社員寮?
「要相談だね〜。
ちなみにここに仕事部屋として貸し出せる様なスペースはあるの?
月に一週間ぐらい来て働くつもりだけど、それなりに素材とか在庫とかを置く必要があるからずっと借り続けるつもりだし、ちょっと手伝いにパートのおばちゃんみたいな人に出入りしてもらう必要もあるんだけど」
碧が美帆さんに言った。
ここって赤木さんの会社の敷地内だから、美帆さんの身内扱いな私らはまだしも、私らが適当に手伝いに雇うパートのおばちゃんまで自由に出入りするのは会社側としては微妙かもだしね。そこは前もって条件として言っておかないと、後から人を雇えないとなると困る。
そう考えると、霊泉はめっちゃ魅力的だけどここの敷地に部屋を借りる事自体はちょっと微妙かも?
「あ、ちなみにこっちはパワーナップ用のアイピローで、眼精疲労とか偏頭痛に効果ありよ」
碧がにこやかに付け加える。
赤木さんのにはこっちの方が嬉しいかもだよね。
子育てって大変だとは思うけど、多分眼精疲労はそれ程問題じゃない気がする。
「あら。
そっちは恭弥さんが喜びそうね。
う〜ん、その部屋が必要になるのって来年の春以降?」
ちょっと考えてから美帆さんが聞いてきた。
「まあ、そうね。
そろそろ販売をちょっとずつ始めても良いかもとは思っているけど」
碧が応じる。
「この敷地を買って色々と建物を改築した時に、工事車両とかを停める土地が必要だったから斜め後ろのそこそこ長い事誰も住んでなくて幽霊屋敷モドキになっていた空き家があった土地も買って、更地にして使っていたのよ。
そこにアパートか社員寮っぽい物を建てるって計画になっているんだけど、空きがあるかといつ完成するか、確認してみるわ。
こっちの敷地内ではずっと貸しっぱなしに出来る部屋はちょっと難しいと思うのよね〜」
美帆さんが言った。
おお〜。
工事車両置き場用にアパートを建てられる土地を買うとは凄い。
まあでも、なんらかの理由で建て替えがしにくい様な古い空き家は親世代が亡くなったり施設に入った後に処分しようとしても誰も買いたがらなくて困ることもあるって言うからねぇ。
道へのアクセスとかが悪かったりしたら捨て値で売りに出てたのかも?
地方の古い空き家なんて解体料が土地の値段とほとんど変わらない場合もあるらしいし。
「まあ、こっちで借りる部屋に関しては暫くだったら実家で作業しても良いから、何がなんでも春までに入れないと駄目って訳じゃないかな? 部屋のサイズとか対価をどうするかとか、恭弥さんと相談して教えて。
なんだったら彼にそのアイピローを試す様に言ってみたら? 机でうつ伏せになる感じでも試せるわよ。
取り敢えず、待っている間に温泉に入らせて貰って良い?」
碧がにっこり笑いながら応じた。
「どうぞ、好きに入って〜」
美帆さんがモゾモゾ動き出した樹君を抱き上げ、アイピローを手に取りながら言った。
さっそく恭弥さんにアイピローを試させに行くのかな? 一応私らに貸す部屋に関しては前もって連絡していたんだからある程度条件は決まっている筈だからね。
あのクッションとアイピローが条件を少し私らに有利な方向に変えたのかも。
ちなみに碧のクッションも肩凝りに効くから、そっちを試しても喜ばれると思うよ〜。
まあ、職場じゃあ寝転がるのが難しいからクッションは帰宅後かな?
「アパートか社員寮を一つ貸してもらえたらありがたいね」
霊泉に入る前に体を洗いながら碧に言う。
アパートってここら辺でも需要があるのかな?
マンションほど大きくないけどそれなりなサイズの集合住宅で、社員寮的に使うけど空いた部屋は他人にも貸すって感じなのかも。
「うん、やっぱ冬はここら辺は寒いからねぇ。
コンテナハウスではちょっと厳しいと思う。今の日本だったら断熱効果がないコンテナハウスじゃ夏のエアコンの効き目も悪くて電気代が大変な事になりそうだし。
だから社員寮に使うつもりなアパートだったら理想的かも」
碧がニコニコしながら言った。
「ペット可じゃないと困るけどね」
なんだったら家賃を払って二部屋借りて一つは私の寝る部屋にしても良いかも。
いつまでもずっとハウスシェアする必要は無いから、私専用の部屋を一つ確保するのもありだよね。
諏訪じゃちょっと不便ではあるけど。