表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1320/1363

証拠が露出してた

 取り敢えず、兄と母親に相談すると言う前田さん(依頼主)を碧に任せ、私は残る四人の地縛霊が佇む方へと足を進めた。

 一応更地にした後に作業しやすい様に固めたのか、地面はふかふかでは無いが、土なので必要がないなら入り込まない方が無難だろうからね。

 ちょっとオシャレっぽく見えるブーツ(実は長靴の親戚)を履いているのでうっかり足が沈んでも大丈夫だが、暑い。

 と言うか、真夏の最中に履くには季節外れだよねぇ。

 雨が降っているならまだしも。

 先週はそれなりに雨な日もあったから、あの時だったらこのブーツも場違いじゃあ無かったが。でも雨の中に掘り返したばかりの更地を歩くのは、ちょっと嫌かな。


 そんなことを考えながら更地の端に辿り着く。

 後ろの竹林が少し小高くなっているから、良い感じに影にはなっている。

『私の名前は長谷川 凛。

 貴女達を昇天させる手伝いに呼ばれたの。

 名前と、何か心残りがあるならそれを教えてくれる?』

 地縛霊達に魔力を込めた念話で話し掛ける。

 穢れを清めたせいか、先ほどよりは少し表情が穏やかかな?

 さっきまではここに来る人間は皆祟り殺してやろうとでも言いたげな怨念混じりな顔をしていたからねぇ。


 もしかして、ここに離れを建てようと前田(兄)が提案したのって、ここに暮らせば母親も早く死ぬだろうと思ったからなんて事は……無いよね??

 前田家がここら辺の地主一族だとしたら、たとえ長男で優先的に遺産を相続していたとしても、前当主の妻であった母親だってそれなりな額を相続している筈。

 そう考えると、嫁と喧嘩して問題行動が多い母親なんて、さっさと死んでくれる方がありがたいと考えて、敢えてヤバそうなところに住まわせようとした可能性もゼロでは無い気もしないでもない。

 土地を買わないで済むし、手抜き建築な家だったらど田舎ならまだしも横浜市の地主の妻だった女性の相続財産よりはずっと安上がりだろう。


 まあ、ここに死骸がいくつも埋められているなんて事は流石に知らなかっただろうから、単に私が深読みし過ぎなだけなんだろうけど。


『黒河 昌子よ。私を殺したあの男を苦しめてやって』

 手前にいた、パーマをかけたボブカットの女性の霊が最初に私の問いかけに答えた。

「キョウコさん曰く、彼女を殺した今井?とか言う男は、貴女たちと協力して脅したら慌てて道に飛び出して、その時にバスに轢かれて死んだって聞いたけど?」

 連続殺人鬼が二人居たとは考えたくない。

 海外の犯罪ドラマなんかだと、場合によっては年上の殺人鬼が若い同種の人間を誘って一緒に殺しを楽しんで指導するなんてケースもゼロでは無いようだけど、流石に現実ではそうそう無いよね??


『イマイ……そうだった。もう死んだんだっけ。

 どうせなら霊をここに留めて苦しめてやれば良かった……』

 ぼうっとした様な感じで黒河さんの霊が呟く。

 キョウコさんと違ってフルネームを言ってくれたけど、黒河さんの方がちょっと記憶や理性が劣化しているみたい?

 それだけ苦しんだからなのか、死んだ後に報復できるまで掛かった時間が長かったせいなのか。

 取り敢えず。

 報復以外に希望がないなら、さっさと昇天してもらおう。

 黒河さんの額に触れて(まあ、実際には指が突き抜けたけど)、霊を上へ送り出す。

 こう言う『触れた』と言う行為がある方が、霊も納得がいくのか抗わずにあっさり昇天する事が多いんだよね。


 残りの三人からも話を聞いていく。

 二人は特に何も求める事はなく、あっさり昇天していった。

「貴女は?」

 最後の一人に尋ねる。

『庄司美奈子よ。

 私たちの遺体をちゃんと弔ってちょうだい。

 そっちを更地にした影響で地面が緩んできていて、一部地面から出て来ちゃってるの』

 最後の女性は足元の白い石を示しながら言った。


 え??

 しゃがみ込んでよく見てみたら……どうやらこれ、石じゃなくて骨?!


 うわぁ。

 つうか、防空壕もしっかり埋め直さないと、そのうち裏の部分が土砂崩れしたりしない?

 ちゃんと間伐していない竹林って実は根っこが死にやすいし地面を固定する力が弱いって聞いた気がする。

 最近は線状降水帯とか、竜巻とか、激しい大雨とかって中々危険だからねぇ。

 既にここも崩れかけてるのかな?

 少なくとも、ウン10年前に埋めた筈の死骸の骨が一部でも流れ出て来ているのだ。

 やばいっしょ。


「あらま。

 元々前田さんには貴女達をしっかり弔うようにと言ってあったんだけど、死骸が既に出て来ているなら説得もしやすいわね。

 安心して上にいってちょうだい」

 庄司さんの霊に話しかけ、昇天する様促す。


 チラリと電話で何やら必死に話している前田さんに目をやったあと、庄司さんはあっさり私の魔力に抗わず、昇天していった。


 さて。

 前田さんに私の言葉を裏付ける証拠を見てもらわないとだね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
うわあ、白骨でも死体なんて見てしまったら 寝られなくなりそうですね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ