟禁されてるの?
あと、貴方が警察の追跡を躱せなくて帰還が遅れる場合はどうする予定だったの?」
霊に誘拐された菅野老人の場所や仲間の居場所を尋ねる。
いくら殺しはしないってポリシーだろうと、いつまでも老人を軟禁しておく訳にはいかないだろう。
まあ、犯人グループの顔を見られていないなら、身代金を受け取った後でも回収に失敗したと見切りをつけた場合でも、軟禁したまま離脱して、あとで捨て垢でも使って警察なり天野氏なりに軟禁場所をメールで送れば良いとは思うが。
金子がペラペラと軟禁場所や遅れた場合の連絡方法や合流場所について教えてくれたので、碧がメモしていく。
計画した人間が意外と頭脳犯なのか、合流場所とか連絡方法は素人な私が受けた印象としてはかなり工夫をしてある。
そして菅野老人を攫った時から接触する担当はハロウィン用のフランケンシュタインもどきなマスクをしているらしく、顔を見られるリスクは無い!と自慢げに言われた。
どうだかね〜。
時間が経てば経つほど想定外の事が起きると思うぞ〜。
願わくは被害者と犯人側と両方のためにも、取り返しのつかない間違いは起きていないと期待したい。
「ちなみに、なんだって誘拐なんてしようと思ったの?」
天野氏を恨んでいるんだったら弟とはいえ良い歳して兄弟を攫われてもそこまでダメージはないと思うんだよねぇ。もっと直接的な手段を選びそうなものだが。
『金だよ!
どうしても金が足りなくて、組でやっている建築会社が不渡りを出しそうなんだ!』
霊が教えてくれた。
まじっすかぁ。
最近は人件費や資材も値上がりして建築業者は大変だって話だけど。
普通の建築会社が反社会的勢力のお偉いさんと繋がっている老人を誘拐して身代金を取ろうとはしないだろうから、金子たちの建設会社って言うのもそれこそヤクザが方向転換して始めたちょっとグレーな会社なのかも。
不渡りが出そうだから誘拐ってちょっとどころで無く微妙な気がするが。
お願いだから、今回のをきっかけに天野氏の組織と闘争とかを始めないでね〜。
「ちょっと待っててね」
ここで地縛霊になっても可哀想だから、昇天させる方がいいだろう。
でも、誘拐されたご老人を取り返すまでは勝手に昇天させない方が良いんだろうなぁ。
と言う事で、碧と一緒に田端氏のところへ行った。
「名前は金子竜太、菅野氏は鎌倉駅から西に進んだ先にある倉庫に軟禁しているそうです」
その他、碧が書き取ったことを報告した。菅野氏と天野氏の関係は除いて。
「と言うことで、もう霊も昇天させていいですかね?」
田端氏に尋ねる。
「……昇天させないで残しておいたらまた質問できると思いますか?」
田端氏が聞き返してきた。
「さぁ?
このまま地縛霊化するか、49日以内に昇天するかは、ケースバイケースってやつですね」
悪霊化するほど本人に悪意や悔いがないっぽいから、死んじゃったショックが薄れたらこの金子竜太はそのまま昇天する可能性が高そうだけどね。
話してみて思ったけど、彼はかなり能天気なタイプっぽい。
あれは地縛霊になるよりは薄れて消える系だろう。
薄れて消えてるのって多分昇天しているんだと思うけど、薄れるところをじっくり観察している訳じゃあないから何が起きるかは確証はないんだよね。
「今からお伺いした場所へ救助の人員を向かわせるので、もう暫くここで待って頂けますか?
良かったら車で座っていて下さい」
携帯を取り出しながら田端氏が頼んできた。
「数時間なら良いですが」
碧が頷いたので、車に戻る。
寒い中、いくら晴れてても道端に立って待つのは、ない。
通りがかりの人に『交通事故の関係者!?』みたいな書き込みを写真付きでSNSとかにされても嫌だし。
一応パッと見た感じは工事現場っぽいけど、交通整理しているのが警官な時点で考えてみたら事故現場だよね。
女性が2人、暇そうに立っていたら車に衝突されて被害者か、何か事件があって目撃者か?!みたいな感じに面白おかしく無責任に顔付きでネットに晒されそうで怖い。
一応、肖像権?ってやつでプラットフォーマーにクレームを入れれば削除してくれるらしいが、その為の費用や手間は馬鹿にならないだろう。
まあ、特に目を引く様に風景じゃないとは思うけどね。
『そう言えば、菅野氏が人違いじゃなくて攫われたことは言わなくて良いの?』
碧が念話で聞いてきた。
『攫われるだけでも災難なのに、警察に自業自得でしょなんて言われたら不幸すぎるよ。
私らは誘拐された被害者救出に必要な情報を提供すれば良いと思う』
反社会的組織の兄を助けて悪事をしていたなら……まあ、カルマがその分マイナスになっているだろうし。
『ま、そうだね』
碧もあっさり頷いた。
権力者に酷い目にあった前世の私はまだしも、碧も意外と警察の善性に微妙に信頼がないよね〜。
取り敢えず。
さっさとご老人が無事に家に帰れると良いんだけど。




