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鉱山は山の中だよねぇ

 件の鉱山跡地は、あまり車の通りがないのにかなり幅の広い2車線道路を延々と車で山の奥へ進んだ先にあった。

 途中で温泉町っぽいところから道を別れた後は特に車通りがなくなった。確か地図で見たら鉱山がほぼ最終目的地っぽい道路だったから、将来アスファルトが劣化とかしても中々修繕して貰えず、広い道幅を最大限に活用して穴を避ける感じに運転することになるんだろうなぁ。

 地方(?)では住民が日常生活に活用している橋とかですら碌にメンテして貰えない事が多いらしいから、一企業が使っているだけの道の修繕優先度は……お察しできてしまう。


 考えてみたら、鉱山って大きなトラックで岩とか土砂とかを運び出したのだろうから、道幅が広くないとダメだったんだろうね。重量の大きなトラックが走っても大丈夫な様にアスファルトも頑丈に敷かれた可能性は高いから、それなりに保つと期待したいところだね。


 日本で鉱山が閉鎖したのってやっぱ高度成長期で人件費が上がったぐらいの時期なのかな?

 そのぐらいで鉱山で働かなくても仕事に就ける人が増えたんだろうし。

 健康にも悪そうだし、ハードだしで3Kと言われる工事現場よりも更に人気が無さげだから、日本で採掘を続けるのは難しかったんだろうなぁ。今だと『3K』よりも『ブラック』って言い方の方がより使われていそうな気がするが、鉱山労働に関しては『きつい、汚い、危険』の方が現実の嫌な点が具体的な気もする。


 オーストラリアなんかは、ニュースとかで見る映像だと砂漠っぽい場所で大々的に大型機械を使ってガンガンやっているっぽいけど、日本じゃあ急な山の中が多いし水も出るしで機械でガンガン自動化出来る範囲も限られそう。


 時折ある現代ファンタジーのダンジョンものの話で、他国との行き来が出来なくなったがダンジョンから資源を得て生き残る様になったって設定の話も時々見るが、考えてみたら人が歩いて入る様なダンジョンで探索者が手作業で掘っている程度の資源採掘で、日本の人口の需要に対処できるんかね?

 それこそアイアンゴーレムとかが出て、精錬された純鉄が手に入るにしても、それを持って上がって来るのが大変だろう。

 アイテムバッグがあって重さと大きさを無視して持って帰れるにしても、一々ゴーレムを倒し、人間がそれを手で詰めて持って帰って来るとなるのだ。今のベルトコンベアーからトラックへ積み込んで運ぶのと比べて効率が圧倒的に悪そうな気がする。そう考えると、ほぼ現在と同じ様な社会が維持できると言う設定は無理だよね。

 少なくとも海外輸出用の製造なんて無理だろう。内需の拡大が問題だと長く言われてきた日本が、国内だけで循環する経済になった場合……どうなるんだろうね?

 食料自給率もめっちゃ低いのをどうするのかも中々怖い話だし。供給の拡大ではなく、需要の縮小という結果になりそう。畑や田んぼからで足りない食糧をダンジョンから得るとして、全人口分の足りない食糧を得るためにどれだけの人数がダンジョンに入る必要があるのかと考えると、たとえダンジョンの中が不思議空間で果てしなく広がるにしても、入り口がラッシュアワーの駅の改札以上に混み合いそうだし。


 まあ、それはさておき、

 道なりに進み、最後に辿り着いた行き止まりっぽいところは意外とオシャレっぽく開放的な広場になっており、そこに車が停まっていた。


「お待ちしておりました!」

 嬉しそうにひょろっとした中年の男性が声を掛けてくる。

 脱サラで第二の人生として椎茸の栽培って言うにはちょっと中途半端な歳な気がするけど、元々何か関連事業で働いていた人なのかね?

 もしくは大学とかで椎茸の栽培に関連する様な研究をしていて、思い切ってそれを現実に活かそうと思ったのか。


「お待たせしました。

 この中ですか?」

 勝手に人が入らない様にか、門が取り付けられて封鎖されている穴の入り口を碧が見やる。

 なんかこうピッタリ閉めない方が風通しが良くてカビないんじゃない?と言う気がするが、考えてみたら長い坑道の中じゃあどうせ大した空気の移動はないか。

 換気用のファンをどこかで動かしているだろうとは思うけど。

 椎茸って普通の空気状態が良いのかな?

 窒素や二酸化炭素が濃い方が成長が良いとかあったら面白い気もする。

 まあ、下手に空気の濃度をいじると働く人間が酸素ボンベを背負って行動しなければならなくなる可能性があるから、普通に換気してると思うけど。


 と言うか、地下だとヤバい毒ガスや可燃性のガスが溜まることもあるんだから、しっかり換気しておいてくれないと私らも危険だよね。

 いくら碧がほぼどんな毒でも解毒できるとは言っても、人間の生存に支障をきたすほど酸素濃度が低過ぎたらダメだろう。


「はい。

 栽培場所として使うのはここを入って直進したところなんですが、左の方に下へ降りていく坑道がありまして。私がここを買い取ってからずっと水没していたのですが、去年の冬に雪が少なかったせいか水が引いたんですよ。

 それに気付いて、一応確認の為にと人をやったら何やら変な台が発見された上、見に行った甥が寝込んでしまいまして」

 門についている扉を開いて中に我々を招きながら依頼主が答えた。


 水没していた変な儀式の場所に行ったら祟られたってやつ?

 確かに何やら穢れを含んだ空気が左の方から漂ってきている様だが、長年水没していたらある程度清められると思うんだけどなぁ。

 流れる水ではなく、淀んだ水だったのかな?


「水没していた場所ということなら、長靴の方が良いですか?」

 坑道の中を歩くので歩きやすい靴でと言われていたが、一応長靴も亜空間収納の中に入っている。

 車の中に置いてあるフリをして出すことも可能だ。


「いえ、これから歩くところはもうほぼ乾いていますので。

 そのハイキングシューズの方が良いと思います」

 私たちの靴を見ながら依頼主が言った。


 考えてみたら、意外と退魔師って山の中にも入るからハイキングシューズも経費で落として良いよね?

 去年買った際には費用計上し忘れたんだけど、別に前年度のでも今年の費用として認識できると期待したい。

 帰ったら柳沢氏に確認してみよう。




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― 新着の感想 ―
呪いの椎茸...これは売れそうもありませんね
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