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聞き込み

「うわ!!

 ちょっと暫くドアを開けてクーラーつけよう」

 遺骨に対処するための人員が来るまで待っていたらキリがないし暑いので、依頼主から依頼終了のサインを貰った私達はレンタカーに戻ったのだが……到着した時は一応木陰だった場所に停めていたのだが、私が除霊したり前田さん(依頼主)が長兄や警察に電話している間に太陽が動いたせいで、レンタカーの中はオーブンの如き暑さになっていた。


 うわぁ。

 うっかり車に子供を残してパチンコに行ったとか、ショッピングセンターで買い物をしている間に子供が死んじゃったって毎年のようにニュースで聞くけど、確かにこの温度になったら死んじゃいそうだね。


 昔ながらの車を使った自殺だと中で練炭を炊くとか、車の排気ガスを太いホースかチューブで座席の方に繋いで逆流させるって聞いた事があるけど、今だったら真夏に日向で駐車した車の中で意識不明になったら1、2時間ぐらいで成人でも死んじゃいそう。


 蒸し焼き(熱中症)になって死ぬのってちょっと辛そうだから、自殺の手段としては人気は出ないと思うが。

 でも練炭だって一酸化炭素中毒で死ぬんだから、頭がガンガン痛くなるんじゃないのかな?

 睡眠薬でも飲んで、頭痛が起きる前に意識不明になっておくのだろうか?

 だったらオーブン化した車の中で熱中症で死ぬのも同じように睡眠薬でなんとか出来ないのかねという気もするが……暑さって睡眠薬をも凌駕する寝苦しさを生み出すのだろうかね?


 まあ、それはさておき。

 暫く風を通し、クーラーが涼しい風を出し始めたところで車に乗ってドアを閉める。


「なんかこう、死ぬ前にお金が尽きるのは困るけど、沢山あっても幸せになるとは限らないって実感する案件が妙に続いてるわ〜」

 後ろを確認して車をスタートさせながら碧に言う。

 短距離だし、まだそれほど道が混んでいないだろうと言う想定から、都心での運転に慣れる為に帰りは私が運転するのだ。

 距離も短いしね。

 レンタカーならちょっと擦っちゃっても保険でカバーされるし。


「通常だったら嫌なことばかり言うような人は会わないようにして無視できるから軋轢もある程度減らせるのに、遺産相続とか財産の話が出てくるとそうし辛くなるせいで問題行動をするう様な扱いにくい高齢者の対処が難しくなるんだろうね。

 まあ、幾ら嫁と喧嘩しまくるからと言ってもヤバいと薄々分かっている場所に態々離れを建ててまでして老齢な母親を住ませようとする息子もどうかと思うけど」

 碧が声に苦笑を滲ませながら応じる。


「こんなところで離れを建てて一人暮らししても、一人でいつまで生活出来るか分かったもんじゃないよね。

 訪問介護とか家事代行の人を雇うんだろうけど、ここまで来るのも大変そう」

 それともこう言う郊外地域で働く家事代行とか介護の人って自家用車かスクーターで移動するのかな?

 雨が降ったら大変そうだけど。業者から派遣されるなら、東京◯スかどこかの社員が使っている様なグルンと後ろから前まで屋根が付いているスクーターだったら雨でも少しは濡れないで済むのかも?


「ある意味、一番のとばっちりは前田さんの奥さんじゃない?

 まあ、ガッツリ気が強くて義母の面倒を見るのは断固拒否するって言った場合は前田さんがそれをする羽目になるかもだけど」

 今時の女性だったら嫁虐めをするような義母を押し付けられたら、次男に嫁いだのに義母の面倒を見る羽目になるのは話が違う!!って言いそうだけどね。

 特に、長兄の方が遺産相続で優遇されていたなら。

 兄に押し切られて母親を受け入れちゃった前田さんに責任取れと、母親が問題なく過ごしているか毎日顔を出して確認するのも夫に押し付けるかも。


 考えてみたら直接血が繋がっているのは前田さんなのだ。

 妻が義母の面倒をみなきゃいけない謂れはないか。


 そんな事を話しながら無難そうな大通り沿いに隣駅の方へ向かい、レンタカーを返した。

 無事、どこも擦らずに!

 車が快く涼しくなったぐらいでレンタカー店に着いて降りる羽目になったのはちょっと切なかったけど。


 ◆◆◆◆


 数日後、神奈川県警から人がやってきた。

「では、あそこで見つかった遺体は全て、当時竹材店で働いていた今井修介によって殺されたと被害者の霊が証言したのですね?」

 どうやらあの元防空壕を掘り起こしたら、私が地面に描いた図の場所とほぼドンピシャな位置で遺骨が見つかったらしく、それなりに退魔師の言う事を信じても良いかと言う流れになったみたい?


「ええ、四人とも名前と心残りがあるかを聞いた際に誰に殺されたのかも確認しましたが、『イマイに殺された』と言っていました。下の名前は知らなかったか覚えていなかったようですね。

 最後に脅かしたらバスに轢かれて死んだが、どうせならもっと苦しめて祟り殺せればよかったのにと不満をこぼしている霊もいましたが」

 霊の証言って法的根拠としては使えないんだけどね〜。

 ただまあ、そんな昔の事件を今から調べても証拠も何もあったもんじゃないだろう。殺した犯人は誰かと言うのを一番疑われやすい前田家の人間と関わりのない退魔師が証言することで、簡単な書類送検で終わらせちゃおうってことみたいだ。


 自分から業者を呼んで掘り起こした前田兄弟は流石に自分が殺した遺体がある場所だったら掘り起こそうとはしないだろうし、年齢的にも無理がある。

 前田母は女性だから若い複数の女性に暴行を加えて殴り殺すのは難しそう。

 ワンチャン前田父がやった可能性もあったが、すでに亡くなっているしね〜。

 死者を犯人扱いするならば、第三者である退魔師が示した他所から来た人間だとする方が角が立たないし、ちょうど良いのだろう。


「ちなみに、あそこってやはりこのまま工事を続けて離れを建てるのか、聞いていますか?」

 ある意味、事故物件だよね、あれも。

 建てる前の土地で事件が起きたのだから、正確には事故物件というよりも事故土地?

 どちらにせよ、あまり住みたい場所じゃなさそうだけど。

 怨霊のせいで退魔師が呼ばれて、残りの遺体の場所が分かったのだ。

 またいつの日か、死霊が戻ってくるなじゃないかと一般人だったら気に掛けそう。


 嫁二人から出禁を食らうぐらい元気な前田母なら平気かもだけど。


「結局、色々と話し合った結果、隣駅の方で新しく建った一部屋ずつが大きめな高齢者用サービス付き住宅に入ることになったようですね」

 警察のおっさんが教えてくれた。


 へぇぇ。

 まあ、その方が親戚付き合いの軋轢も減って良いんじゃない?

 隣駅なら家族が集まる時には簡単にタクシーで来れるし。


 取り敢えず、無事終わって良かった。

 ……あの更地にした土地はどうするんだろ?

 放っておいたらそのうち竹に侵食さちゃいそうだけど。


 



 これでこの話は終わりです。

 明日は休みますが、明後日からまた宜しくお願いします。


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― 新着の感想 ―
そのお母さんはどこに行っても問題を起こしそうてすけどね
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