表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1333/1361

着々とチェック中

「じゃあ、私は5階から順に転嫁付き呪詛を解呪しながら降りてくるから碧は1階から回って転嫁付きの被害者の部屋番号をメモして来てくれる?」

 もう一人職員が来たので、碧に割り振りを提案する。

 501号室が転嫁付きだったからね。

 あの部屋からやっていこう。


 どうも下の階の方が要介護度が高くて寝たきりに近い入居者が多いようだから、多分呪詛を掛けられなかった人も多いと思うんだよね。

 あの石川(呪師)の記憶によると、自分から行動を起こせないぐらい弱っている入居者は転嫁先に活用することはあっても、態々呪詛を掛けるほど世話をしていなかったようなのだ。

 なんだかんだ言われても、基本的に『はいはい、大変ですね〜』と全部スルーして無視していたらしい。

 認知症が酷いと、職員に失礼な態度を取られても覚えていられないし、覚えていて文句を言っても妄想だと思われがちだからね。


 実際に物を仕舞った場所を思い出せなくて『盗まれた!』と騒ぐ高齢者は多いらしくて、それも何度か責められた石川が入居者を転嫁先に活用して実質殺してしまっても良いじゃないかと考えるに至る原因の一つだったようだ。

 とは言え、被害妄想が多いのを良い事に金や装飾品を盗んでいる職員もいるらしい。

 少なくとも石川は盗んでいたし。責められた時は盗んでいなかったからって他の時に盗んでいるんだったら怒る権利はないじゃんと思う。

 しかも、金目の物よりも、命と健康を盗んでいたんだからもっとタチが悪い。高級そうな素敵な建物の高齢者施設でも、意外と中の職員の質は微妙なようだ。

 採用担当が人を見る目が無いのか、それとも人手不足な介護業界では選り好みが出来ないのか。中々悩ましい現状だね。


 それはさておき。

「オッケー。

 一応すれ違わない様に、一つのフロアが終わったら見つかった転嫁付きの部屋番号をメールで送るね」

 碧が頷きながら言った。

 確かに、部屋の中に入っていたらすれ違いが起きる可能性もあるよね。


「そんじゃあね」

 さて、どのくらい時間が掛かるかなぁ。


「501号室にまた行くんですか?」

 高井さんがちょっと不思議そうに尋ねてきた。


「呪詛って、普通に返すと呪った人じゃ無くて別の被害者に転嫁させるタイプの呪いもあるんです。だから建物全部を一気に清めて解呪しちゃうと、へたをすると転嫁先にされた被害者が酷い目に遭うんですよ。

 501号室の入居者に掛けられた呪詛はそれですね。

 だから全体を清める前に、そう言う転嫁付きの呪詛を個々に解呪していく必要があります。

 さっきは解呪することであの呪師に我々が来ているのがバレて警戒されては困ると思って何もしなかったんですよ」

 高井さんに説明しながら階段を登る。

 高齢者施設だからなのか、単に古いからなのか知らないけど、ここのエレベーターは妙に遅いから、歩いて階段で行く方が早いでしょ。

 しかもなんか暗証番号を入力しないとエレベーターも呼べないっぽいから面倒だし。


「こんにちは〜」

 こんこん、と大人しめに501号室の扉をノックしたと思ったら、高井さんが顔認証で扉を開錠して静かに声をかけて入っていった。

 おや?

 さっきと声の大きさが違うね?と思いながらついていったら、部屋の中で正木さん(だっけ?)がちょっとイビキをかきながら寝ていた。

 そっか、今って昼寝の時間なのかな?

 さっき来てからそれ程時間が経っている感覚はなかったんだけど。


 まあ、熱中症で寝込んでいるところだし、睡眠時間が長いんだろうね。

 そっとベッド元に近づき、正木さん(多分)の肩に触れて呪詛の線を選り分け、転嫁を避けて返す。

 うっし。

 綺麗に返った。

 まあ、温度変化に鈍感になる呪詛なんて、みみっちい効果だから返したところで本人にも呪師にも大した影響はないと思う。

 数が多かったらどうなるかは知らないけど。


「終わりました。

 次の部屋に行きましょう」

 高井さんに声を掛けて、部屋を出る。


 502号室は熱中症にならなかった朗らかなご婦人で、煩く石川(呪師)を煩わせなかったのか呪詛も掛けられなかったよう。

 503号室は転嫁付きだったので解呪。

 504号室は転嫁なしの呪詛だったので碧に任せる予定だから放置。

 505号室は転嫁付き。

 506号室は呪詛なし。

 507号室は転嫁なしの呪詛。

 508号室は呪詛はないけど転嫁先にされていた。

 そんな感じで30部屋ある5階を終えて、4階に降りていく。

 メールをチェックしたら、碧は既に15分ほど前に1階を終えていたらしい。


 1階は部屋の数が少ないって聞いていたけど、呪詛を掛けられた人も三人だけだったと書いてあった。


 しかも全員転嫁なし。

 ふむ。

 これなら今日1日で仕事が全部終わるかも?


「藤山さんからの連絡ですか?」

 メールを見ていた私に高井さんが声を掛けてくる。

「ええ。

 1階は三人だけ転嫁なしの呪詛を掛けられていたようですね」

 石川は上の方の階の担当が多かったのかな?下はあまり被害を受けてないみたい?


 さて。

 頑張って4階を終わらせるぞ〜!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
呪詛の転嫁先なんて本業で使えば良いのに リスクを犯してまで鬱憤ばらしにつかってしまうとか ちょっと浅はかすぎますね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ