ペルーの文明
「神様なら念話か何かで意思疎通出来るんじゃない?
と言うか、悪霊でも出来そう。
旅行から帰国後に、夢とかで変な恨み言を言われたり、海外っぽい登場人物が虐殺される残虐な場面を見せつけられて登場人物の言っている事が分かったりといった事は起きてないの?」
本人に祟られている自覚が無かったらお祓いに行けと言うのも、それが効かなかった場合に退魔協会を雇えと言うのも、あまり意味がないからなぁ。
敏感な人だったら夜の夢どころか白昼夢的に昼間でも悪霊の言葉が聞こえるんだけど。
近藤さんがちょっと考え込むような顔をした。
「言われてみたら?
私ってガッツリ深く眠る体質なのか、夢って基本的に目覚めたら覚えていないのよねぇ。
なんかここ数日、起きた時に責められていたような嫌な思いを引き摺って目覚めた気が……しないでもない、かも?」
地球を半周するぐらい根性のある悪霊に祟られても、霊の声を実質ほぼ認識していないとは……凄いね。
余程神経がぶっといのか。
もしかしたらお腹の調子が悪いのって本当に寄生虫か何かのウィルスの可能性もあるかも。
う〜ん、そこまで頑強な精神だったら悪霊に打ち勝つ可能性もゼロではないかもだよね。
「そっかぁ。
まあ、祟られていようがいまいが、変な病気や寄生虫を拾っていないかを病院で一度チェックしておくのは良いことだよね。
特に何も不調の原因らしきものが見つからなかったら、隣駅の◯川神社で厄祓いでもしてみると良いかも。
ちなみに近藤さんって霊とか祟りとかって信じるタイプ?」
厄祓い程度だったら日本人ならちょっとした験担ぎっぽい感じにやるのも吝かではない人が多いと思うけど、流石に退魔協会に何十万円も払うのはねぇ。
霊の存在を信じているか、マジで体調不良がどうしようもなくて詐欺っぽいものでも縋るぐらいの状況じゃないと勧めにくい。
「私はあまり霊って信じてないけど、一緒に旅行に行ったうちの一人はかなり信じている感じだったのよ。いや、信じたくて興味津々って感じかな?
それで怖いもの見たさでなんだかヤバくて有名な場所もあちこち回ったんだけど…考えてみたら、帰国してからあの子から連絡が無いわね。
ちょっと厄祓いに誘ってみるわ」
近藤さんが立ち上がりながら言った。
「厄祓いも病院の検査も空振りだったら、かなり高いけど確実に効くお祓いが出来る業者を知っているから、連絡して」
近藤さん本人はもしかしたら単に寄生虫を拾っただけで祟りの影響を殆ど感じていないのかもだけど、一緒に行った子が霊的な存在を信じるタイプだったら今頃悪霊に祟られてダウンしているかもだからね。
そうなったら際には厄祓いが効かなかったら連絡を貰って退魔協会を勧める方が良いだろう。
「うん。
そうだ、連絡先を教えて?」
近藤さんとチャットアプリのIDを交換する。
「ちなみに、ペルーはどうだった?」
ナスカの地上絵とか、マチュピチュとか、色々と不思議な遺跡がある国だからね、あそこは。
いつか行ってみたいところだが……老後だったら大丈夫かな?
「良かったわよ〜。
なんかこう、現実感がない感じというか。
ナスカの地上絵とマチュピチュやクスコは全然違う文明らしいけど。
幾つも不思議な文明があそこで繁栄したなんて、興味深い場所よねぇ」
近藤さんが言った。
「あれ、ナスカの地上絵ってインカ帝国の天文学の知識で描かれた宇宙とのやり取り用の絵じゃないんだ?」
どっちもペルーにあるから繋がっているんだと思っていた。
「いやいやいや。
ナスカの地上絵は2千から3千年前の遺跡らしいわよ?
マチュピチュとかのインカ帝国は15世紀ぐらいだから500〜600年前程度なの。
場所も、マチュピチュはジャングルっぽい森の中だけど、ナスカの地上絵は砂漠っぽい荒野の中だし。全然違うわよ」
近藤さんが手を横に振りながら教えてくれた。
「そっかぁ。
確かにジャングルの中じゃあ地上絵なんてあっという間に木に呑まれて消えちゃうわよね。
500年って言ったら、もしもインカ帝国の人が国を離れて旅に出ていたら、それこそ織田信長に会った可能性だってあったのかぁ」
織田信長って珍しいもの好きだったらしいから、遠い黄金郷と呼ばれるインカ帝国の人だと言われたら会いたがっても不思議はなさそう。
まあ、船に乗って南米から日本に来る前になんかの病気で死んじゃってそうだけど。
船乗りなんて色々と病原菌を持っていただろうし、南米の人たちはヨーロッパの伝染病に対する免疫を持っていなかったのが滅亡の要因だったらしいし。
歴史って色々と夢があるよねぇ。
どうせだったら私も転生する時に同じ世界の中で転生すれば歴史の勉強とかが楽しかっただろうに。
まあ、魔術師だった世界でもう一度転生しても相変わらず黒魔術師は隷属させられてて、もう一度奴隷もどきな生涯を送る羽目になったかもだけど。
ないものねだりはやっても意味がないね。
取り敢えずは、近藤さんが元気になるか否かだね。