付喪神?
今回は誘拐リスクに対して万全を期す為に、ボディガード代わりに田端氏も同行することになった。
相手は完全に意識がないとの事で、倒れた外人は病院に入院中。少なくとも私らが大使館に行く羽目にはならないで済んだ。
と言うか、そうなったら病院まで救急車なり外交官ナンバーのリムジンなりで連れて来いって主張するつもりだったけどね。
ホテルで暴れた際に取り押さえたら昏倒したので、そのまま手錠をつけて警察病院に運ばれたらしい。
そっちで更に目覚めたと思ったらハサミを振り回したので現時点では手錠をつけてベッドに繋いでいるらしいが、警官に腕を蹴られてハサミを落とした後はずっと意識不明とのこと。
「お久しぶり……って程でも無かったでしたっけ?」
ウチまで車で迎えに来てくれた田端氏に挨拶する。
病院の最寄り駅で待ち伏せされたら困ると言う事で、一応車の送迎付き。
と言うか、あの国が本気で知りたかったらとっくのとうに私らの情報は住所や生年月日、実家の場所を含めて全部流出していると思うけどね〜。
流石に家まで誘拐に来たら白龍さまの天罰ディフェンス炸裂は間違いないから、そこまで心配はしていないけど。
実は最寄り駅で待ち伏せされたって無理やり車に連れ込むなんて言うのは無理だと思う。
それよりも病人っぽい囮を使って碧を引きつけ、どうしても不安だから一緒に病院まで来て欲しいとでも懇願して車に連れ込み、どさくさ紛れに大使館へなんて言うのの方がありそう。
とは言え、余程強力な洗脳でも出来る黒魔術師を使って一気に碧の意思を捻じ曲げない限り、大使館に連れ込んでも解放せざるを得ないけどさ。
だが、大使館で強力な黒魔術師がいて一気に碧を一目惚れに近いような状態にして『アメリカに行くわ!』と言い出すような状態にされるとヤバいから、一応ボディガード役を付ける事になったのだ。
私が居れば洗脳も大丈夫な筈だけど、碧と私がうっかり引き離されたら危険だからね。
それはさておき。
「前回会ったのは下旬にあのお洒落な超高級高齢者用施設で大量の呪詛返しを受けた呪師を引き取った時依頼ですから、1ヶ月半と言ったところかな?」
私と碧が後部座席に座り、シートベルトを締めたのを確認して車を発車させながら田端氏が答えた。
そっか、あれからもう1ヶ月半も経ったか。
夏がいつまで経っても終わらないような気がしていたけど、いつの間にか秋になってきたもんねぇ。
この調子じゃあ『いつの間にか卒論の締切が!!』なんて事になりそうだから、マジでちょっと退魔協会に私らが卒論を書き終わるまで依頼を持ってこないように交渉しようかなぁ。
留年したら、学業を優先して仕事はほぼ週末や長期休暇時期だけにするよ〜って脅したらちゃんと遠慮してくれるかも。
実はお守りやアイピローの符とかを作っているから卒論が進まないって言うのもあるんだけどさ。
いや、退魔協会の依頼が入らなければ、符を作成しながらでもちゃんと卒論が終わるようにスケジュールは組んでいるのだ。
だから、悪いのは退魔協会!
まあそれはいいとして。
「そう言えば、そのビジネスマンが病院で意識を取り戻した時に振り回したハサミはどうなったんですか?」
そっちに悪霊?付喪神?が移った可能性もあるから、安易にハサミを皆がアクセスできる文房具入れに入れたりしていたらヤバいが。
「なんでも、証拠品として警察が持ち去ろうとしたら被疑者がひきつけを起こしてヤバそうな感じになったらしくてね。
しょうがないからビニール袋にしっかり封じて病室の引き出しに鍵を掛けて仕舞ってあるとの話だ」
田端氏が教えてくれた。
そっか、証拠品扱いなんだ?
誰かを切り付けた傷害事件のになったのかな?
病院のハサミで誰かを切ったかどうかは聞いていない気がするけど。
「折れた刀はホテルの現場から警察の証拠保管所の方へ持って行っても問題は無かったんですね?」
碧が尋ねる。
「ええ。
ハサミの方は、最初に依頼を受けた退魔師が言うにヤバい何かが取り憑いているけど、祓えなかったと」
付喪神系だと元になった物を完全に破壊すると付喪神自体も崩壊して消えることも多いんだよね。
だから歴史的価値のある日本刀はまだしも、普通のハサミだったらそれこそ溶解炉に投げ込むのもありなんじゃない?と思ったが、変な風に被疑者(被害者と容疑者の合体した名前っぽくて笑える)とリンクしちゃって持ち出せないし破壊も無理かもって感じになったのかね?
この際だから、被疑者とやらがひきつけを起こそうとハサミを持ち出してみたら良かったのに。
ボディガードか秘書かが止めたのかな?
まあ、取り敢えず。被疑者さんを見てからどうするか碧と話し合おう。




