謝罪会見を出来ないように拘束?
「見て見て〜。
大統領と大学の争いで先陣を切って色々嫌がらせをしていたとか言う次席補佐官の部下が、大学を回って謝罪行脚してるんだって〜」
アイピロー用の符を書き終わり、ちょっと気分転換にリビングに出てきたら碧がタブレットを見せてくれた。
「へぇぇ。
謝罪会見をする代わりに大学を回って謝罪行脚で水を濁そうとしてるのかね?
あの大統領の下じゃあ今になって助成金を戻しましょうって提案しても耳を貸さないだろうから、最初に唆したとか大統領の希望に即してやり方を提案する前の時点ならまだしも、今じゃ謝ったところで損害を戻せないし、許して貰えないでしょうに」
まあ、謝罪する際に嘘をつけないって条件は無いのかもから、『大統領のせいだったんだ、自分は悪く無い』と謝罪して許されるのも可能なのかも?
それで本当に天罰の条件を満たすのかは怪しいと思うけど。
第一、謝罪行脚してるって大統領にバレたら裏切り者って事でさっさとクビになるんじゃない?
あの大統領、役所や軍のお偉いさんとかでも野党の支持者だと見做したら理由なんぞなしにガンガン首を切っているんだから、補佐官のそのまた下の人間なんて裏切っていると疑われただけであっという間に解雇だけでなく、下手をしたら司法省に訴えさせて刑務所に叩き込むぐらいの事をしそう。
刑務所入りにならなくても、起訴されたらそれが理不尽だって争うだけでも弁護士費用で破産かな。あっちの弁護士ってめっちゃ高いらしいから。
「だけど次席補佐官の部下程度なのかぁ。
もっとあの大統領が失脚しそうなぐらい、本人か側近の偉い人まで繋がっていたら面白かったのに」
碧がため息を吐きながらタブレットを置いた。
『まだ天罰が行き渡っておらんから、もう数人は失脚すると思うぞ?』
白龍さまがふわふわと宙に浮きながら碧に教えた。
「お、そうなんですか!
楽しみですね。
今回のは中々政治家には効きそうな天罰ですし」
嘘をつけないって言うのもそれなりに致命的だけど、弁護士とかを通せば意外と言い抜け出来ちゃうレベルにやらかしが収まっちゃうかもだからねぇ。
下痢で苦しむって言うのもザマアミロとは思うが、政治生命を直接脅やかす訳ではない。
自分の利益の為に権力で他者を害したら謝罪しまくらなきゃならないと言うのは、中々その点、いい気がする。
実際に大学へ謝罪行脚しているんだから、それなりに適用範囲は広いみたいだし。
ふふふ。
謝らねばと言う衝動に抵抗して、謝罪会見に追い込まれるとか。目撃者が多い場面でうっかり謝罪を始めちゃうとかになれば更に面白い事になりそうだけどね。
正に、あの大統領だったら『俺は悪く無い!!』って謝罪自体にがっつり抵抗するせいで天罰の圧力に負けた時にはめっちゃ派手にやらかしてくれるかもと期待していたんだけど。
『うむ。
色々と碧にちょっかいを出す輩が増えてきたからの。
今時の権力者相手だったらどの様な天罰が一番ダメージを与えるか、色々と考えておったんじゃ』
ちょっと自慢げに白龍さまが教えてくれた。
そっかぁ。
火の鳥君が警告する前から、碧へちょっかいを出された場合にどんな報復が良いか、考えていたんだね。
流石、白龍さま!
◆◆◆◆
約1週間後に、幾つかのインディアンの部落の集会で謝罪をしまくった次席補佐官とやらが逮捕され、収監されたとニュースになった。
「保釈も却下されたんだって。
家族が居るし、まだまだ話を聞きたいから保釈を認めて被害者に謝罪する機会を与えるべきだって人権団体とかインディアン部族のNPOとかが主張しているけど、あの大統領が任命した裁判官が国外逃亡リスクがあるって保釈を却下したんだって。
しかも逮捕された途端に面会すら出来ないぐらい具合が悪くなったらしいね」
朝のニュースにちらっと出てきたからネットで調べたら、もう少し情報が出てきた。
とは言え、かなりの勢いで消されているのかアクセスエラーになるサイトが多かったけど。
「うわぁ、大統領が自分にとばっちりが来ない様に謝罪会見できない状態にしたんかな?
これって謝罪が出来無い状態だとどうなるんですか?」
碧が白龍さまに尋ねる。
『手紙で謝罪して弁護士なり家族なりに出してもらうのでも謝罪として数えるぞ?
それすら出来ない状態だった場合、単に天罰の効果が長引くだけじゃの』
白龍さまが応じた。
「うわ〜。
下手したら5年とか10年後に出所した後に謝罪行脚する羽目になる訳だ。
悲惨〜。
ちなみに、まだ他にも天罰に抗っている人はいそうですか?」
次席補佐官だったらその上ってどこぞの大臣か、大統領本人になりそうでちょっとワクワクする。
『いや、あれが最後じゃの。
あまり人を間に挟んでおらなかったようじゃ』
白龍さまが言った。
「そっかぁ。
大統領本人は関与してなかったとは、残念と言うかホッとすると言うか、微妙なところだね」
碧が言った。
確かに、世界で一番権力がある人間に狙われていると考えると嫌だよね。
その人間を天罰で排除できればそれはそれで安心だけど、必ずしも失脚する保証はないし、そう考えると次席補佐官が失脚して、少しでも大統領の支持率に陰りでもあれば御の字ってとこかな?
ちょっと残念だけど。
でもまあ、これで暫く静かになると良いんだけどね〜。
これでこの章は終わりです。
明日は休みですが明後日からまた宜しくお願いします




