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やって欲しいような欲しくないような

『ちょっと待ってくださいね。

 暫くしたら孵りますから』

 卵から念話が返ってきた。

 今回は対象を絞っていないお陰で碧にも聞こえたみたい。

「暫くしたら孵るって……どのくらい掛かるの?」

 碧がちょっと首を傾げながら尋ねた。


『季節が変わる前には十分魔素が溜まると思います!』

 のほほんとした返事が返ってきた。


 おい!

 それじゃあちょっと遅いんだけど!!

 いやまあ、此処でのんびり魔力を蓄えてから帰るのは構わないけどさ。外で待っている人たちが居るんだよ!


「取り敢えず、先に何故カレンの事を気を付けなきゃいけないのか説明して」

 別に火の鳥君がのんびり此処で日向ぼっこしながら魔力を蓄え、準備ができたら孵って境界門を通って出て行くのは構わないが、気を付けろと言った分の説明を求める!


『人間は幻想界の者程ノンビリしておらんのじゃ。

 気持ちよく眠りにつく前に、説明せい!』

 白龍さまが現れ、ピシャ!とさっきの雷撃もどきっぽいのを卵に落とした。

『ピギャ!!』

 白龍さまが誰かにあんな感じに魔力をあげていたのを見たことがある気がするが、今回は単に痛いだけだったのか、卵が孵る様子はなかった。


 もぞもぞと動く感じに卵が揺れた後、説明が始まった。

雷鳥サンダーバード様を見かけたから挨拶しようと近いたら、彼の方がこちらに繋がる境界門を見つけた所だったんです。久しぶりにこの世界に来ようって言い出して、お前もどうだって言われてご一緒したんですが……飛んでいる最中で勢いがついていたせいか、門を通る時にちょっと羽根をぶつけちゃって。

 慌ててそれを治していたら雷鳥サンダーバード様と逸れていたんです。

 境界門も彼の方を探してウロウロしている間に閉まっちゃったし。

 使った魔力も戻らないし、魔素がやたらと薄いし、ヤバいと思って頭を抱えていたところに彼女が来たんですよ』

 火の鳥君が説明を始めた


 やっぱサンダーバードと一緒に来たのね。

 一緒に連れてきた子(?)がドジをして怪我を負ったっぽいなら助けてあげれば良いのに。

 せめてこっちの境界門から帰る前に、一緒にいないことぐらいは思い出してあげなよ〜。


『僕を見て物凄い興奮して、捕まえようとしたので慌てて逃げようとしている間にさらに魔力を無駄遣いしちゃって。マズイと思ったから一旦岩陰で隠れて卵に戻ったら、それも見つかっちゃって。しょうがないので憐れげに助けを求めて害はないって事を強調したんです。

 念話で色々聞いてきたからこっちの事情を説明したら本人も悪気は無かったのか追いかけ回してごめんと謝られた後に、魔力が多いかも知れない有名なパワースポットを回ってみようと言ってくれまして』

 怪我をしていたとは言え、人間に追いかけられた程度でジタバタしている間に魔力切れになるとは、どうやらあまりランクの高くない幻鳥だね。

 もしかしたら活火山の火口の中とかに放り込んだら元気いっぱいになるのかもだけど。


「先祖から伝わるパワースポットを色々と行ってみたのかな?」

 碧が言った。

 確かにね〜。

 原住民が知っていた魔力が強いパワースポットが伝わっていたとして、それが実際にどの程度魔力があるか、興味があったのかも。

 火の鳥君に同情したっていうのも多少はあるだろうけど。


『あちこち回ったんですが多少は魔素が濃いかも?と言う程度の場所しかなくて。

 で、海外のパワースポットに行こうかと出国申請を出している時に、どこかから連絡があって。

 日本の白龍《white dragon》様の所に行って、愛し子とされる女性をアメリカへ来る様に勧誘すると約束するなら出国許可を与えるし、成功したら今のお偉いさんが切った助成金?も戻すって』


 ほおう?

 助成金って大学? それともインディアンの部族に対する何かの資金援助?

 インディアンの部族だからって助成金があるのかは知らないけど。

 まあ、元々住んでいた豊かだったり便利だったりな土地を略奪して誰も欲しがらない不便な土地へ追いやって迫害したんだからねぇ。ろくな教育も受けられないし経済産業的な基盤もなくて困窮した状態から抜け出せない可能性は高いから、そういう意味で何か助成金があっても不思議はないかな?

 今の大統領になったら真っ先に切られてそうだけど。

 退魔師……というかシャーマンの研究を大学でやっていたとしたら、そっちの助成金も切られてそうだよね。

 下手したら二重に助成金を切られてたり。

 大学の助成金を切られて研究を止めなきゃいけなくなったから部族の本拠地に戻ろうとしたら、そっちも支援を断ち切られてアップアップしてたなんて事になっていた可能性もあり?


 まあ、退魔師的な仕事はアメリカだって需要と供給は退魔師側に有利な方に傾いているとは思うが。

 だがアメリカだったらキリスト教のエクソシストか新興宗教系がメジャーで、インディアン系のシャーマンじゃあまり仕事が来ないのかもね。

 下手をしたら州ごとに登録しないとダメとかで、引っ越すと登録し直す費用や手間を掛けないと合法的に除霊の仕事も出来ないかもだし。


「ちなみに碧を勧誘ってちょっと軽く意思誘導を使う程度?

 それともがっつり洗脳させろとか、誘拐に手を貸せとかまで言われているの?」

 あまりやりすぎると日米関係に差し支えるだろうし、何と言っても白龍さまの天罰が炸裂するだろうに。


『連絡してきた相手は誘うだけで良いって言っていたけど、勧誘に成功したら助成金の金額を10年保証付きで倍にするって言っていたって呟いていました』

 火の鳥君が教えてくれた。

 なるほど。

 直接命じるのではなく、出来うる限りのことを自発的にやる様に餌をぶら下げたのか。

「この場合って何かやってきたら、話を持ち掛けてきた相手にまで天罰を下せます?」

 白龍さまに尋ねる。


『さっきの弱い意思誘導程度じゃあ無理じゃの。

 もっと強いのを掛けてきたら、碧の意思を曲げてでも呼び寄せようと意図した人間まで届かせようぞ』

 白龍さまが不機嫌そうに尻尾をブンブンと振りながら言った。


 さて。

 そうなると、カレンがどこまでやるか、乞うご期待って感じだね〜。





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― 新着の感想 ―
ジャーマンなら愛し子に危害を加えたら どんなしっぺ返しがあるのか 想像つきそうなもんですが
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