更に問題あり
取り敢えず何種類かアイピローを買って色々実験すると共に売り出す時のベースを試す事にしようと、幾つかネットで適当に検索で当たったので比較的高いのを選んで注文してみた。
「あら。
5分ってやり過ぎだったんだね」
最初に届いたアイピローを開けた際に目につく位置に挟まれていた使用上の注意を見て、先日5分電子レンジで温めて以来アイピローの手触りが変になった原因が分かった。
「あ、やっぱそう?
少なくとも発火しなかっただけマシじゃ無い?水と一緒だったから蒸気でぐしょぐしょになったけど」
同じく山型のクッションを幾つか購入してみた碧が横でダンボール箱を開けながらコメントする。
同じ日にネットで適当に頼んだせいか、第一便が私のも碧のも同じタイミングで届いたんだよね。軽いダンボールが幾つも一気に届いて、宅配業者の人は何事かと思ったかも。
「大きく太字で、30秒以上温めるなって書いてある。
暖かさが足りなくても10秒ずつ追加で温めて絶対に1分を超えるなだってさ。
これって2分とか単体でやったら発火する危険があるのかもだね。
いや、これはクレイビーズだから発火はしないか。溶けちゃうとか割れちゃうとかなのかな?」
適当に値段で選んで買ったからちゃんと見ていなかったが、意外とアイピローって中の素材も色々とあるようだ。
小豆にクレイビーズにガラスビーズ、玄米。
他にもUSBで充電する電気のパワーで暖めつつ振動するミニマッサージ器っぽいのもあるな。
色々と工夫しているんだねぇ。
「へぇぇ、これって充電式カイロのアイピロー版みたいな感じ?
ある意味、これだったら確実に電子レンジで変に加熱されなくて良いんじゃない?」
碧が横から覗き込んで箱の一つを手に取る。
「ハーブの香りが売りだったら2、3ヶ月ごとのサブスクで常に新鮮なハーブをっていう事でアイピローを取り返せるけど、USBで温めるんじゃあ3ヶ月ごとに取り返す理由が無いじゃん」
買い切りではなくレンタルって感じでサブスク契約にと言うのはあっても、モノを一々物理的に送り返して新しいのを受け取る手間を掛ける理由がUSBアイピローには無いだろう。
「そっか。
ちなみに考えてみたらさ、2、3ヶ月で戻されてきたのに関して符と雑草と一緒にハーブも取り替えるにしても、本体は毎回リサイクルするの?
ある意味、他の人が顔に嵌めて寝ていたアイピローを使うのってちょっと嫌じゃない?」
碧が言った。
考えてみたら、車のサブスクだったら同じ車をレンタルし続ける様な感じだと思う。
家具のサブスクだったらちょくちょくインテリアを変えたい人用のレンタルみたいなもんだから、誰も使っていない新品が来るとは期待されてないと思う。だけど顔につけたりしないから然程気にならないよね。
服は……まあ、当然新品じゃ無いけどちゃんとクリーニングはしてあると考えているだろうね。
アイピローだったらこの場合、どうやったらしっかり洗えるんだろ?
カバーはちゃんと洗うし、なんだったら新品と取り替えても良いけど、本体は洗っちゃあダメそうなのが多そう。
アイピローのドライクリーニングなんてあまり聞かないけど、水洗いして良いのかは微妙に不明だし、下手をしたら他の誰かの家でダニとかノミとか、そこまでいかなくてもフケとか垢をピックアップしてそう。
そう考えると中身をちゃんと新品にしないとダメかな?
値段的にはそれでも赤字にならないレベルな価格で提供するつもりとは言え、古いアイピローが大量に家に溜まっていく様になるのは嫌だな。
まあ、そこまでバンバン売れない可能性も高いけど。
「考えてみたら腰はまだしも肩こり用の首ストレッチクッションだって、他の人が使ったのが回ってくるのって嫌かも」
と言うか、首周りだったら更にフケが多く入ってそう?
身嗜みに気を付けないフケだらけな人が肩こり用クッションをサブスクするともあまり思えないけど、何事もやってみなきゃ分からない。
「クッションじゃあ洗うのは更に難しそうよね。
かと言って3ヶ月毎に送り返されてきたのを捨てるのはちょっと良心が痛むし」
碧が頭を抱えながら言った。
「丸洗い可なクッションを選ぶ?
梅雨シーズンに黴臭くならずに乾かすのって至難の技な気もするけど。大量に売れないことを期待するしか無いかも」
クッションの洗濯を外注出来たりするんかな??