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転生しても、現代社会じゃ魔法は要らない子?!  作者: 極楽とんぼ
大学4年

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命の恩人、ねぇ

 リビングで電話が鳴った。

 毎度お馴染み、退魔協会の着信音である。

 はっきり言って、ウチの固定電話には退魔協会以外は掛けてこないし、たまに掛かってきたら押し売りか、もっと酷ければオレオレ詐欺とか警察を装った特殊詐欺の人間ばかりである。

 もう退魔協会の番号以外は掛からないようにして、代わりに電話の基本料金を退魔協会に払って貰いたいぐらいだ。


 流石に家にいない時まで携帯へ仕事の電話を掛けてこられるのは邪魔なので協会からの連絡先を携帯電話に変えて固定電話を撤去しちゃう訳にはいかないが、掛かってきて欲しくない時にあの着信音が響くとイラッとする。


「今回は仕事は絶対に無理なのね?」

 碧がソファでぐだっと休んでいる私の方を見て確認した。


 ちょっと息抜きに休憩って事でリビングに出て来ていたけど、ここ数日はずっと講義で大学に出ている時と調べ物で図書館や官庁に行っている時以外は只管部屋で卒論の為に調べごとや下書きに励んでいたのだ。

 こんなに真面目に机に向かったのって大学受験以来な気がする。

「勿論よ。

 ゼミの教授に全然足りないってダメ出しされたから、マジで頑張らないと」

 一応大学の単位自体はゼミの単位を落としても卒業できる様に余裕を持って取っているから、卒論が認められなくても卒業取り消しって事は無い。が、大学に4年通った総仕上げとも言える卒論が却下されて単位を取り損ねたなんて絶対に同期とかに知られたくない。


 と言うか、卒論を書かないならゼミに入るべきでは無いと言うのがウチの大学のスタンスだ。噂では4年の後期になってゼミを辞めた人間のリストが出回り、大学のネットワークからさりげなく外されることがあるとか。

 まあ、私は退魔師として生きていくんで大学を卒業する必要すらも無いっちゃあ無いのだが、ここまできて卒論を落としたなんて言う屈辱は我慢が出来ない。


 何で今頃焦っているかと言うと、夏休み前に教授に卒論の概要を話したときは『良いんじゃ無いの〜』と言う感じだった卒論だが、先日草稿を見せたら『結論への論理を後付ける数字や法律・省令などの詳細が全然足りん!!ここも、ここも、ここだってもっと証拠となる数字と参照元を出せ!』とダメだしされまくったのだ。


 お陰で卒論を書くにあたって参考にした資料を再度見直して数字を引っ張り出し、足りなそうなのは官庁とかのサイトを探しまくって公的な統計の数字を探し。更には関係する規制まで調べ、いまいち分からないことに関してはお役所に行って質問までする羽目になったのだ。


 久しぶりに頭を使いまくって疲れたのでソファにぐったり座ってココアを飲んでいる私の横を通り、碧が電話を受ける。

「すいません、ちょっと今卒論の締め切りに向けて必死に頑張っているところなので、最低でも来月までは依頼を受けられません」

 碧が電話を受けて問答無用にお断り宣告した。


『……そうですか、残念です。

 ちなみに、今日はアジア各国の術者との交流会のお誘いの件で電話させて頂いたのですが、それも不参加と言うことになりますか?

 来月の5日なのですが』

 遠藤氏の声が一瞬の沈黙の後に流れてきた。


「まだ来月の5日では見直しに必死になっていると思います」

 大きな声でスピーカーに返事をする。

「私も同じくですね」

 あっさりそう言って碧が電話を切った。碧は卒論の草稿に既にオッケー貰っているんだけどね。まあ、交流会なんてデフォで不参加だよねぇ。


 まあ、これ以上話して説得されても困るし、向こうの話に耳を傾けても結局断るなら時間の無駄だし。さっさと通話を切るのが正解だよね。

 とは言え。

「こう言う外国の術者との交流会なんて時々やるもんなの?

 今まで招かれた事は無いけど」

 と言うか、こないだの国際術師フォーラムですらアホか?!と思ったのに、アジアの術師との交流会なんて正気を疑うレベルの愚行じゃない??


「なんかねぇ。

 昔、業界のお偉いさんの何人かが敗戦後に中国から逃げて来るのに助けてもらった恩があるとかで、時々押し切られるらしい。

 毎回やるたびに誰かがハニトラに引っ掛かるか、ヤバそうな婿や嫁を旧家の跡取りに押し込まれて知識や古くからある家宝を根こそぎ抜き取られるかして、『二度とやらん!!』って協会の総会で誓うのに、10年おきぐらいにどっかのアホが『時代は変わったんだ、過去に囚われ過ぎるには良くない』とか言いだして開催して、皆で後悔するらしいね。

 そろそろ恩を受けた連中が全部死に絶えたと思ったんだけど。

 もしかしたら親の命の恩人って事で押し切られたのかな?」

 碧がちょっと首を傾げながら言った。


 なるほど。

 ある意味、本当に命を救われたならばアメリカに押し切られるよりはまだ理解できるかもという気もしないでも無いが、どちらにしても関係ないのに狙われる立場にある若い女性としては良い迷惑だね。


「ハニトラ警報が出まくっている今の時期に、何でやるんだろ??」

 気がしれないぞ?


「ハニトラに失敗したから、実務から遠ざかってる半ばボケた重鎮を泣き落としたんじゃない?」

 碧が肩を竦めた。


 なるほど。

 どちらにせよ、良い迷惑だね。


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― 新着の感想 ―
うちちも定期的に怪しい電話がかかってきます 留守録を確認すると NTTドコモのサービスが停止になるから 今から言う通りに対応しろと 判で押したように同じ事を繰り返してきます ちなみにNTTドコモのサー…
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