信頼関係
「で、どっちにしようか?」
兄貴が送って来たウェブサイトのプラットフォームの候補であるA社とB社の規約やサービス内容の詳細を二人でそれぞれ読み終わり、相談中。
「A社の方が色々とオプションで細かいところまでやってくれるけど、B社の方が安いね。
これって細かい部分にまで拘りすぎてコスト競争に負ける日本企業の典型例って見るべきなのか、大元のサービスではアメリカ資本のコスト競争に勝てないから細かいサービスで戦おうと頑張っている日本企業と言うべきなのか、どっちなんだろうね?」
碧が送られて来た詳細をプリントアウトした紙を机に上に置きながら言った。
詳細を色々と比較する時ってプリントアウトする方がやりやすいんだよね〜。ちょっと紙が無駄になるけど。
まあ、前世ならまだしも現代日本では紙なんてA4一枚1〜2円程度なんだから、ケチる必要も無い。
と言うか、ある意味紙がこんなに安く上がる経済構造がちょっと怖いかも。
前世でも羊皮紙では無く植物から作る紙を使っていたから紙や本も極端には高くはなかったが、それでも現代ほど安くは無かったからなぁ。
これだけ安くても、ちゃんと植林が追いついている製造なんかね?
アマゾンの森とかを切り潰して作っている安価だとしたら、地球の将来的に不味いと思うんだけど。
まあ、それはさておき。
「どうせ利益度外視と言うか経費削減の優先度は低いから、色々やってくれるA社の方にしない?
折角日本の会社が頑張っているなら、顧客になって少しでも売り上げに貢献してあげたいし」
自分の買い物だと、日本の天国買い物サイトとアメリカの密林とを比べて総合的に安い方を使っちゃう私だが、快適生活ラボの費用だったらそこまでケチらなくても良い気がするんだよねぇ。
同じ出費なのに、ワンクッション入ると経済性よりも理想を重視できるのって不思議だ。
「そうだね。
会員の管理とか紹介元・紹介先のデータベース化とかしてくれる方が便利だし、こっちで良いか」
碧が頷く。
「そう言えば、ヤバい宗教法人の客寄せ道具に利用されたりしない様に、符をクッションやアイピローの生地の内側に接着剤でしっかり付けて、取り出そうとしたら破れる様にしようと思うんだけど、どうかな?」
正規販売を始める前にできるだけ臭いが無い接着剤を探しとかないとだね。
「良いかも〜!
あと、面倒でも紹介された人は毎回ネットでサーチして、宗教法人の一員だとかカリスママッサージ師とかじゃ無い事を確認しよう」
碧が提案した。
「確かに!
あと、規約の方で紹介された人間を会員として認めるか否かはこちらに選ぶ権利があるし、一回限りのプレゼント以外で横流しや転売が発覚した場合は即座に会員権の永久剥奪って明記しておこう」
紹介されて申し込んだのに拒絶するとは何事だと絡まれても面倒だからね。
何やら昔の法律があるホテル業とかとは違って、普通の販売業だったら客への販売拒否とか会員の選り好みをする権利は企業側にあるとは思うけど、しっかり規約に明記しておく方が後で揉めにくいだろう。
「いちゃもん付けまくった相手も、会員から除名出来るってついでに書いておこうか。
ただこれは正当な苦情まで受け付けないって取られるとそう言う規約は無効って裁判でされそうな気もするから微妙だけど」
碧が少し首を傾げながら言った。
「3ヶ月はまだしも、90回使って効果が無くなったのって使用回数を証明できないのが痛いよねぇ。
1日に複数回使っているのを目撃されている場合は、その目撃状況から推測できる最大回数を使われたと推測するのに合意するものとするとでも規約に書いておく?
そんでもって2回クレームをつけた場合は利用者と快適生活ラボの間の信頼関係が決定的に損なわれたと見做して、会員としての関係を終了するって事で」
うざいクレーマーの相手はしたくないからね。
どうせ原価は販売価格に比べると大分と少ないのだ。
利益率は抜群なんだし、煩いのはさっさと返金してそれで切り捨てよう。
「じゃあ、こんなところかな?
あとはお兄さんに今の条件でA社で売り出すサイトの構築をお願いして、適当に使うアイピローやクッションをどこかに卸売りメーカーに頼めばいいだけだよね」
碧が終わったらぜ〜と言う感じに伸びをした。
「契約とか商品の見た目とか、細かい部分はこれから色々と決めていかなきゃだろうけど、大体道筋は見えて来たかな?」
大学の友人たちにはサイトの詳細を知らせるつもりはないが。
全部固まるまで、どのくらい時間が掛かるかな?
お手軽に全部終わると良いんだけど。
これでこの章は終わりにします。
また明後日から続けますのでよろしくお願いします。