表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1301/1361

実は遠かった

 取り敢えず、まだベルガー氏(サンダーバード)はテーマパークを満喫し終わっていなかったので、彼は暗くなるまで見て回る事になった。

『ここで遊び終わったらその後白龍さまの聖域の方へ行くから。

 なんだったら家庭料理を夕食に食べさせてくれても良いよ?』

 ちょっと強請る様な感じにベルガー氏が碧へ言う。


 白龍さまは我々の食事に特に興味を見せないが、人型を取るベルガー氏(サンダーバード)は同じ氏神っぽい存在でも意外と食い意地が張っているらしい。

 まあ、食事は毎回誰かに奢らせると言っていたもんね。旅客機サイズの氏神様モドキだったら人間の様な食事は本当だったら必要ない筈だし、食べても焼け石に水レベルだろう。どうやら『趣味』や『興味対象』に食事が含まれていそうだ。


 碧が遠藤氏の方を見る。

「今からじゃあ普通の手段では実家に夕食の時間までに帰れません。そちらにすぐに呼び出せるヘリコプターとか、あります?」

 そうか、大阪も長野も東京から見たら西方面だから近い様な気がしたが、実は諏訪ってそこそこ東京に近いんだった。反対に、大阪から諏訪は意外と時間が掛かるのだろう。


「前もって分かっていれば確保しておく事も可能でしたが、今すぐ呼び出すのは無理ですね」

 遠藤氏がちょっと申し訳なさそうに答える。


「じゃあ、夕食は無理なので明日の昼に来て下さい。昼食を準備しておきます。

 私たちは明日中に東京に帰らないといけないので、ちゃんと正午ぐらいにうちへ来て下さいね」

 碧がベルガー氏に伝えた。

 と言うことは、これから私らは諏訪へ直行かぁ。

 夕食は駅弁かな?


『分かったよ。

 じゃあ、後でね〜。

 あ、おかずは肉が良いな。

 人型ヒトガタだと魚って意外と骨が刺さって食べにくいんだよね』

 ベルガー氏がリクエストを出した。

 もしかして、魚を骨ごと齧って喉に刺した経験があるのかな?

 痛いと言わずに食べにくいと言っているから、体の強度的には多分見た目通りじゃないんだろうけど。

 と言うか、考えてみたら日本に来てからの食事の際にお箸を使えたんかな?

 露骨に外人っぽい見た目だったら店の人も気を利かせてフォークやスプーンを出すだろうが、東洋人っぽい見た目だと微かにエキゾチックな雰囲気は単にファッションなのかと思われていそうだ。


「肉料理ですね。

 フォークで食べられそうなのを母と相談して準備しておきます」

 お箸問題は碧も思いついたのか、頷きながら洋食系なメニューにすると宣言してきた。

 ハンバーグとかロールキャベツとかかな?

 まあ、肉じゃがだってフォークで食べられるが。

 ステーキは『家庭料理』をご希望なアメリカから来た存在には向かなそう?

 まあ、捕縛されていた場所でステーキが出た可能性は低そうな気がしないでもないから、目新しいかもだけど。

 いや、あれだけのパワーがあったのだ。ベルガー氏を拘束していた相手にステーキを出す様『説得』した可能性もありそうだ。


 と言う事で、私らは先にテーマパークから退場し、諏訪へ向かうために駅へ。

 遠藤氏はそのままテーマパークでもしもの時の対処要員として残るらしい。大変だね。

 歩きながら、碧が携帯で実家に連絡を入れていた。

「あ、お母さん?

 実は白龍さまの知り合いの方が家庭料理を食べたいと言うことでウチでの食事をご希望されたの。

 三人前ぐらい、外人が喜びそうなフォークで食べられる肉系の料理を明日の昼に出せる様に必要があったら買い出しとかしておいてくれるかな?

 私たちも今からそっちに向かうけど、着くのは寝る直前ぐらいになると思う」


 電話の向こうから『はぁぁ?!』みたいな声が聞こえたが、すぐに声のトーンが普通な感じに下がったらしく、残りのセリフは聞こえてこない。

 流石碧ママ。

 今までにも白龍さまの知り合いに会ったことがあったのかも?


「そう言えば、白龍さまもベルガー氏みたいに人型を取ることがあるんですか?」

 電話をしている碧の横に浮いていた白龍さまにふと尋ねる。

 サイズ調整以外に、全然違う形になるのって龍も出来るのかな?

 あまり幻獣系の能力っぽくないけど、神様レベルな幻獣の関しては詳しくないからね。


『出来なくはないが、無駄に魔力を使うし、動きにくいし、感覚が鈍くなるしで儂はやらんな』

 白龍さまがあっさり応じた。


 出来るんだ?!?!

「ちなみに、そう言う氏神さまレベルな存在が人型を取った時って、人間との間に子を成せるんですか?

 ギリシャ神話とかってよく神様が人間との間に子を作りまくっていますが」

 ギリシャ神話は牛の姿をしている神様が何故か人間を孕ませたり、人間が花にされたり、かなり色々と無茶苦茶だから、実在の神族の話ではないと思いたいところだけどね。


『不可能ではない事が多いだろうが、それなりに大変な上にやったら母体側のダメージが大きいからの。

 悪趣味な奴以外はやらんよ』

 白龍さまが苦い顔をして応じた。


 へぇぇ。

 神様が人間を孕ませるのは通常の妊娠以上に母体に負荷が掛かって悪趣味な行為なんだ。

 普通に神とのハーフが生まれるような世界じゃないみたいだね。


 白龍さまって爺っぽい話し方をするけど、人型になったら実は若いハンサムな男で碧とくっつくなんてことが起き得るの?!とベルガー氏の姿を見て思ったのだが、どうやら無しらしい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なるほど、人間の食事が摂りたくてトーテム役をやってた訳ですか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ