流用リスク
兄貴がサイトの事に関して話し合いたいと連絡して来た。
『選択肢としては、こっちのA社かB社のサービスを使うのが一番現実的だ。
俺に頼むって言うのは問題があった時に責任を取りきれないし、俺がいつまでも現役として最先端の技術をマスターし続ける保証もないからお勧め出来ない』
「確かに情報漏洩があった際に、サイトの設計に問題があったせいでも家族が作った物だったら賠償請求をし難いし、資金力も足りないでしょうね。そう考えると、外部のきちんとした大手を使う方が良さそう」
碧が頷く。
「確かに、兄貴を訴えてもあまり搾り取れなそうだよね。
ちなみにこのA社とB社は資本とかはしっかりあるの?
あと、出来れば外国資本とかが入っていない方が安心かも?」
少なくとも東の大陸の独裁国家の紐付きな会社は遠慮したい。
太平洋の向こう側の民主主義国家のリーダーだった筈の国も……何やら最近はトップが独裁者になる憧れを露骨に垂れ流しているから、情報を抜き取る様に自国の企業に裏でこっそり圧力をかけたり、情報機関に違法だろうと構わず情報収集させそうだからちょっと嫌かな。
技術力的にはあっちの国の方が安心かもだけど。
『A社は日本の新興企業でこないだ上場したばかりだから10年後に生き残っているかどうかは乞うご期待って奴だな。
B社はアメリカ大手の子会社だから資金力は十分だが未来永劫日本から撤退しないかどうかは不明だ。まあ、どちらもちゃんと会社の経営情報を入手して確認しておく方が良いだろうね』
兄貴が言った。
確かに10年や20年で見ると、パソコンも白物家電も日本のメーカーの殆どが中国や韓国勢に負けて撤退したもんなぁ。
長期的なサービスの場合は最初に契約した時だけで無く、その後もどうなのか気にし続けなきゃいけないのか。
「どうせだったら、選んだ会社の株でも最小単位で良いから買おうよ。
良いサービスだったら儲かる可能性が高いだろうし、微妙で会社が傾きそうになってきてても毎年財務情報を決算後に送ってくるだろうから資金力のチェックを忘れないでしょ」
碧が提案した。
なるほど。
そう言う手もあるか。
私らの払った費用が配当金として一部でも返ってくるなら嬉しいしね。
これで情報漏洩が起きて損害賠償のせいで会社が潰れたら投資分も無くなるしで踏んだり蹴ったりだが、そんな事にはならないと期待しておこう。
「ちなみに、どっちも代金決済代行をしてくれるの?」
兄貴に尋ねる。
『ああ。
その方が情報漏洩を起こして風評被害に巻き込まれる可能性も減るからか、もしくは追加的収入源としてかは知らんが、どちらも自社の代金決済代行サービスを使うことを推奨している』
兄貴が頷いた。
「どっちがお勧めとかあるの?
それともどちらも良い点と悪い点があるって感じ?」
明らかにどちらか一方が優れてるなら最初からそう言うだろうと思うけど。
『基本の会員制サービスは凛が言っていた内容はカバーしているから、あとは細かい部分の使い勝手の好みだな』
兄貴が答えた。
「分かった。じゃあ碧と相談して決めてから連絡するね」
碧も頷き、席を立った。
「そう言えばさ、この試作品、親達にも送るべきかな?」
ちょっと気になっていたので兄貴に尋ねる。
兄貴に渡したのに両親に渡さないのって悪いかな?
まあ、兄貴に渡したのは仕事関連なんだけど。
『これって全部あの符が入っているんだよな?
だとしたら下手にちゃんと会社としての販売形態が整う前になし崩しに話が広まると泥沼になるかもだから、やめた方が良いんじゃないか?
ウチの親達は子供からのプレゼントを自慢しまくるタイプじゃないとは思うが、会社でついうっかりポロっとする可能性はあるし、上司からの頼み事だとかなんとか言われたら面倒だろう。
下手に個人的に流す形を作ると、それこそ新興宗教の道具にでも使われかねないくないか?』
兄貴が言った。
……。
確かに、痛みが無くなる道具って下手をしたら新興宗教の教祖のアピールポイントに使われかねないかも?
ちゃんとどこぞの企業が売っていると言う形ならまだしも、非公式に入手出来る物ってなると伝手として変なプレミアムがついて利用されるリスクもゼロではないか。
「うげ〜。
顧客の名前を定期的にネットで検索してどこぞの宗教法人のお偉いさんだったりしないか、確認した方が良いのかも??」
流石に山型クッションって宗教の場で使うのには向いていないと思うけど、符と聖域の雑草を抜き出して勝手に使えない様になんらかの形で工夫しないとだね。アイピローも。
『まあ、数を捌けなきゃ宗教法人として大成は出来ないとは思うが、あの効き目は中々ヤバいだろ』
兄貴が頷きながら言った。
「ホットタオルやサウナとマッサージと極端に差はない筈なんだけどねぇ。
まあ良いや、流用対策に関して碧と相談する。
そんじゃあ数日内にサイトの方に関しては連絡するから。
ありがとね」
両親にはサイトの形が整ってから渡そう。