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知らんがな

「で、聞いた事があるかもって?」

 遠藤氏との通話が終わり、碧に尋ねる。

 今日は出席必須な授業が大学であるんだけど、まだ時間はあるからね。


「なんかウチのご先祖様の知り合いだった一族が関東の山奥の方に居たんだけど、隣の一族と水源に関して争いになって戦いになっちゃったらしいんだよね。

 江戸時代だったから戦国時代みたいにやったもん勝ちって訳ではなく、普通だったら喧嘩両成敗になって水利権を半々にするぐらいな感じになる筈だったのに、相手側が大名様の側近か誰かに美人な娘を差し出す事で上手いこと偏った采配をして貰うのに成功したらしいんだって」

 碧が思い出す様にちょっと目を天井に走らせながら言った。


 争いって大抵どちら側にも言い分はあるからねぇ。争いの采配ってどうやろうと文句を言う人間が居るだろうけど、ある意味上手い事権力なり暴力なりを使って片側を全部黙らせちゃえば話は簡単に済んじゃうんかもね。


 その為に差し出された美人な娘さんがそれなりに幸せになれたら良いけど。

 公平にやるべき采配を自分の我欲で捻じ曲げる様な相手に差し出されたんじゃあ娘さんの待遇もあまり良くなさそうだけど。


「なんか先が暗そうな話になってきたね」

 思わず口を挟んでしまう。まあ、悪霊満載な寺の話になるんだからハッピーエンドじゃ無いのは最初から分かっている事なんだけどさ。

 権力に振り回されて理不尽な目に遭う人の話って後から聞いても辛いんだよねぇ。

 ついつい空気を変える為におちゃらけたツッコミを入れたくなってしまう。


「そ〜。

 結局、その知り合いの一族が全面的に悪かったって事にされて当主一族の成人男性は全員切腹、分家や女子供も水利権を無くしたから実質敵対した一族に隷属するか、他の土地に行くしか無くなったらしい。

 今だったら大人しく新天地に行って新しいスタートを切るんだろうけど、昔だからねぇ。

 なんか憤慨して皆して抗議の意を込めて切腹しちゃったらしい」

 碧が言った。


 うわぁ。

 抗議が切腹ですか。

 まあ、昔はお偉い様に楯突いたら命がないって話も無きにしも非ずだったらしいけど。

 浪人になっても江戸時代じゃあ新しい働き先が無かったのかな?


「昔って争いごとの采配を決める権利がある人なんて、賄賂を請求し放題だったんだろうねぇ。

上に権力の濫用がバレたら不味かったかもだけど」

 法律とかはかなり曖昧だったらしいし。


「まあ、それなりの人数が恨みを抱きながら死んだからね。

 当然相手の一族とか采配をしたお偉いさんを祟ったらしい。

 で、死んだ人間を鎮める為にお寺を建てて、争いで死んだ人間も切腹した人間も手厚く葬って、勝った方の一族の人間が住職になってその寺で霊を宥める為に祈る様になったんだって」

 碧が続けた。


「流石に数百年も経てば恨みも忘れそうなもんだけど、お酒の場で色々やらかして目覚めさせちゃったのかな?」

 日本人ってお墓に拘りがあるせいか、大人しく眠っている霊でも墓石に悪戯をされるとかで目覚めることも意外にあるみたいだからねぇ。

 前世では墓にそれ程拘りがなかったからか、ちゃんと埋葬しなくてアンデッドになっちゃう場合はまだしも、それ以外だったらお墓に何かをしたからって悪霊になって出てくるってほぼ無かった。

 まあ、代わりに死霊使い(ネクロマンサー)が来て墓地全部の死者を喚び起こして連れ出すなんて事も稀にあったけど。


「なのかもねぇ。

 今まではそのやらかした方の一族の中で適当に家を継がない分家の次男や三男とかが住職になっていたらしいんだけど、少子化やら一つ前の世代で退魔師の才能持ちが多く生まれたとかで、住職になる人間が居なかったから廃寺になっちゃったって話らしいんだよね。

 お寺を正式に閉めるのもめっちゃ大変らしくって、結局ちゃんとした手続きをしないままに最後の住職さんがお亡くなりになって、実質廃寺だけど場所はそのままな状態になっていたらしい」

 碧が言った。

 そんな先祖のやらかしの場を誰がお花見に提供したのか、興味が湧くところだね。


「ちなみにそれって葬られているのは何百年も前の知り合いの一族でしょ?

 まさかその程度の関係なのに、神社である藤山家に何とかしてくれって言ってきたの?」

 まさかね?


「元々檀家なんて一族の人間がおまけ程度にいた程度だからどうでも良かったんだけど、怨霊化した一族の方の遺骨と言うか墓石というかをどうするかって言うのが問題だったらしくって。それを知り合いだった藤山家の神社の墓地に移せないかって相談されたらしいね」

 碧が頷きながら言った。


 先祖の悪事の不良債権化ってやつか〜。

 まあ、元々不良債権だったのをスッパリ縁切りしたくて連絡してきたけど、数百年前の知り合いなんざ知らんがなって話になったんだろうねぇ。

 勝手にほぼ関係のない、宗派どころか宗教も違う神社に動かされるのを死者が納得するかも微妙だし。


 で、しょうがないから先送りしていたらどこぞのアホが酒に酔ってやらかした、と。


 まあ、霊を全部碧が清めてくれれば後の始末はお金でなんとでもなるんだろうね。

 ……もしかして、それを期待してお花見に場を提供したとか?


 まさかね。


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― 新着の感想 ―
そう言えば神社の墓地って見たことないな と思ってググったら 境内とは別の場所に埋葬するんですね
今回のやらかしで祟ってる方々には、やらかした奴らの玉腐らせて(女は卵巣)起たなくする方向にずらせないかね? そんな阿呆の血は残す必要もないですし、体調悪化をそこに全振りにすればいけるんじゃね?
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