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神に祈りました!(キリッ)

 ドン引きしている私をよそに、碧は肺と思われる器官を更にスパっと切り開き、外からムニュムニュ揉みしだいてニョロニョロをどんどん押し出し、出て来たのを引っ張ってはバットに入れていく。

 細い紐が肺の中に束になっている感じで、気持ちが悪過ぎるんだけど!!

 なんかこう、SF映画でエイリアンに寄生された生物みたいだ。

 思わず吐き気がしたが、なんとかバットの中身から目を逸らし、息をこらす感じで吐き気を抑えていたら、肺の中のニョロニョロを出し終わったのか、碧が肺を切れ目を塞ぐ感じに軽く握って魔力が動いたと思ったら……肺が戻っていた。


 いや、元に戻るというよりも、もっと健康そうな色かも?

 色合いがちょっと違っているだけで、碧が治療したと分かっているから健康そうって思っただけで実際にどんな色が肺にとって健康な状態なのかは知らないけどさ。


「これで終わり?」

 ほっと息を吐きながら尋ねる。


「うんにゃ、まだ心臓の中にも居るからそっちも」

 碧が答え、再度メスを手に取って今度は肺をちょっと押し除ける感じで奥にあった肉塊(あれが心臓なんだろうねぇ)を手前に引き出し、それをスパッと上から下まで思い切りよく切り裂いた。


「うわ!」

 脈動していなくても、心臓の中には血が入っている。

 それが勢いよく切り裂いた心臓から流れ出し……一緒に肺に居たニョロニョロよりも更に太くて元気そう(多分)な寄生虫が姿を現した。


「うぎゃぎゃ〜!!」

 思わずあまりの気持ち悪さに叫んでしまう。

 新井さんがドアの近くにいない事を期待しよう。

 何をやって居るのかと来られたら困る。

 一応扉の鍵は掛けてあるからガラッと開けて覗き込むと言うのはないが、ノックされたら無視し続ける訳にはいかない。


 ニョロニョロをグイグイ引っ張り出してバットにぶち撒けた碧が、一通り目につく白い紐状の物体を取り出し終わったところで蛇口のところへ手を洗いに行った。

 戻って来た時には手に虫除け用魔道具として使っているラミネートされた結界用の符を持っている。

「これにこのニョロニョロの生体指標(マーカー)を登録して、体から完全に押し出しちゃおう」


 確かに、肺と心臓以外にも小さい個体が残っていたらまたそれが心臓に住み着いて育つ事になっちゃうからダメだよね。

 碧が符を後脚の方から胸の方に向けて動かしたら、少量の血が心臓の穴(動脈の出入口と言うべき?)から流れ出て、そこに小さめなニョロニョロが入っていた。


 うわ、やっぱいたんだ。

 碧はそれをさっさとバットに移し、次は前脚、最後に頭の方からと符を降る感じに動かす。前脚からは小さいのが数体出て来たが、頭の方からは何も出てこなかった。


 ホラーストーリーなんかだと蛆虫や蝿が耳から入って脳の中に寄生するなんていうのもあるが、フィラリアは猫の脳には繁殖しないらしい。


 取り敢えず、これで終わりだと思いたい。

 寄生虫と一緒に出て来た血の臭いも相まって、マジで戻しそう。


 碧がバットの上にさっと手を翳したら、ニョロニョロから命が消えたのが視えた。今までは仮死状態だった様だ。全部の寄生虫を抹殺した碧が、心臓を元の形に戻る感じに握りながら私に指示した。

「もうこのバットの中身は流しで捨てちゃって良いよ」


「了解!!

 ついでにアンコちゃんも水洗いする?」

 それなりに体に血がついているから、目覚める前に洗った方が良さげだ。


 猫用シャンプーは持って来ていないけど、人間用のボディソープを少し混ぜたぬるま湯で流すぐらいだったら大丈夫じゃないかな?

 少し毛皮がギシギシしちゃっても、病気のせいという事で誤魔化せるだろう。


「ボディソープの香りが猫の毛皮からしたら怪しまれると思うから、タオルを濡らして拭くだけにしておこう」

 碧が応じる。


 あ〜。確かに健康になった猫に嬉しさのあまり猫吸いした際、ボディソープの匂いがしたら怪しいか。


 と言うか、それよりも。

「新井さん、アンコちゃんがフィラリアでかなりヤバい状態だったって分かっていたのかも?

 だとしたら奇跡的に健康になったらちょっと不味い気がする」

 確か猫のフィラリアって不治の病だよね?


 源之助を迎えた頃に調べた、猫にとってヤバい病気の一つにフィラリアがあった気がする。

 まあ、碧が居れば大丈夫だと思ってそれほど真剣には読まなかったんだけど、有名な病気なのに治療できないとは意外〜と思った記憶がある。


「奇跡よ、奇跡! アンコちゃんは神に祈ったら救われたの!

 ただし、医療行為とも言えなくはない奇跡って業界団体から横槍が入りやすいから、誰にも言わない様にって口止めして、もしもアンコちゃんのかかりつけ医がフィラリアである事を知っているなら新しいかかりつけ医を探す様、言い包めないとね」

 心臓を癒し終わって今度は切り開いた胴体を元に戻す形に挟んで押しながら、碧が言う。


 奇跡ねぇ。

 ある意味、腫瘍が無くなるよりもヤバい感じで説明できない奇跡な気がする。新井さんには碧に迷惑を掛けないよう、誰にもアンコちゃんが助かった際に何をしたのか言わないでおこうと固く決心するよう意思誘導しておこう。

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― 新着の感想 ―
まさに奇跡ですね 猫の宿痾である腎臓病なんてちょちょいと治せそう
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