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意外と狭い


「除霊が終わりました。

 先ほどの駐車場まで、タクシーを呼んで貰えます?

 さっきの女性が病院の近辺で待ち受けていそうだから、歩いて出て行きたくないんですよね」

 亜希子さんに異常は無いことを確認し、ちょっとオカルトへの興味を薄め終わったところで病室の扉を開けて、廊下にまだ立っていた吉田氏へ声を掛けた。

 私達を人目につかない様に迎え入れる事を言いつかっただけなのかと思ったけど、勝手に姿を消さずに待っているってことは……病院側から今回の案件の対処に関して除霊の確認と私達へのヘルプを任されているのかな?

 どちらにせよ、残っていてくれて助かった。


「分かりました」

 部屋の中を覗き込み、目を丸くしてから頷いていたので、それなりに霊感があって悪霊とかが感じられる人なのかも。

 まあ、多分霊感ゼロでもこの部屋に近づいたら背中がゾクゾクするとか言う感覚はあったと思うけど。

 廊下の向こう側のナースステーションも、殆ど人が居ないからねぇ。

 どうしてもそこに居なきゃいけない人以外は何らかの理由をでっち上げてでも別の場所に行っているのだろう。


「じゃあ、私は遠藤さんの方に依頼終了の連絡をしておくね」

 碧が携帯を取り出しながら言った。

「あ、ついでに被害者の幼馴染とかが病院で隠れて待ち構えていたんで、今後あの依頼主の案件は受けるつもりは無いし、絶対に私らの名前を依頼主に伝えない様にって念を押しておいて〜。

 同じ様な悪霊に祟られても、次は私達は助けないって依頼主にも伝えて貰った方が良さそう」

 あの亜希子さんも懲りないタイプっぽかったしね。


 基本的に依頼主へ自己紹介するか否かは退魔師の選択しだいで、退魔協会が退魔師の名前を外部へ公開することは無い筈だが、お礼を言いたいとか言われてうっかり連絡を取ってみますなんて事になっても困る。

 今後は藤本家の依頼は全て拒否と言っておけば、こちらの気持ちは伝わると思う。もう一度懲りずにヤバい悪霊に祟られた場合、少なくとも私らには除霊を頼めないと分かっていれば少しは慎重になる……かも?



 ◆◆◆◆


「お久しぶり」

 大学の大教室で講義を受け終わり、帰るために荷物をバッグに入れていたら声を掛けられた。

「あら、久しぶり。

 妹さんは元気?」

 以前、妹(実は従姉妹だけど)の呪詛祓いをしたら父親が刺されちゃった西江氏じゃない。


 と言うか、考えてみたら、彼も西江って名前だったね。

 鈴木とか田中じゃないのに、重なるとは珍しい偶然だ。


「ああ、今では元気に大学受験に向けて予備校に通っているよ。

 そう言えば、もしかして最近美夜に絡まれてないか?」

 西江氏が聞いてきた。

 あらら? 苗字が同じなのって偶然だけじゃない?

「……退魔師に妙な感じに執着しているのか、『絡まれそうになりかねない状況だった』と言うべきかな?

 もしかして、あの西江さんって親戚?」

 近藤さんにも私の連絡先を絶対に知らせるなと念を押してあるので、多分大丈夫だとは思うけど。

 西江 美夜には私が退魔師である事はバレてないんだし。


「父方の又従姉妹なんだ。

 どうもうちの父親が本家の方を数人呪い殺したこととか、妹に呪詛を掛けさせたこととかを親族が集まった時に中途半端に話を耳にして、興味をかき立てられたらしくてね。

 呪詛だけじゃなくて悪霊とか言った超常的な事に凄く興味を持って、大学院までいってそう言うことの研究をするなんて言いだしたんだ。

 ちょっと似たようなオカルト狂いな幼馴染と南米に行って悪霊を直に体験して、益々興味が燃え上がったらしい」

 西江氏が教えてくれた。


 マジ?!

 興味が燃え上がったの??? 懲りたんでなく??

 ペルー行き三人組のうちの一人が大学院に行くとは聞いていたけど、それがあの西江さんなのか。

 てっきり亜希子さんの方かと思っていたんだけど。

 う〜ん。

 まあ、近付いてきたら意思誘導で私の事を考えないようにしよう。

 流石に大学院で研究すると言っているのに突然オカルトへの興味を失ったら周囲から怪しまれかねない。

 幸い、オカルト狂い仲間な藤本さんは少し興味が薄れただろうし、近藤さんは私が退魔師だとは知らないし、なんとかなると期待しよう。


「多分私に関しては、退魔協会の連絡先を知っているから何か伝手があるかもって程度で絡んでいるんだと思うけど、私と個人的に知り合いであるとか、私が退魔師であるとか、絶対に言い触らさないでね?」

 ちょっと目付きを鋭くして西江氏に念を押す。

「勿論だよ。

 今日話しかけたのだって、美夜が諦めてないかもって警告だけしておこうかなと思っただけだから。

 本家とは殆どやり取りはないし、もうあちらの集まりにも参加するつもりは無いから俺も美夜と会う事は殆ど無いと思うしね。

 安心してくれ」

 軽く両手を上げて降参ポーズ(それとも警察に逮捕されるポーズ?)をしながら西江氏が言った。


 信頼してるからね〜?

 意外と世の中は狭いようだし、変なのに粘着されるのはごめんだ。

 取り敢えず、私へ繋がる縁は全部切れていると思うけど。

 

それでも諦めなかったら、大学院の研究がどうなろうとこちらへの興味は消させてもらうよ?


ご自分の将来のためにも、そろそろ大人しく諦めてね〜。



 これでこの章は終わりです。

 明日は休みますが、明後日からまたよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
これはたちの悪い縁が出来てしまいましたね いずれ何処かで出会うことになりそう
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