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お祓いは神様による説得??

「あら、長谷川さん、お久しぶり。

 最近はどうしてるの?」

 夏休みが終わってしまい、大学最後の半期の授業を受けに大学に来たら久しぶりにクラスメイトに会った。

 1、2年は人数の少ない語学の授業なんかでそれなりにクラスメイトにも会っていたけど、3年になると語学の必須科目は無くなり、専門科目の必須は人数が多いせいで同じ教室にいても前もってどこらへんに座るか約束でもしていないと顔を合わせることすら無い事も多々ある。

 だから1、2年はあまり自分のクラスもクラスメイトも意識してなかったんだよね〜。

 このままだったら卒業したらほぼ音信不通になりそうだから、このタイミングで会えて良かったのかも。


「お久しぶり!

 私はまあ気楽にやってる感じね〜。

 近藤さんはどうしてるの?」

 なんかこう、服装は内定を貰った後っぽい気楽なお洒落着なんだけど、本人に穢れと悪霊がべっとりついていてめっちゃ雰囲気が微妙なんだけど。


 はぁぁ。

 私の挨拶的な質問に、近藤さんが深くため息を吐いて近くのベンチに座り込んだ。

「ぜひ行きたい会社からは比較的早い段階で内定を貰えたのよ〜。

 社会人になったら長期休暇を取ってのんびり旅行とかにも行けないだろうからって事で、内定を取れた子や大学院に行く予定で就職活動してない子と三人でペルーに行ってきたんだけど……。

 どうもあっちの水が合わなかったのか、ここのところずっと体調が悪くって。

 寄生虫でも拾ってないか、病院で調べて貰おうかと思っているところなの」


 うわ〜。

 ペルーかぁ。確かに南米なんて行って帰ってくるのにもかなり時間と費用が掛かるだろうから、十日か2週間ぐらい休みを取れないと行けないよねぇ。

 そう考えると、確かに社会人になってから南米へ旅行するなんて、それこそ新婚旅行でもなければ難しそう。

 ワンチャン、アメリカに転勤になったらぐっと近くなって行きやすいだろうけど。

 でも、今時だったらアメリカではなくメキシコか、それこそ南米の治安がヤバそうな国への転勤になりそうだね。旅行になら時間とお金をかけて南米へ行くのも楽しそうだけど、長期的に住むのは嫌かな。最近ではアメリカですら住みたく無い感じだ。


「ペルーって行く前に予防接種とかはしないの?」

 まあ、清潔で軟質な水に慣れた日本人は基本的に海外に行ったら全ての飲み物を開封してないボトルから飲む様にしないとヤバいとは聞くけど。これって予防接種の話じゃないよね?

 しかもペットボトルの水しか飲まないように気をつけていたのに、バーで飲んだお酒に入っていた氷が生水から作られていたとか、サラダのレタスを洗った水が清潔じゃなかったとかで寄生虫や食中毒になるケースもあるとどっかで聞いたこともある。あれって単なるホラーストーリーなのか本当の話なのか、どっちなんだろ?

 流石に旅行中一度もサラダを食べないのは厳しい。水道水で洗ったサラダがダメってなると色々と絶望的な気がする。歯磨きはミネラルウォーターでうがいするのも可能だけど、顔を洗ったりシャワーを浴びる時にだって水滴が口に入るだろうし。

 もしかして、その問題のサラダは井戸水で洗ったとかだったのかな?

 日本も昔は井戸水を飲む人が多かったからそれでピロリ菌の感染者が多かったって話だし、井戸水は意外と危険なのかも?


 それはさておき。

「黄熱病と破傷風となんか複数の肝炎とか狂犬病のワクチンは打ちまくったのよ?

 でもそれって要はメジャーな病気なだけなのよねぇ。

 マイナーな風土病とか寄生虫はダメな可能性はあるから、生水は絶対に飲むなって旅行会社の人に言われて、それなりに気をつけていたつもりなんだけど」

 お腹の辺を摩りながら近藤さんが言った。

 うわぁ。

 ワクチン注射を何本打ったんだろ?

 大変だね。

 でも、ペルーの遺跡を自分の目で見れるなんて私や碧には一生機会がないと思うから、羨ましい。


 とは言え。

「えっとさ。

 病院に行くのも良いと思うけど、先にちょっと神社とかでお祓いしてきたら?

 あっちの遺跡って基本的にスペイン人とかに滅ぼされた街とかが多いんでしょ?

 変な霊を引っ掛けたのかも?

 どっかヤバい聖域みたいなところに忍び込んだりしてない?」

 べったり取り憑いている穢れと霊は飛行機に乗って地球を半周近くするぐらい頑張って近藤さんを追いかけて祟っているのだ。

 ちょっと埋葬地に通り掛かった程度じゃあないと思う。


 流石に女子大生がペルーに行って誰かを殺してその霊に取り憑かれるって事は無いと思うから、日本のヤバい古戦場や慰霊碑とかで悪霊の神経を逆撫でする様なことを何かやったんじゃ無いかな?


「え。

 お祓い?

 でも、ペルーだよ??」

 近藤さんが意外そうな顔をして聞き返してきた。


 ペルーだって人間が住んでいた土地で、大量虐殺(まあ死んだ人のかなりの分はヨーロッパから持ち込まれた伝染病が原因らしいが)されて一国の文明がほぼ消し去られて上書きされちゃった国なんだよ?

 祟りがあっても不思議はないと思うけど。


「死んだ人間が誰かを恨んで八つ当たり的に祟るのに国籍は関係ないと思うよ?」

 文明によっては全ての死を受け入れてどんな死に方をしても逆恨みをしない社会もあるかもだけど。


「いやだってさぁ。

 日本の神様に祈っても、ペルーの霊と言葉が通じなかったら説得できないと思わない?」

 近藤さんが意外なことを言い出した。


 えぇ??

 神社でお祓いする時って神様が霊を説得していると思っているの?!


 ……ある意味夢のある考え方だね〜。


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― 新着の感想 ―
キリスト教ぐらい世界中で暴虐の限りを尽くした宗教は他にないですよね
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