そう言えば?
「あ、お兄さんにサンプルを送るなら、ついでに聖子さんにも1セット送ろう」
横で聞いていた碧が、通話を切ったところで提案してきた。
「腰痛や肩こりや眼精疲労用のグッズなんて要るかな?
冬ならスキーで腰を打ったりしたら腰痛用のクッションを有り難く感じるかもだけど、今送ったんじゃ冬までに魔力が切れちゃうよ?」
退魔師なんだし、だったら回復用の符を送る方が良くないかね? あれだったら1年ぐらいは大丈夫な筈だし。退魔の仕事での怪我か、スキーでの怪我かなんて言わなきゃ分からない。
「スキーシーズンが終わったら符を描くのに肩が凝るし目がしょぼしょぼする毎日だって言ってたから、歓迎されると思うよ」
碧が返す。
うん?
「聖子さんってそんなに沢山符を売ってるの?」
まあ、物的証拠が残らないし周囲への被害も比較的少ない風の攻撃符の方が、他の元素系攻撃術の符よりは売りやすいかもだが。
「北海道に住んでいて、雪がある間は一切働いていないのよ?
雪がなくなったら退魔協会からの依頼を全部受けるにしても、依頼がない日はひたすら符を描いて収入アップに努めているって言っていたから、それなりに疲れるんじゃない?」
碧が軽く笑いながら教えてくれた。
なるほど?
「そっか、北海道って年によって違いがあるとしても、大体11月から4月ぐらいまではスキーシーズンなんだっけ? 実質年の半分ぐらい働いていないとなると、いくら退魔師が足りなくて退魔の仕事が美味しいと言っても、半年で1年分稼ぐのは大変そうだよね」
碧が頷いた。
「しかも雪質に拘った上で、出来るだけスキーシーズンが長い所に住んでいるからね。最近は外国人が増えたせいでスキー場でのコストや生活費もガンガン上がって大変だと言っていたよ〜」
外国人が増えて、今までの慣習を無視したせいで悪霊が放たれる様な状況も増えているかもだけど、観光客が荒らした慰霊碑を鎮めるためにお金を出す地元民が減っているとしたら収入には繋がらないかもだし。そう考えると、意外と生活は大変なのかも?
兄貴たちが怜子さんの弟子入りも兼ねて一緒に住ませてもらっているって聞いたけど、もしもスキーシーズン以外も兄貴が同居しているなら……ちゃんと生活費を出しているんだろうね??
まあ、取り敢えずそのお礼も兼ねて、グッズのサンプルを送りますか。
「怜子さんの分も送るべきかな?
兄貴に送ったのを二人で仲良く分け合って使えと言いたい所だけど、もしも私が送ったアイピローの取り合いのせいで関係にヒビが入ったなんて事になったらちょっと気不味いかも」
良い年した大人なんだからそんなことは無いと思いたいが。
「魔術師になりたかった厨二病患者なお兄さんが、退魔師になる為に必死に勉強している婚約者をどの位思いやれるかによるかもねぇ」
碧がちょっと自信なさげに首を傾げる。
「兄貴側が怜子さんの事を妬んで拗れるって事はないと思うけど、思いやると言う機能は兄貴に無いか非常に弱い気がするから、それに期待するのは危険だね。
怜子さんが疲れている時に遠慮なく使える様、三人分を送ろう」
そんでもって大きく赤の太字で1日最高で2回まで、90回使う若しくは3ヶ月経ったら効果が切れますって注意書きして一個一個に貼り付けておくのが無難だろうね。
兄貴は使用説明書を読まない典型的な大雑把野郎だし、兄貴宛に送ったら兄貴が開けてそれを二人に渡すだろうから使い方の説明をしっかりするとも思えない。
「と言うか、それだけ忙しいのに夏に結婚するなんて、無謀な気もするなぁ。
取り敢えず、結婚式に近づいたらスキンケア用にポーションもどきローションを送ろうかな」
聖域のヨモギから作るポーションもどきは実質スキンケアローションとして使っているが、亜空間収納に入れておくならまだしも外に出していたら数週間で効果が激減するからね。
結婚式直前に送るのが正解だろう。
「ああ、そんな事を言っていたね。
凛は呼ばれるだろうから、一応時期が分かったらスケジューラーに入れといてね〜」
碧が言った。
確かに、私が結婚式に参加する為に北海道へ行っていたら碧も依頼を受けにくいよね。
カリスマ祈祷師に関しても手伝いを黒木さんなりに頼む必要があるし。
と言うか。
「呼ばれるのかな?
多分北海道でやるんだろうと思うけど、家族の分の移動や宿泊先を手配する様な気の利かせ方を兄貴に期待出来ない気もするし、マジで『内輪でやるから』とか言って家族は来なくて良いって言ってくる気もしないでも無い」
と言うか、兄貴に準備が任せられている時点で、二人とも結婚式場での結婚は考えてないのかも??
適当に市役所?で籍を入れた後に友人とかとどっかのレストランで集まって騒ぐ程度で終わらせそうな気もするな。
母親にちょっとどんなプランになっているのか、聞いてみよう。




