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どうしよう?

 魔力視で碧が見ている方を確認する。

 生きていれば、捨て猫でも迷子の犬や野生の狸でも微量の魔素は持っているから魔力視で視える。

 死んでいたら浮遊霊がいるし。

 なので私にとっては怪しい動きには魔力視が一番なのだ。


 もっとも碧だったら普通の動物の浮遊霊はよほど集中しなければ視えないらしいから、源之助と一緒にいるのに気づいたって事は霊じゃない可能性が高いだろう。

 で、集中して視た結果。

「生きているけど、今にも死にそうな魔物……か、幻獣?」

 前世に教わった定義では魔物と幻獣の差は微妙なんだよね。

 前世での実生活の経験とかも合わせて、人間に無条件で悪意を抱く存在が魔物、理由があれば(過去に襲われたとか、テリトリーを侵されたとか)人間()襲うのが幻獣だと私は思っている。

 直近でこの高速近辺にて誰かが野生動物に襲われたってニュースの報道は見た記憶が無いから、幻獣かも?

 単にボロボロで人間を襲う元気もないだけかもだけどね。


 取り敢えず、生きるのに魔素の存在を前提とする濃厚な魔素の構造を有する身体を持つ存在が茂みの向こうに隠れているようだ。とは言っても今にも死にそうな程に魔素がところどころ薄いから、多分死にかけだね。

 魔物なのか幻獣なのかまだ未定だけど、どこか近くで境界門が開いて紛れ込んだのかな?


「やっぱ普通の動物じゃあないよね?

 動かないから最初は野生動物が怪我を負って蹲っているなら助けてあげようかなぁとも思ったんだけど、普通の動物とは違うみたいだからどうしようかと悩んでいたんだよね」

 碧が『だよね!』と言いたげに頷きながら車から首を突き出した。


「う〜ん、クルミ、ちょっと意思疎通が出来るか、接触してみてくれる?」

 幻獣だったら使い魔でも動物霊との相性の方が人間よりはいいだろう。

 魔物だったらどっちにせよ意思疎通は難しいだろうし。


『取り敢えず、声を掛けてみればいいのね〜?』

 ストラップの躯体に入ったクルミが尋ねる。


「そう。

 襲われそうになったらストラップの躯体を捨ててこっちのピンバッチに入ってダメージを避けてね」

 源之助の首輪に付けているのとは別の、予備の隠密躯体用ピンバッチを手に持ちながら指示する。

 多分動く元気もないとは思うけど、食おうとしたり最後のラストアタックをしようとした場合はストラップのぬいぐるみを囮にして逃げればいい。

 普通の動物だったら動物霊なクルミを害せないけど、魔物や幻獣だとワンチャン何か出来ちゃうかもだからね。

 茂みの下をふわふわと浮かんでクルミが進む。


「どっかに野良境界門が開いたんだったら、見つけて退魔協会に報告しなきゃダメかなぁ。

 場所が想像もつかないとなると、探すのが大変そうだけど」

 この暑い最中で歩き回るのは嫌だし、サービスエリア内になかったらどうやって外へ出ていくのかも不明なんだよね。


「確かにね。

 考えてみたら、高速とか線路の上に境界門が出来て車や電車が突っ込んだらどうなるんだろ?」

 碧が首を傾げて言った。

「突き抜けて異世界に行っちゃうか、境界の何かに変な風にぶつかって木っ端微塵になるかってところかな?」

 どちらもかなり絶望的だね」

 下手に突き抜けたりして電車とかバスが行方不明になったら大騒ぎだよね。

 それこそラノベによくある集団転移っぽい状況だが、残念ながらチートなスキルをくれる存在はいないし、異世界に着いてもあっという間に餓死だろうが。


『それなりな質量がぶつかったら、境界門が閉じて消える可能性も高いの。

 車1台程度なら単に境界門のサイズに足りなかった部分が削り残されるだけだろうが』

 白龍さまが現れて言った。


「あれ?

 でも、境界門って白龍さまの本体が通れる程大きくなるのに。

 門のサイズって魔力で変動させるんですか?」

 そう考えると車を受け入れるために境界門が大きくならないのも納得だけど。

『うむ。

 儂等の場合は本能的に魔力で自分に合ったサイズに調整するのじゃが、車ではそれこそお主や碧が乗っていても調整は難しいじゃろうな』

 白龍さまが言った。


 そっかぁ。

 つうか、碧がいたら白龍さまも一緒だろうから自動的に境界門が龍を受け入れるサイズに広がるだろうけど、私一人で車を運転している時に境界門に突っ込んだら絶望的だね。


『羽根付き蜥蜴だったにゃ〜。

 なんか飛ばしてたらうっかり門を通っちゃったんだって』

 クルミが戻って来て報告した。

 へぇぇ?

「ちょっとここまで出てくる気力がないか、聞いてみて?

 なんだったら少し魔力を分けてあげても良いから」

 クルミに魔力を多めに渡しながら頼む。

 茂みの中にかき分けて入っていくと枝を折っちゃいそうだし、そうすると施設の人に怒られるかもだしで、出来れば避けたい。


 しっかし。

 羽根付き蜥蜴ねぇ。

 ミニチュアドラゴン系か、単なる蜥蜴に羽がついているかなり下位な幻獣か。

 クルミと会話ができているなら魔物ではないと思うけど。


 ここで碧に噛み付いたりしたら白龍さまにペシっと叩かれて終わりだろうが、そうしなかった場合はどうするかなぁ。

 見捨てるのも可哀想だけど、面倒みるのも長期的には無理だからなぁ。

 白龍さまの聖域にずっと1匹で暮らすのは寂しそうだけど、あそこの境界門を通った先の幻想界で生き延びられるのかね?


 そう考えると、面倒だがその羽根付き蜥蜴が通って来た境界門がここの近くにまだあると良いんだけど。


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― 新着の感想 ―
幻獣にとって地球は過酷ですね 人間が酸素不足な場所に行くような感じ?
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