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転生しても、現代社会じゃ魔法は要らない子?!  作者: 極楽とんぼ
大学4年

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夢枕?

「あ、長谷川さん!

 ちょうど良かった、少し今時間ある?

 ケーキを奢るから!」

 夏休み前最後の講義とレポート提出に大学へ行ったら、教授の研究室がある建物から出たところで右の方から声を掛けられた。


 そちらを振り向いたら、どこか見覚えがある女性がこちらに走り寄ってきていた。

 誰だっけ?

 お洒落な格好でスッキリ髪型もショートにしてあり、キャリアウーマン的に大学ではなくオフィス街で見かけても不思議じゃ無い感じ。

 と言うか、今になっても必死になって内定捜ししている人達って何故か妙に皆似たり寄ったりな地味な黒っぽいスーツを着て長いストレートな黒髪を無難な感じに一つに纏めているスタイルが多い気がする。

 まあ、単なる私の偏見かも知れないけど。余裕なさげな感じに大学の校内を動いているそんな見た目の人はまだ満足できる内定を貰えていない大学4年生だと思っているのだが、実際に本人にそれを聞いて確認している訳じゃあないからね。

 お洒落な見た目でも内定がまだな人もいるだろうし。


 地味系な人って没個性なスタイルが就職に有利だと考えているんだろうけど、本当にそうなのかね?

 お洒落な方な出来る有能な人に見えそうな気がするけど。日本って出る釘は打たれる傾向もあるから、反感を食らいやすいと判断しているのかもね。


 まあ、それはさておき。

 垢抜けて綺麗になったせいで一瞬誰だか分からなかったが、地味な姿を想像して分かった。

 昔、サークルで一緒だった文学部の……確か白木さんだ。

 ラノベ生活クラブには最近とんと顔を出してないし、学部も違うしで全然会ってなかったから分からなかったよ。


「お久しぶり〜。

 最近どう?」

 取り敢えず立ち止まって挨拶しておく。

 ケーキを奢ってくれるならちょっとぐらい話に付き合うのも吝かではないよ?


 にっこり笑った私の想いをちゃんと読んだのか、白木さんは大学の外の方を手で示した。

「駅の向こうに美味しいスイーツの出る店が出来たんだけど、そこでどう?」

「良いね! 今日の講義も全部終わった事だし、甘い物でも食べたいかなぁって思っていたところなんだ〜」


 駅の向こうへ向かいながらお互いの最近の話を適当にする。

 白木さんはやはり既に就職が決まっているそうだ。

 私でも名前を知っているメーカーで、未だに日本だけでなく世界でも中国やアメリカや韓国勢に負けずにガチで戦っている数少ない一流会社だ。

「おお〜。

 あそこだったらうっかりしたら10年後とか20年後に無くなってるとか中国系の会社の傘下になってるなんて事が無さそうで良さげじゃん!」

 まあ、上の人間がダメだったら10年先のことは分からないが。


「ふふふ。現実的な育休制度がしっかりあって、年休も育休も男女共にしっかり消化するポリシーらしいから選んだの。

 だから中身が腐ってサービス残業を要求したり有給を取るのを嫌がるようになってきたら、転職する予定」

 白木さんが笑いながら答えた。


 それじゃあ会社の製品とか理念では無く、休みの取りやすさで選んだように聞こえるよ?

 まあ、ワークライフバランスをしっかり管理してメリハリのある働き方が重要だって言う会社のスタンスに共感したとも言えるだろうが。

 面接で『何故当社に入りたいと思いました?』って聞かれた時にどう答えたんだろ?

『しっかり休めるから』と答えたとしたら……面接官がそれをプラスに受け止めたかマイナスに受け止めたのか、興味深いところだなぁ。

 もしかしたら、休みをしっかり取って人生を楽しむのを重視するって言う考えを喜んでくれたから内定が貰えたのかもだよね。

 まあ、そんな馬鹿正直にあからさまな答えを返さなかった可能性の方が高いけど。


「そう言えばさ、こないだ祖父が亡くなったのよ〜。

 もう10年ぐらい前から認知症になっていたから、もうそろそろヤバいかなぁとな皆も思っていたから覚悟はしていたんだけど」

 駅の向こうへ歩いている途中で白木さんが言いだした。

「あら。

 ご愁傷様って言うと最近だとなんか変な皮肉っぽいニュアンスがある気がするけど、お悔やみ申し上げます」

 ちょっとびっくりだ。

 もしかして私が退魔師なの知っている?? 認知症で亡くなったお祖父さんが悪霊になって出てくるとは考えにくいけど。

 それに大学の人には限られた相手にしか退魔協会との関係は知らせていない。


「祖父はテニスやゴルフが好きな人で、小学校の低学年ぐらいまでは遊びに行くと近所のテニスコートに連れて行ってテニスを教えてくれたり、ドライブで遊園地に連れて行ったりしてくれた若々しいおじいちゃんって感じだったの。だけどやっぱ認知症になると出歩くのも難しくなるし、本人もしっかり話し合うと言うよりは無難な相槌を打つだけの表面的な会話しか出来なくなったからここ数年は疎遠な感じだったんだけどね」

 白木さんが続けた。

 疎遠だったと言うよりは、付き合いが難しかったって感じなんだろうなぁ。


「認知症って本当に悲しい病だよね」

 体はまだまだ問題なく動くのに、精神が劣化していくなんて怖すぎる。

 本人にとっても凄く嫌だろう。


「そ〜。

 スポーツを色々とやっていた人だったせいか、かなり体が弱まるのに時間が掛かったから去年ぐらいまではデイケアを活用しながら祖母が家で介護していたんだけど、流石にここ1年ぐらいで一気に体力が落ちて聞き分けも悪くなったから、諦めて高齢者用の施設に入れたんだって。

 もっと早くから無理をせずに施設に入って貰えばって伯父やウチの母親は祖母に言っていたんだけど、本当にギリギリまで頑張っていて、祖母が先に倒れるかと皆がヒヤヒヤしていたのよ〜」

 白木さんが信号で立ち止まりながら言った。


 あ〜。

 家族の介護は人に任せるべきじゃ無いって考える人って多いよねぇ。

 それで最後に介護疲れというか絶望からか、何年間も献身的にケアしてきた人を殺しちゃう事もあるんだから、頑張りすぎずに見切りをつけるのは重要だ。

 まあ、病状次第では施設が受け入れてくれないとか、お金が足りないとかって問題もあるんだろうけど。

 でも、成人して働いている子供が二人いるなら最低限のケアができる施設ぐらいには入れるんじゃないかね?


 ストレスで視野狭窄になると、色々と考えが凝り固まっちゃって危険そうだ。

「そんな事にならなくて、良かったね」

 少なくともお祖母さんの方が先に倒れていたらこういう言い方にはならないよね?


「うん、本当にね。

 最初に入った施設はちょっとハズレだったみたいだけど、会いに行っていた祖母が激怒して、ちょっと不便な場所だし高いけどもっと良心的な施設に移したら大分と対処が人間的になって良かったって祖母も言っていたの」

お洒落なデザインで美味しそうなスイーツがガラス越しに見えている店の扉を白木さんが開けた。


 対処が人間的だったって……ちょっと微妙な言い回しだけど、まあ入居者を殴ったり殺すような職員がいる施設だってあるのだ。

 人間的な対処をしてくれるって言うのは重要だよね。

「施設とかって見学に行った時は良い事しか言わないから、ハズレかどうかなんて見極めは難しいよねぇ」

 私みたいに人の記憶を読めるならまだしも。それだって、相手に悪意がなく淡々と機械的に非人間的な扱いをしている場合だと気付けるかは分からない。

 良心の咎めを感じているならそれを察知できるが、何も感じていない場合は実際に目撃しないと難しいかもなんだよね。


「だけど祖母的には何か心残りがあるのか、最近眠れないんだって。

 夢に何か言いたげな祖父が出てくるって言うの」


 おやぁ?


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― 新着の感想 ―
ご不幸に対してかけるご愁傷様に 皮肉っぽいニュアンスはないと思うんですが
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