表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1242/1363

生きてると退治しにくい

『実はちょっと厄介な依頼が入ってきているのですが、数日間泊まりがけになる可能性のある仕事を受けていただけませんでしょうか?』

 退魔協会の遠藤氏から電話が掛かってきた。


「いや、我々はまだ学生ですよ?

 夏休み中ならまだしも、今の時期に泊まりがけは無理ですよ」

 何を言ってんの??と言う口調で碧が返す。

 夏休みでも源之助がいるから、正直言えば一泊二日以上は出来ればお断りしたいところなんだけどね。


 それこそ北海道でのランクアップの試験みたいな、どうしても受けなきゃいけない場合はまだしも。普通の依頼で連泊な仕事なんぞ余程のことがない限り却下一択だ。


 と言うか、そこら辺の事情は遠藤氏だって分かっている筈なのに。

 どこぞの政治家でも関わっていて、また圧力を掛けられているんかね?

 退魔師はそれなりの数がいるのだ。

 他の人にやって貰えばいい。出張手当を厚くしたら誰かが受けてくれるでしょ。


『実はとある大企業の創業家のお嬢さんが生霊に悩まされているのですが、肝心の生霊が男性が傍にいると出てこないようでして。

 お陰で被害の確認にかなり時間がかかり、被害者が現時点で既にノイローゼー気味になっているので夏休みまで待てないと言うのが父親である依頼主の主張なのです』

 碧の言葉をスルーして遠藤氏が説明を始めた。


 ありゃま。

 男がそばに居ると出てこない生霊って……男嫌い? それとも変な感じに男尊女卑な霊で女性の退魔師なら負けないとでも思っているのかね?


 どちらにせよ、退魔師は男の方は多いし、女性でも男性とペアになっている場合が多そうだから、確かに頼める相手は少なそうだね。

「ちなみに、調査員は偶然女性だったんですか?

 それとも、既に男性がそばに居ると現れないと言うのは分かっていたんですか?」

 思わず気になったので聞いてみた。


『隣の部屋程度だったら現れる事は分かっていたので、調査員が隣室から霊の存在を確認しました。

 同じ部屋に男性が居ないと非定期に現れて嫌がらせを行ったり酷い場合は短時間ながらも体を乗っ取るらしく、被害者はできるだけ兄や父親、男性使用人と一緒に過ごすようにしているようですが、若い女性が寝る時まで男性と同室でなければならないと言うのはかなりのストレスなようでして……』

 遠藤氏が言った。


 うわぁ。

 それってお風呂入る時とかもなの??

 そうなると、我慢が出来なくなったらそれこそ同じ部屋にいてシャワーカーテンでも閉めて急いでシャワーを浴びるのかな?

 若い女性だったらマジでそれはきつそう。

 しかも、女性だけになったら即座に現れる訳でもないから退魔師が泊まりがけなきゃいけない訳?


「う〜ん、碧って憑かれている被害者に触れられたら2度とやろうと思わないぐらい生霊に痛い目に合わせられる?」

 電話をミュートにして碧に尋ねる。私だったら生霊を捕まえたら2度と体から出ようと思わないように意思誘導を埋め込めると思うけど、普通の術師だと痛い目に合わせて体から出ようと思わないとか、弱って暫く寝込むぐらいなダメージしか与えられないんじゃないかなぁ。まあ、殺しちゃうのも可能っちゃあ可能だとは思うけど。《《生》》霊でそれをするのはちょっと問題だろう。


「ちなみに、この生霊が誰かを殺したとか言った情報は無いんですね?」

 微妙な顔をした碧が電話のミュートを外して尋ねる。


『入ってきている情報では、ありません。

 退魔の過程でどなたかが亡くなった場合でも当局へ必要な圧力を掛けるのは任せてくれと依頼主は言っていますが、出来れば退魔協会としてはそれは避けたいところです』

 遠藤氏が苦笑いっぽい声で応じた。


「私が生霊を撃退したタイミングで昏睡状態になった方を見つけて頂くのは可能だと思います?

 関東地域のすべての医療施設や警察などから情報を集める事が必要になる可能性がありますが」

 碧が尋ねる。


 なるほど?

 碧だと、生霊を体に戻して昏睡状態に出来るんだ?


『十分可能だと思います』

 遠藤氏が自信ありげに答えた。

 一体どれだけ権力のある事業家なんだろうね、今度の依頼主。


「う〜ん、だったら日中は一緒に行って、その間に出てこなかったら交代で被害者の部屋に泊まる感じにする?」

 碧が同情したのかそれなりにやる気っぽいから、夜だけ交代で帰ってきて源之助の面倒を見る形にするならありかな?


『是非!! お願いします!』

 遠藤氏が凄く熱心に言ってきた。

 既に誰かに断られた後なのかな?


 まあ、それこそ黒魔術師か白魔術師じゃないと生霊を上手いこと捕えるなり昏睡状態するなりって難しそうだもんねぇ。

 考えてみたら、死んでて除霊すれば良いだけの悪霊の方がずっと扱いは楽だよね。


 あちらでオンラインで大学の授業を受けるのがOKか、確認して貰おう。

 それに文句を言うなら、マジで夏休みまで待ってもらうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
生霊を退治しても法律で取り締まれなければ無罪? それとも正当防衛かな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ