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ありゃりゃ

 柳原氏との面談を終わらせ、会議室に移動した。

 まずは一番先にアイピローを使い切った偏頭痛持ちの女性と話をすることになっている。

 大きめとは言え個人事務所なせいか、会議室もギリギリ六人座れるけど現実的には四人用かな〜と言う程度の部屋だ。

 そこのテーブルの奥側に私と碧が座って待っていたら、若い眼鏡をした女性が入ってきた。


 考えてみたら、この事務所って眼鏡率が高いよなぁ。

 まあ、朝から晩まで細かい数字を見ていたら目も悪くなるよね。

 レイシックの手術とかしてみたらどうなんだろ?と言う気もしないでも無いが、ある意味手元近くの帳簿や画面をずっと見続ける人間にとって、近眼も一つの環境適応的な進化の一つなのかも? 下手に手術でそれを打ち消すのは勿体無いと言う考え方もあるね。


「こんにちは。

 今回試作品のテストを頼んだ長谷川と藤山です」

 立ち上がって握手の手を差し出しながら挨拶をする。


「山根です。今回は素晴らしい商品を開発していただいて、本当にありがとうございました!

 これって本当に画期的です!!

 パワーナップが頭痛にこれ程効くなんて、知りませんでした!」

 ブンブンと私の手を握って振り回しながら山根さんが応じた。


 すんごい喜んでいるが、依存って程の病んだ感じはないかな?

 偏頭痛ってめっちゃ辛いって言うし、依存するとしたら偏頭痛持ちだと思っていたんだけど。


「取り敢えず、こちらの想定以上に当社の商品を使っていただいた様なので一応血圧を測らせて下さい」

 山根さんを座らせ、腕を取って血圧計を巻き付ける。


「ちなみに使った際に何か気になった感触とか違和感とか、ありましたか?

 物理的な感覚でも、体や精神的な反応でもなんでも良いので何か気づいたことがあったら教えて下さい」

 寝かせる黒魔術に副作用は無い筈だけど、神経のストレスのリセットに関してはそうそうしょっちゅう繰り返し使う事は想定してないからねぇ。

 2時間おきとかに使われまくった際に何か変な影響が出る可能性は否定し切れない。


「特には無いですが……強いて言うならば、違和感が無いのに違和感を感じる感じですかね?

 頭痛薬を飲んだとしてもああもスッキリ痛みが無くなることなんて今まで無かったんですけど、これをつけて眠ると偏頭痛がほぼ100%治るし、眼精疲労もかなり楽なるんです。

 薬を飲むと痛みが抑えられても頭が重くなって動くのも怠い感じになる事が多いのに。普通の日の朝みたいに目覚めるのが不思議すぎて信じがたいです」

 山根さんが言った。


 へぇ?

 偏頭痛が100%治るとは、随分とこの魔法陣と相性が良いんだね。

 前世で知り合いに使った時はそこまでの効果は無い人の方が多かった。


 もしかして、魔力が無いせいで術への防御反応的な打ち消しが無くて、術の効き目が強いのかね?

 ある意味、山根さんって意思誘導とかが効きすぎちゃう危険なタイプかも。


「そうですか。

 ちなみに頭痛や眼精疲労に対する効果は個人差があるので、これが正式に商品化してからもあまり人に勧めないで下さいね。

 紹介制で限定販売にするつもりですし、一人一月に一つしか売らない形にする予定ですが、それでも売れすぎちゃって製造が追いつかなかったら販売を更に制限する可能性もありますから。このアイピローの使用は最大で1日3回、出来れば2回に抑えて下さい」

 タブレットに山根さんの名前を入力して血圧値を記録しながら伝える。


「……人に勧めない方が良いんですか?」

 山根さんが意外そうに聞き返してきた。


「これ、商品の一部は私の手作りなんです。

 1日数個しか作れないので、平均で毎日5個と考えても月に150個前後しか作れません。

 私が何か重い病気になるとか旅行に行くなんてことになったら販売停止ですから、あまり話を広めて失望する人を増やすのも悪いでしょう?」

 血圧計を外すついでに手に触れながらそう言いつつ、山根さんの精神状態を確認する。

『うげ、これが無くなる可能性があるの?!』と言うウンザリ感の強い軽いショックはあったが、特に依存を匂わせる様なパニック的な反応は無かった。


 ふむ。

 依存性を心配する必要はなかったかな?

 ちょっと意外だけど、まあ良かった。



 と言う感じに順番に事務所の人と面談をしながらフィードバックを受け取り、問題がないか探る。

 予想以上にガンガン使いまくられた割に、危険な程に依存している人は居なかった、

 ちょっと依存気味だから長期的に要観察かな〜と思った人は三人程居たけど。


 が。

「え?!

 販売停止?」

 他の人と同じ様に使い過ぎに関する警告をしながらさらっと販売停止の可能性を口にしたら、血圧計を嵌めていた男性が声を潜めて聞き返した。


 もっと大声で反応した人が多い中、静かな応対だったんだけど……。

 血圧計がビー!と音を立ててエラーメッセージを返してきた。

 うわぁ、パニックして脈拍が突然爆上がりしたのが首の血管の動きで見えていたけど、こうなると血圧もグワっと上がるんだね。


 内心のパニックも凄い事になっているから、エラー音すら聞こえて無いんじゃないかな?

 やばいぐらい依存してるよ〜。

 この人はまだアイピローを使い切って居ない、自制出来ている人だったんだけど。

 依存しているからこそ、使い切らない様に細心の注意を払って使っていたのか……。


 う〜ん、利用頻度を制御できているなら依存してても大丈夫?

 今後二度と使わないなら、ちょっと精神に干渉してアイピローを使った際の解放感の記憶を消して依存する原因を減らし、意思誘導でこれを今後は使わなくて良いやと思いこませる事も可能だが、これからも日に数回使うんだったらその手は使えないかなぁ。


 ちょっと困ったぞ。

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― 新着の感想 ―
これはもう、会計事務所数社と契約したら それでいっぱいいっぱいになりそうですね
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