信じらんない!!!
「信じらんない!!!!」
カーシェアの予約を入れ、退魔協会の職員の顔をハネナガに伝えて今日に帰りに待ち伏せして霊に気付けるか確認するよう頼んだあと、昨日届いたけど上手く使えなかった新しいスマートウォッチに関してカスタマーセンターとやり取りしていたのだが、物別れに終わって思わずクッションを投げた。
「どったの?」
クッションを拾いながら、碧が聞いてきた。
「以前買った安物の中国製のスマートウォッチのバンドがこないだ千切れちゃったのよ。
で、いい加減色々あちこちからちょっかい出されている身としては、情報ダダ漏れと思われる中国製のスマートウォッチはやめた方が良いかなと思って、中国以外製ではお手頃価格で韓国製なSam◯ungのGala◯y Fit3って言うスマートウォッチを買ったの。
まあ、メーカーはスマートバンドって呼んでるけど」
携帯は高かろうとソ◯ーのを使い続けている私だが、スマートウォッチはどうやら撤退したのか無かったんだよね。
「で?
昨日の晩、遅くまでなんか悪戦苦闘していたやつでしょ、それ?」
碧がローテーブルの上に投げ出されたローズ色のウォッチを指しながら相槌を打つ。
「そ〜。
一応Android10以上でメモリーが常識の範囲内にあればオッケーって公式サイトに書いてあったんだけど。
ペアリング済みって出るのに何故かちゃんと連携できないのよ。
スマートウォッチだから携帯と最初に一回でも連携できないと時計としてすら使えないし。
夜中だったから昨日の晩にAI相手のチャットで質問した時は頓珍漢な返事しか返ってこなかったから、30分ぐらい待ってやっとさっき人間のオペレーターとチャットで質問したら。
なんと!!!
ソ◯ーの私の携帯と、このスマートウォッチの互換性に問題があるのは分かっている不具合で、次のアップデートで改修されるまではどうしようもないって言われたの!!」
しかも相手はチャットで最初はそれしか書いてこなかったのだ。
「マジ???
会社側で分かっていたのに公式サイトには何も書いてなかったの??」
碧が目を丸くした。
「そう。しかも!!
次のアップデートはいつなんだって突っ込んで聞いたら、分かりませんだって!!
1ヶ月とか3ヶ月とか、何か目安はありませんかって聞いたら、自分には答えかねますって。
最初の質問の答えのあと、突っ込まずに大人しく『次のアップデート』を待ってたら永遠に直らなかった可能性もあるよね、これ?!」
マジでムカつく。
他社のアップデートとかで互換性に問題は起きることはしょうがないにしても、問題がある事が分かっているならサイトにそう書くべきじゃん!!
しかも、その不具合を知らされずに買った購入者がカスタマーセンターに連絡しても、『次のアップデートで』ってあるのかすら確定していない改修を待てと漠然とした答えを返すって。
客を馬鹿にしてる。
「それは酷いね。
返品したら?」
碧が同情しながら言った。
「だね〜。
まあ、幸いぐちゃぐちゃに破いたビニール袋とかは無いから、綺麗に返せると思う。
あ〜あ、スマートウォッチをどうするかなぁ」
やはり一円単位とはいえ、歩いた歩数でポイントがつくとやりがいがあってちゃんと歩き続けられるんだよね。
色々な事が三日坊主な私がウォーキングはずっと続けられているのは、間違いなくスマートウォッチとポイントのお陰なのだ。
「そういえば、日本の長野で起業した中小企業が、女性用のスマートウォッチを意外と良いお値段で売ってるみたいだよ?
この前『中国製以外のスマートウォッチ』でネット検索したら出てきた」
碧が教えてくれた。
「え、そうなの??
密林サイトだと中国製とアメリカ製しか売って無いと思ったけど」
ネットで検索し、実際に日本社のがあると書いてあったのでレビューサイトのリンクから密林サイトに行ったら、マジで出てきた。
え???
日本企業ので5千円台とか8千円台のスマートウォッチがあるの???
全然密林で見かけなかったんだけど!
そういえば、知り合いが密林で物を売るときは広告費か何かをかなり沢山払わないと販売の画面に中々出てこないから大変らしいって話をしていたな。
そっかぁ。
このスマートウォッチのメーカー名は横のメーカーの名前のフィルターに出ていないし、フィルター検索のボックスに打ち込んで探しても出てこない。ここには広告費をがっつり払っていない会社は出てこないようだ。
しかも10ページぐらいある商品参列ページの最後の方に回されるから、ピンポイントに商品名を検索しないと出てこないんだね。
『スマートウォッチ 日本製』っていう下のカテゴリーをタップしたら最後の方に出てきたが、その前に山ほどスポンサーって事で中国製のスマートウォッチが出てくるし。
しかも、国籍不明な企業のもこの『日本製』フィルターに含まれているっぽい? さっきのサイトで見かけた『国籍不明で買うのは勧めない』特集に出てきていた◯.ringとか言うスマートバンドも『日本製』としてスポンサーのタグなしに表示されている。
まあいいや。
韓国製のやつの返品のお金が戻ってきたら、こっちの日本製のを買ってみよう。
『出てきたぞ』
そんな事を考えながらタブレットで色々と口コミとかを見ていたら、ハネナガから念話が来た。
『どう?
ハネナガの事、見えてそう?』
退魔協会の職員って縁故採用が殆どだから、大多数は退魔師として働くには足りないけどある程度の霊能がある見習いドロップアウトか、もしくは退魔師家系の親戚かなんだよねぇ。
ハネナガが態とらしくそばに寄ったら、霊能持ちなら気付くと思うのだが。
『頭の上に乗っても反応しないな』
ハネナガがあっさり答えてきた。
おやま。
『他の職員に見られたら変に思われるかもだから、今日はそれで良いわ。
ありがとう』
カラスの霊を頭に乗せて歩いている同僚を見かけたら、才能持ちな職員に何か言われかねない。
まあ、明日の夕方には捕まえて尋問するつもりだから、大丈夫でしょう。
どうやら才能は無いみたいだから、がっつり記憶を読んで、あとは適当に誤魔化せそうだ。




