業界あるある?
「ただいま〜」
美味しいランチを奢って貰い、碧とシェアしているマンションへ戻る。
考えてみたら、ちょっと金銭的に厳しい谷敷さんにランチとは言え奢らせたのは可哀想かもだけど、ほぼ完全に赤の他人から助けを求めるなら、話を聞いてもらうだけでも対価が必要なのは世の常識だろう。
同情して変に甘やかさない方が良いよね〜?
「どうだった?」
ランチ代を払わなかった言い訳を心の中で自分にしながらリビングの方に行ったら、碧が聞いてきた。
「いやぁ、退魔協会が態となのか無能なのか知らないけど、一般家庭出身な彼女が退魔協会にパートナーの紹介を頼んだら、かなり酷い相棒マッチングをされたみたいでね。
ウチらの事務所には新規採用はあと20年ぐらいはないよって言ったら、誰か女性かゲイな男性で相棒を探している人は居ないかって泣きつかれた」
20年どころか30年かもだね。
60歳でリタイアするとしても後継者育成を始めるのって50歳からで十分だろうから、そう考えるとほぼ30年だ。
人手不足な退魔師業界で60歳でリタイアさせて貰えるかは不明だが。
でも後を継ぐ人間を育てておく方が、まだ辞めるのに文句を言われなさそうだよね?
「あ〜。
退魔協会の相棒マッチングねぇ。
私も家族や親戚以外と仕事をするようになった時、最初の頃は高校生の女の子に不気味なほどに優しく話しかけてくる若い男ばかり紹介されたなぁ。
身の危険を感じるから女にしてくれって言ったらキツくて一緒に働きたくないのばかりが紹介されたし」
碧が頷きながら言った。
「うわぁ。
相棒が居ないような男は結婚相手か愛人を探していて、女性は気が強すぎて上手く相棒と働けないタイプばかりが残っているって可能性もあるけど……ちょっと怪しいね」
碧と谷敷さんとが両方似たような体験をしているなんて。
「ちなみに聖子さんとか美帆さんはどうだったの?」
「聖子さんは似たり寄ったりで結局一人で仕事するようになったし、美帆さんは藤山家の親族で運良く一緒に働ける人が居たんだよね」
へぇぇ。
「ところで、女性の退魔師一人だと危険だから二級術師の仕事しか受けさせないと言われたのって退魔協会のポリシーなのかな?」
聖子さんはそれなりに経済的にやっていけているようだから、二級術師の仕事でも北海道なら依頼費がそれなりに良いか、普通に一級術師の仕事をしているかだよね。
「う〜ん、まあこないだのパーティの時で一級術師になったばかりでしょ?
暫くは一人で受けるなら二級術師の仕事を続けた方が安全かもって言われる可能性もゼロではない、かな。
でも退魔協会のスタンスとしては、本人が出来ると言ったら自己責任でやらせる筈だよ?
報酬の良い仕事を斡旋しないのは、不本意な相手とでも諦めて組むように圧力をかけてくれって誰かに職員が頼まれたのかも」
碧が顔を顰めながら言った。
うわぁ。
愛人欲しいおっさんか、子供が欲しい旧家かが子沢山家系らしき谷敷さんを狙っているのかね?
「なんかもう、セクハラしたらぶん殴っていいなら男でも構わないから、誰か紹介して貰ってもっと報酬の高い依頼を受けられるようになりたい〜って言ってた。
蓮君がまだ誰とも組んでないなら、彼に声を掛けてみるのもありかな〜って思ったんだけど、どうかな?」
彼が一級術師になっているかは知らないけど。
一級術師と二級術師が組んでいる場合、一級術師用の依頼を受けられるのかな?
というか、私と碧って特に一級術師になった後に仕事の難易度が上がった記憶は無いんだよねぇ。
いざとなったら白龍さまがいる碧なら大丈夫だからって事で、最初から一級術師の仕事を斡旋していたんかも?
「まあ、彼も一般家庭出身だし、ゴリゴリな旧家出身の術師と合わないかもだから、ありかもね」
碧が頷く。
「ちなみに美帆さんもそろそろ仕事に戻るって言っていた気がするけど、彼女はどうするの?」
谷敷さんを紹介して聖域の側に外部の人間である彼女が出入りするようになるのはちょっと微妙だけど。
もしも美帆さんが相棒探しで困っているなら、ワンチャン様子見で試すのもあり?
「美帆ちゃんは子育て中の親戚と仕事しているらしいから、フルタイムで働きたい人とは現時点ではマッチングされても困るし必要ないかな〜。
蓮君がダメだったら、母親にでも誰か知らないか聞いてみてもいいけど?」
碧が応じる。
そっか、藤山一族内ならそれなりに相棒候補はいるんだね。
碧は……実力が突出し過ぎてて誰かと組むのが難しかったのかな?
取り敢えず。
蓮君にメッセージアプリで連絡してみよう。




