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そう言うクレームもありなのか

『ちょっと会えるかしら? ケーキとお茶を奢るわ』

 大学でランチを食べていたら携帯が震えた。

 確認したら、近藤さんだった。


 厄祓いに成功してお礼にケーキでも奢ってくれるのかな?

 それとも上手くいかなかったから藁をすがる事にしたか。

 いやでも、地球を半周まわって消耗したのか、近藤さんに憑いていた悪霊はそれほど強そうじゃなかったし、何と言っても近藤本人がそこそこ平気そうだったから、隣駅の◯川神社だったら大丈夫だと思うんだけど。

 お祓いに行っても体調が悪いとしたら、悪霊のせいというよりもマジで寄生虫かなんか珍しい風土病を拾っちゃった可能性が高いかも?


「今大学にいるんだけど、この後講義があるから三限目の後に正面の校門近辺で待ち合わせるのでどう?」

 一緒に食べていた友人に断って急いでメッセージを音声入力する。

 高校時代は薙刀や合気道や受験勉強で忙しかったから、いまいちフリック入力が苦手なんだよね。

 大学に入ってからは長文を入力するときはタブレットを使っているし。

 音声入力って周囲に何を書いているかバレちゃうし、なぜか不思議なスペースが文字の間に入ることがあるけど、意外と正確だし何よりも楽で良い。


『待ってる』

 近藤さんから端的に返事が来た。


「お待たせ」

 前に座る友人に断り再度フォークを取り上げて雑談しながらパスタを食べ始めた。

「何か問題?」

「う〜ん、多分大丈夫なんじゃないかな?

 就職活動が終わって、最後の学生時代の夏休みを活用してペルーに行って来た人とこないだ会ったのよ。

 その時に話題になった事が気になったみたい」

 お礼を言うにせよ、退魔協会を雇うにせよ、あまり私に関与する必要はないんだけどね。まあ、ケーキとお茶を奢ってもらえるなら大学に来ているついでに話を聞きましょう。


 三コマ目の授業を終え大学の正門の方へ行ったら、近藤さんがもう一人別の人と立っているのが見えた。

 うん、ちゃんと厄祓いがうまく行ったらしく、悪霊も消えている。

 顔色もこないだより良くなっているから、体調が悪かったのはやはり悪霊のせいだったのか、もしくは病院で寄生虫なり伝染病なりを対処する薬を貰ったかだね。


「お待たせ〜。

 顔色も良くなっているじゃない。

 結局病院の検査で何か引っ掛かったの?」

 近藤さんに声を掛ける。

「先日ぶり〜。

 寄生虫じゃなかったけどちょっとピロリ菌の親戚みたいのを拾っていたみたいで、薬で除菌したらお腹の調子は良くなったし、ついでに一応厄祓いしたら寝起きも良くなったのよ。

 そう言えば、こちらは西江 美夜。ペルーに一緒に行った友人の一人なの。

 美夜、こちらがあなたが会いたがっていた厄祓いの事を勧めてくれた長谷川 凛さんよ」

 近藤さんから一緒にいた女性を紹介された。


「初めまして。

 近藤さんと一緒にペルーに行ったんですか。

 良いですねぇ、羨ましいです」

 私もいつか海外旅行してみたいなぁ。

 まあ、万里の長城とか、ナスカの地上絵とか、エキゾチックな遺跡がある様な所ってちょっと治安がヤバいかもしれない国が多いから、安全に行ける様になるのは一生無理な気もするけど。

 高齢者になってヨボヨボになったら変な権力者に狙われなくなったりするかな?

 でも、碧の治癒能力は歳をとった権力者なんかにとってはいつになっても魅力的だろうからなぁ。

 ババアになっていようが利用価値はありとして、誘拐リスクは高そう。

 その前に碧と喧嘩別れしていたら私の価値が下がっていて誘拐リスクが下がるかもだが、白龍さまの天罰ディフェンスが無かったら私がヨボヨボになる前に国か退魔協会にいいように利用されて使い潰されてそうな気もする。


 まあ、それはさておき。

 近藤さんと西江さんに奢ると言われて、雑談しながら駅から少し外れた道の奥にある喫茶店に入った。

 ちょっと静かなこじんまりとした店で、外から見るとやっているのか微妙に不安を感じるぐらいだが、前を通った際にさりげなく中に目をやると大抵一人か二人は客がいて静かにコーヒーや紅茶を飲みながら本を読んでいたりタブレットを見ている店なんだよね。

 客が少ないせいで今まで入るのを躊躇っていたんだけど、静かでいい雰囲気だ。

 大学4年になってから中に入るなんて、惜しい事をした。


「長谷川さん。

 あなたが圭ちゃんに厄祓いをする様に勧めてくれたそうですね。

 ありがとうございます」

 オーダーを出し終えたところで、きりっと姿勢を正して西江さんが頭を下げてお礼を言ってきた。


「いえいえ、気軽にちょっとお勧めしただけだから、気にしないでいいのに」

 ここのケーキを奢ってくれるって話だから、それで十分だね。

「ところで」

 こほんと喉を払って西江さんが続けた。

「私は圭ちゃんが厄祓いをして夢見が良くなったと聞いて、近所の神社に行ったんです。

 古くからあって歴史がある大きな神社なんですが……。厄祓いしても殆ど変化がありませんでした」

 おやま。

 最初の神社はハズレだったか。

 まあ、今じゃあ当たりは3割程度だからねぇ。

 確率論的に最初の神社が外れでもしょうがない。


「圭ちゃんが長谷川さんに勧められた大学の隣駅にある◯川神社でバッチリ効果が出たと聞いたので、半信半疑だったけどもう一度だけと思ってそちらで厄祓いをして貰ったら一気に肩の周りが軽くなり、ペルーに行ってからずっと続いていた頭痛や変な幻聴ぽい声も消えましたし、夜もぐっすり気持ちよく眠れました」

 ぐっと手を握りながら西江さんが続ける。

 おや?

 なんか怒ってる?


「最初の神社の方に戻って、そこの厄祓いの効果が全くなかったが別の神社で祓って貰ったら明らかに体調不良が良くなったから、こちらの神社の厄祓いは効果が無いのだから返金してくれと言ったのですが、気のせいだと門前払いされてしまいました」


 ええ???

 神社に効果がなかった厄祓いのお金を返金しろってクレーム付けに行ったの?!



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― 新着の感想 ―
>碧と喧嘩別れしていたら それは、自分で自分の命綱を切り落とすようなもんですね
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