夢のある話?
「結局、魔法少女に漠然と興味があった程度で、それこそ私大4年分ぐらいの費用が掛かる上にちゃんと一人前の術師になれるかは鍛錬プラス本人にはどうしようもない才能次第って言ったら、諦めて封じるってさ〜」
碧とシェアしているマンションに帰り、源之助を膝の上に乗せて符を書いていた碧に報告する。
一応碧からの情報って話になってるからね。
白木さんのことは碧も多少は気にしていたし。
「魔法少女、ねぇ。
なんかあれも未成年の女の子が正義の為の戦闘に駆り出される理不尽な世界な気がするけど、憧れるものなの?」
符を書き終えた碧が筆を下ろしながらコメントした。
源之助の格好を見るに、炬燵の中で胡座を組んでるっぽい。
ずっと動かずに背筋をすっと伸ばして炬燵の上の紙に符の紋様を書き続けるってかなり大変なんだけどねぇ。
碧だったら正座の方が慣れているっぽいけど、源之助が上に乗るには胡座の方が角度が向いているからと、源之助が寄ってくると正座を崩して胡座に変える碧はやっぱ源之助に甘々だよね〜。
まあ、にゃんこのふくふくな頬とかすらっとした尻尾とか、フミフミしてくる足とか、猫の魅力は尽きないのは認めるけど。
だけど胡座の上に4キロ近い重さをずっと乗せていると血流が阻害されて痺れる事実は、猫の愛らしさには関係ないんだよね。
あ、でも碧だったら血流を無理やり流して、足が痺れないように出来るのか。
「魔法少女は小学生の頃はそれなりに好きだった、かも?
中学になったらああ言うアニメからは卒業したし、高校になる直前に覚醒してからは鼻で笑うレベルで共感度が激減したかなぁ」
正義の味方なんて信じないし、前世では元素系魔術師で魔法少女みたいに空を飛んだり魔術を放ったり出来る知り合いもいたが、自分がどれだけ努力しても同じことは出来なかったからねぇ。
それに、元素系魔術師にしたって、戦闘って言うのは人間か、人間を害した魔獣かを殺すために戦っているんだから、それなりに周囲に犠牲や苦痛が溢れている事が多かったしね。
魔術師という職業自体が無条件に楽しめる職業じゃあなかった。
まだ錬金術師の方が平和で文明的な生活を街中で出来てたように見えたなぁ。
まあ、それでもうっかり貴族の利権を脅かすような魔道具を開発しちゃうとそれを奪われるか、奪おうとする相手に陥れられて商売が破綻するか、殺されるかって事が多かった。
階級社会は闇が深い。
まあ、現代地球だって大企業の儲けを脅かすような発明は潰されるリスクが高いとは思うけどさ。
ビジネスとして上手に脅威と戦える人じゃないと、バカ売れするような発見は結局は潰されるか奪われるかだよね。
それこそ、最近はちょっと陰ってきているけど電動自動車の先駆者で有名なテ◯ラだって、最初に創業したのはあの有名な、大統領と一緒になって政府職員の首を斬りまくり、政府から抜けた後に史上最大の役員報酬を『これを貰えないなら辞めるかも』と株主を脅してもぎ取ったイ◯ロン・マスク氏じゃないらしいからね。
創業者達が良いアイディアを思いついて、それを実行しようと資金集めしつつアイディアを実現させようと頑張っている間に、資金家だったあの人に会社を乗っ取られたらしい。
まあ、あの攻撃的でゴリ押し上等な人だからこそテ◯ラを成功させたんだろうとも思えるが。要は技術だけの夢で成功できる職人は少ないってことだ。
経営者と職人や技術者は違うんだよね。
考えが脱線した。
「私は子供の頃から白龍様とか退魔師の事を色々と学んでいたからねぇ。
ああ言う魔法少女モノのふわっとした話は却ってイラついたな〜」
碧が乾いたっぽい和紙を横に退け、新しい紙を取り出しながら呟いた。
「まあ、悪霊なんて大抵同情できるような原因で人を祟っているからねぇ。
それを消して回る職業って考えてみたら子供にはちょっとキツいよね。
そう言えば白木さんの従姉妹の陽菜ちゃん。魔女って居ないんですかって聞いてきた」
ふっと笑いが溢れる。
『魔女』って字面的には魔法少女に近い気がするが、力の使い方的には更に遠そう。
空を飛んで敵を吹っ飛ばすような戦い方をする魔女なんて、確実に教会に根絶されてるだろう。そんな魔力の使い方をしたらあっという間に魔力枯渇で昏倒しそうだし。
まだ薬草を煮込んで人魚の足を生やしてあげるタイプの方が生き残れそう。
地球の魔女に人魚へ足を生やさせるだけの技術があるとは思えないけど。
前世の錬金術師たちだって種族的特徴を変えるようなポーションは作れなかったもんなぁ。
「現代社会での魔術は夢がないよね」
碧も軽く苦笑しながら頷いた。
ま、上手くやっていったら私らはいつの日かプライベートジェットを買えるぐらい儲けられるかもだから、それはそれなりに夢があるけどね!
取り敢えずここでこの章は終わりです。
明日は休みますが、明後日からまたよろしくお願いします!




