黒魔術師なのかな?
「「Hah???」」
キャロルとカレン(だっけ?)があっけに取られたように軽い電撃を受けたらしきキャリーケースを見つめた。
次の瞬間、カレンが悲鳴を上げながらキャリーケースに飛び付く。
「My PC!!」
あ、そっちね。
確かに鳥からどうやってか卵に戻った不思議な存在よりも、自分のPCの方がある意味重要だし心配だよね。
壊れてた場合の買い直す値段もだが、中のデータが飛んでいたらマジで痛い。
最近は何でもかんでもクラウドにセーブする事も多いから、ケチらずにメモリーを増やして全部クラウドにバックアップしてあれば大丈夫かもだが、ケチったとか、クラウドのセキュリティを信頼しきれずにPCだけに入れていた場合、PCが電撃で逝っちゃった場合のダメージは大きい。
キャリーケースの前のポケットを開き、急いでノートパソコンを取り出したカレンさんがPCを開いて立ち上げてみたところ、どうやら普通に電源が入ったっぽい。
あら良かったね。
……白龍さまの電撃って雷っぽいイメージだけど電気じゃないのか。
魔力の一撃なのか、それですらない気とかなのか。
微妙になんなのか気になるし、魔力の攻撃ってPCに影響が本当に無いのかも好奇心が疼くが、人のPCで色々破壊実験する訳にはいかないからなぁ。自分のPCも壊したくないし。
取り敢えず、PCが壊れていないっぽいのはよかった。
カレンがログインした後にいくつかアプリを立ち上げて中身を確認しているが、どれも問題なく起動しているようだ。まあ、PCが普通に起動するのに一部のアプリだけ障害が出るなんておかしいよね。
「取り敢えず、ここにいつまでもいるのもなんだし、まずは聖域近くの横道まで行きましょうか」
碧が気を取り直して、二人に提案した。
どうやら火の鳥とやらの紹介も後回しにすることにしたようだ。
まあ、ここで白龍さまか碧に魔力を貰って突然卵から成鳥サイズの赤い鳥が出てきたり、もっと困ることに燃え盛る火の鳥が出てきたりしたら大騒ぎになりかねない。誰かにスマホで動画を録画されてネットに晒されたら更に面倒だからね。
まずは人目がないところに行くのが無難だ。
「はい、乗った乗った〜。
あ、キャリーケースは良かったらトランクに入れる?」
卵が入っているなら抱いた方が無難かも知れないが、このサイズのキャリーケースは多分貨物室に預けて飛行機に乗った筈。
だとしたらそれなりに乱暴に投げられても割れないぐらい卵が強いか、しっかり梱包されているかなのだから気にしなくても良いだろう。
いや、もしかしたら飛行機に乗る時だけ、手荷物に入れてたのかも?
と言うか、卵って生物扱いで海外からの持ち込み不可だよね。
食べ物系って真空パックされている燻製とかでも駄目って聞いた気がする。生きた卵なんて絶対に駄目だろうに、どうやって税関や出国前のX線のスクリーニングを通したんだろ?
カレンも黒魔術師で意思誘導が使えるのかな?
……そう考えると、黒魔術師って危険物を飛行機とか他国に持ち込み放題?
飛行機へのテロ的な危険度に関して言えばどうせどんな武器よりも魔術師の方が物騒だと思うから魔術師の適性は関係ないかもだけど、黒魔術師ならば危険な病原菌があるかもって事で持ち込み禁止されている生ものや、麻薬とかを国内へ持ち込み放題って言うのはヤバいよね。
空港で意思誘導とかを使われたら警報でもなるようなシステムでもあれば良いのに。
なんかそう考えると、魔術や魔力を科学で特定できるようになったら黒魔術師って前世のような『生まれて育っただけで隷属化』って言うのは無いにしても、移動の自由とかはかなり制限されそう。
いや、ちゃんと魔力の行使を探知できて、違反者を拘束できる技術が同時に確立すれば大丈夫かも?
まあ、今の世の中では魔術師全般がほぼ良識任せな状況だからねぇ。
権力者側もあまり考えてないのかな?
流石に自分の身の安全とかはガチガチに確保しているんだろうけど。
多分。
下手に権力者の側に寄ってどんなふうにそれがやられているか知って、ついでにお前も国のために働けなんて言われないよう、永田町には近付かないようにしよっと。
碧がキャロルと話しながら時折カレンとも言葉を交わしている間、私は慎重に車を聖域の方へ運転しながらそんな事を考えていた。
カレンが黒魔術師なら。あとで念話でアメリカで黒魔術師の扱いはどうなのか聞いてみても良いんだけど、黒魔術師かどうかをどう確認するかが微妙なところなんだよなぁ。
念話で話しかけるのは黒魔術師か確定する前に自分の適性を曝け出すことになるが、勝手に記憶を読むのは黒魔術師だったらめっちゃ失礼な行為だとして激怒されるだろう。
どうしよっかな〜。




