フラグ管理?
『実質、お見合い希望なようですね。
神に認められた愛し子と言うのは普通の人とは違った孤独があり、広い世界の中でもお互いに分かり合える数少ない仲間だと思い会いに来たとか何とか言っていますが』
白龍さまの同胞(紅龍と呼ばれているらしい)とその愛し子が私らのマンションの部屋に突撃して来たので、退魔協会の方で何とかしてくれと電話した翌日。遠藤氏から電話が掛かってきた。
「はぁぁ???
まだ私、大学も卒業してないんですけど。
元々お見合い結婚する気なんてないですし、現時点で結婚願望はゼロです。
時間の無駄なので、帰ってもらって下さい」
碧が大きく口を開けて暫し呆気に取られたあと、気を取り直して遠藤氏に速攻で断りを入れた。
『どうもあちらの国の上の方から何か日本政府の方へ圧力を掛けられているらしく、政府からせめて会うだけでも会ってもらえないかと要請が来ているのですが……』
遠藤氏がちょっと遠慮がちに言ってきた。
マジか〜。
と言うかさ、これって流石にハニトラは無理だろうから、『結婚』なんて言う無茶なリクエストから交渉を始めて、最終的には『一度中国に遊びに来ないか』か、『せめて赤龍さまに寄り添う子孫を得るために、卵子だけでもいいから提供してくれないか』とでも言ってきそうなんて考えるのは私が深読みし過ぎているのかな?
とは言え。確かに藤山家は白龍さまの愛し子がちょくちょく生まれてきた家系だけど、それって遺伝子というよりは一族の気質が白龍さまが気にいるような大らかなタイプが多かったからだと思う。碧の卵子を貰ってもその子供が白龍さまに愛し子と認められるかは子育てのやり方が大きく関係するだろうし、中国で見知らぬ人間に育てられるんだったら可能性は限りなくゼロに近そうだ。
赤龍さまの方だって似たようなもんなんじゃない? 愛し子同士の子を得ても、その子が愛し子になる可能性はかなり低いだろう。
まあ、碧はそれなりに力の強い白魔術師だ。あの若い男性もかなり魔力があるみたいだったから、強い術師が生まれる可能性は高いかもだけどね。
中国がどんな風に術者を育成しているのかは知らないが、才能がある者同士の交配ぐらいは強制してそう?
そう考えると、お見合いをさせて上手くいきそうになかったら卵子と精子を提供させて、シャーレで受精させて代理母の母胎に産ませれば、国にしか帰属しない能力者を作り出せる。ある意味、お見合いなんて成功しない方が国にとっては都合がよさそうな気さえするね。
うわ〜。うっかり私や碧が卵子を冷凍保存させようなんて思いついたら、絶対に施設から卵子を盗まれそうだな。
碧がいればバイオロジカル・クロックなんて怖く無いから、卵子を冷凍保存する必要もないけどさ。
「私の子供を政府の都合で他国に寄付するつもりはありません。
そんな事を本気で求めて圧力を掛けてきたら政府に天罰が落ちまくると思いますよ?
あの青年が暫く私が通う大学にでも留学すると言うのだったら多少は手助けとして大学や近所の店の案内程度はしても良いですが、そもそもあの人日本語が話せるんですか?
通訳を通してしか意思疎通ができない相手と結婚するどころか親しくなるのは無理だと思いますが」
碧が少し嫌味混じりに電話の先の遠藤氏へ告げた。
だよね〜。
あの中年女が通訳だとして。デートに毎回親の年齢ぐらいの女性が付いてくるとなったら、マジで興醒めでしょう。
赤龍さまとか白龍さまの念話なら意思疎通はできるが、氏神さまに通訳してもらうお見合いも無理があるでしょうし。
『取り敢えず、日本語が話せるかの確認と、留学予定があるのかを聞いておきます。
お見合い自体は断固拒否、留学するなら何度か会って日本に馴染む手伝いをする程度は許容範囲内と言う事で宜しいでしょうか?』
遠藤氏が深い溜め息を吐いてから確認してきた。
ストレス溜まってますね〜。
「まあ、会わないのが一番理想的ですけどね。
何か政治的圧力を掛けられているなら何度か会う程度は協力しても良いですが、デートや結婚は問題外ですね。
彼が日本に永住すると言うのならワンチャンあり得るかもですが」
碧が最後に付け足して、電話を切った。
……なんか最後のそのセリフ、ちょっとフラグっぽくない??




