配るか否か
柳原氏から電話が掛かってきた。
『クレジットカードの方が全員即座に対応できますが、QRコード決済を希望するならこれを機会にスマホに入れて扱いを始めると皆が言っています』
先日、決済方法に関して希望と許容範囲に関して聞いた件の返事なのだが、カードの方が汎用性はあるみたいだね。
「やはりQRコード決済は馴染みが無い人が多いですか。
ちなみに、会計事務所として顧客が決済に使っていて、話せる範囲で何か問題が起きた事とかってありますか?
クレジットカードってカード情報を毎回入力させる手間を省く為にこちらが情報を保管していて流出したりしたら、責任問題になりそうでちょっと怖いんですけど」
意外と情報漏洩が起きた場合でも、漏洩元企業が客に賠償金として払っている金額ってショボいけどね。
あれって結局、クレジットカード情報を悪用されてもカード会社が払うからなのかね?
だが、消費者側がしょぼい金額しか受け取れなくても、損害は出ているんだから誰かがそれを払う羽目になるだろうし、その場合払う責任を負うのは情報漏洩元だろう。
確実にカード会社に損害請求されるよね??
何かそう言うのに対応する保険があるかもだが、保険料が高そうだし、ちょっとでもこちら側に瑕疵があったら保険金支払いががっつり減額されそう。
こないだ銃殺されたとか言うアメリカの医療保険の会社ほど酷くは無いだろうが、ビジネスなのだ。
一律全て保険請求は一度拒否してから、諦めないで食い下がる相手だけ出来るだけ引き伸ばした挙句に法的に訴えられたら確実に負けると思われる一部だけ払うのが会社のビジネスモデルだなんて言う様なドギツイ事はやっていないとは思うが、日本の保険会社だってそうそう甘い対応は期待出来ないだろう。
『QRコードは店舗で使う場合は提示してある店用のQRコードを知らぬ間にすり替えられていたせいで関係ない会社に支払いが行ったなんて言う事件が多いですが、ネット販売でしたらウェブサイトが乗っ取られない限り大丈夫でしょうね。
ただ、まだECサイトではQRコード決済に対応していないところも多いです。
クレジットカード決済にする場合は仰る通り情報漏洩が起きた際の損害額が莫大なものになりかねないので、決済代行業者を使うことをお勧めしますね』
柳原氏が言った。
そっか、サイトそのものが決済をやってくれない場合にしても、決済代行業者なんて言うのがあるのか。
「なるほど。
ちょっとそこら辺は更に考えておきますね。
そう言えば、ついでに分かるようだったら教えて頂きたいのですが……私のアイピローは夕方になって目が霞むとか、文字が二重になるとか言った症状にも効果があると、誰か言っていましたか?」
老眼チックな症状が誰に出てるか知らないが、それなりに白髪が生えている人も何人かいたと思うんだよね。
柳原氏本人の感想を聞くと言う形にしなければ、それ程失礼じゃないよね?
『言われてみたら……眼精疲労が酷いと乱視を調整する筋力が落ちるのか、忙しい時期は夕方になると文字が二重になることが多いのですが、確かにあれを使い始めてから気にならなくなりましたね。
頭痛が無くなるのが嬉しすぎて気がついていませんでした』
柳原氏が教えてくれた。
本人的には老化現象的な症状を隠すつもりはないらしい。
もしくは老化現象では無く、若い頃から疲れると出ていた症状なのかも?
どちらにせよ。
頭が痛い上に文字が二重になるなんて、悲惨だね。
と言うか、二重になった文字がなんで読めるのか、イマイチ分からない。
片目でスクリーンや書類を見る様にするのかな?
あまり目の為に良いとは思えないけど。
老眼用に!と顧客層を増やす必要は無いけど、両親にも一応欲しいか聞いてみるかな?
父親は最近老眼鏡を買っていたし、母親もちょっとスマホを見る際に目元から離すようになったから、多少は老化現象で困っている筈。
老眼鏡を買えば解決する問題なら、態々昼寝する必要のあるアイピローなんぞ使わない方が良いかもだけど。
夕方に目が霞むからって昼寝していたら、夜の寝つきが悪くなりそうだし。
う〜ん、勧めるべきか否か。
まあ、仕事が忙しい時の眼精疲労用にも良いんだし、会社の人とかに見られない様にこっそり使ってねと言って渡す分には構わないかな?
あまり配り過ぎると後が怖い気もするけど。
娘のために売り上げを増やそうと、善意で話を広められたら困るんだよなぁ。
……碧から親戚のお土産のお裾分けで貰ったって事にしようかな?