フラグだった?!
『椎茸の栽培を行う為に買い取られた旧鉱山で、実は過去に変な儀式が行われていた事が発覚いたしまして。
その際に犠牲になった人の霊がまだ去っていないせいで色々と問題が起きているようなので清めを頼みたいと言う依頼が来ているのですが、快適生活ラボさんの方にお願いできますでしょうか?』
現代版ダンジョンの可能性を話しあった次の日に、退魔協会から電話が掛かってきた。
「おやま。
昨日のはフラグだった?!」
電話のミュートボタンを押して思わず突っ込み(?)を入れる。
「椎茸栽培とダンジョンじゃあ大分と違うよ〜!」
碧が少し心外そうに応じる。
いやいや、地下に篭る怨念で環境が歪められるなんて、正しくダンジョン物の世界じゃ〜ん!
まあ、現代社会に突然ダンジョンが現れて冒険者に憧れる若者やオタクが資源を求めて探索するのとは違い、異世界タイプのもっと生きている人間に敵対的なヤバい系のダンジョンに近い感じだけど。
考えてみたらレイスやゴーストが出る、アンデッド系ダンジョンそのものと言えなくもない?
ドロップは無いけど。代わりに乾燥椎茸でも貰えないかなぁ。穢れが酷くて健康被害を起こすような代物になっていても、碧が清めれば全然OKだろうし。
そんな事を考えてちょっとニヤニヤしていたら、碧がさっさとミュートを解除して遠藤氏とに通話に戻った。
「場所は何処ですか?」
先日の葵さんの案件は幸いにも泊まりがけにならないで済んだが、鉱山跡地ともなると、都心近辺じゃあなさそう?
まあ、関東地方だって東京都ですら高尾山があるし、神奈川県の箱根は山岳地域だし、埼玉だって秩父鉱山がある。首都圏へ椎茸を売り捌くんだったら関東の旧鉱山を使うのもありかな? マジで日本って山だらけだよねぇ。
『栃木県になります』
お、これだったら近くまで新幹線か何かで行って、そこからレンタカーで日帰りできそう?
交通に便が悪かったら、一晩ぐらいなら泊まってもいいだろうし。何処かの温泉宿にでも宿泊するのもありかも。
梅雨前で今年はまだそれほど暑くないから、山間部で温泉にゆったり浸かってくるのも悪くはないよね。
昨日の会話がフラグだったと碧も感じたのか、特に遠藤氏にまだ大学の学期中であるとかいった文句は言わずに今回の依頼を受けることにした。
『日帰りでも近くの温泉宿に宿泊するのでも、どちらでも経費で落とせますがどうしますか?』
詳細を伝えた後に、遠藤氏が聞いてきた。
今回の案件は比較的近代まで鉱山が稼働していたのか、最寄駅でレンタカーすればそれほど交通の便は悪くない場所だった。
と言うか、退魔師って基本的に運転免許を持って車の運転に抵抗がない人じゃないと厳しい職業だよね。
これって退魔師が車の運転はできませんっていう場合は依頼人がハイヤーを手配したり、自分で送迎してくれたりするのかね?
ある意味、退魔協会が運転免許の取得をもっと大々的にプッシュすべきじゃない?
退魔師の元に弟子入りしていたら、それこそ師匠の為に運転手としてこき使われることもあって、運転免許の取得は18歳になったら必須なのかも。
碧がこちらを見て首を傾げたので、『日帰りで』と口パクする。
温泉も好きだけど、源之助に留守番をさせていると思うと落ち着かないからねぇ。
なんだったら、近くに日帰りで入れる温泉があるか、調べてみても良いかも?
そう言えば。
「ちなみに、その鉱山跡地って近くで昼食を食べる場所はあるんでしょうか?
なかった場合は依頼主が何か手配してくれるのですか?」
コンビニ弁当を持ってこいだったらちょっと侘しいぞ。
それだったら、それこそランチにどこか温泉宿に行って一風呂してから昼食を食べるのありかも?
『……依頼主に確認して、明日までにお知らせします』
遠藤氏が一瞬沈黙してから答えた。
もしかして、お偉い退魔師だったらそう言うランチの手配も運転手役の弟子が請け負うのかな?
なんか弟子というよりも秘書かアシスタント的なイメージになってきたけど、どうなんだろ?
まあ、自分や分家の子だったらあまり酷い扱いはしないだろうけど。それこそ一般家庭出身な退魔協会の紹介で入ってきた弟子だったら、忙しいばかりであまり技を覚えて腕を磨く暇がなくなりそうだ。
マジで私は大学で碧に会えて、ラッキーだったわぁ……。