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賞味期限

「あ、やば。

 スープがもう無いや」

 源之助のフードを入れてある引き出しを確認した碧が声を上げた。


「え?!

 こないだ買ったよね?」

 源之助のドライフードは密林で400gとか300gに小分けしたのが10袋とか12袋入っている箱のを二種類買っている。

 一種類はヘアボールケアを謳う体に良いらしいちょっとお高いフード、もう一種類は安くて美味しいが実は猫世界のジャンクフードに近いのではと密かに思っているフードだ。


 ある意味、体にいい鳥のささみがそれ程美味しく無いのと同じで、猫もやっぱ体に良いって謳っているのよりも味を強調している物の方が美味しいみたいなんだよねぇ。

 でも、美味しいのって原材料のリストに『鶏肉』以外の名称が多いので、味を良くするために色々と添加物を混ぜてるっぽい。


 なのでまあ、妥協案として混ぜて体に良いのを六割、ジャンクを四割で出している。

 体に良いのだけを出すと、食べはするけどそことなく渋々感があって、ちょっと哀しそうなのだが、ジャンクのを混ぜると騙されて美味しそうに食べてくれるから。


 まあ、碧がいるのでジャンクだけを与えて病気になっても治せるけどね。

 とは言え、ジャンクフードばかりを食べた場合の微妙な不調がちゃんと分かるか碧も自信が無かったので、フードも源之助が美味しいと感じてくれる範囲で体に良い物を選んでいる。


 で、水分をしっかり摂ってもらうために毎朝スープを上げているのだが、これは近所のペットショップが何故か安く売っているのでそこでまとめ買いしている。

 毎月3日ほどポイント5倍の日があるのでその時にどっさり買っているのだが……どうやら計算を間違えた?!


「先週買いに行く筈だった日が雨だったじゃない?

 明日がポイントアップだからなんとか足りるかと思っていたら、数え間違えてたみたい」

 碧がちょっと困った顔をしながら言った。


「う〜ん、雑誌の付録で付いてきたウェットフードで残ってないかな?」

 源之助を迎えてから定期購入している猫の雑誌って、毎月そこが売り出しているペット商品のサンプルとか、ペットフードメーカーの試供品が入っている。ペット商品は随時使って不評だったらさっさと捨てているのだが、食べ物は基本的に引き出しに放り込んでおいて、今回みたいにフードを買うタイミングを外した時の緊急用にしてるんだよね。


「そう言えば、そんなのもあったっけ」

 碧がそう言いながら引き出しの中を漁った。

「お、いつものスープと同じメーカーのがあった!」

 そう言いながらスープをあげるのに使っている容器にウェットフードの試供品を入れて、水を少し足した上で源之助に出す。そうしたら待ち構えていた源之助がさっと飛びついて早速スープをぴちゃぴちゃ食べ始めた。


「いやぁ、丁度いいのがあって良かったね。

 前回切らした時に使ったからもう無いかと思ってた」

 碧がそう言いながら袋を水で洗い流し、捨てようと裏を何気なく見て……手が止まった。

「げ!!!」


「どうしたの?」

 もしかして、賞味期限切れだったのかな?

 まあ、日本の賞味期限って安全マージンを多く取ってかなり短めだって聞いた気がするから、ちょっとぐらいは大丈夫でしょ。

 食中毒になっても碧なら即座に治せるし。


「賞味期限が1年半も前だった!!」

 碧が袋をこちらに見せながら言った。


「マジ?!

 それはちょっと想定外に前のだったね。

 でも、源之助が喜んで食べてたから、変な風に劣化はしてなかったんじゃ無い?」

 犬ってガツガツ急いで食べちゃうから悪くなった餌とか毒入りの肉とかも気付かずに飲み込んじゃうらしいけど、猫はもっと用心深く味わいながら食べるらしいし、異臭がしたら口をつけないだろう。


 源之助だって碧がネットで見かけて試しに買ってみた体に良いと謳っていた発酵フードとやらは口を付けなかったから、餌として出せばなんでも食べる訳じゃ無い様だし。


「そうだよね。

 きっと製造工程で雑菌とかが全然入らなければ、実はああ言う密閉型のフードって賞味期限なんて関係ないぐらい保つのかも?

 でもまあ心配だから、取り敢えず今日は1日家に居てオンラインで授業を受ける事にするわ」

 碧が言った。


 4年にもなると、取る授業の数もぐっと減って碧も私も大学で授業があるのは週3日程度なのだが、今日は授業があるものの全部オンラインで済ます事にしたらしい。

 まあ、いくら碧でも大学に行っている間に源之助が死んじゃっていたら救えないし、死ななくても体調が急変して苦しんだら源之助が可哀想だしね。


 最悪、死んじゃったらそれこそ源之助そっくりな人形を作って貰ってそれに源之助の霊を入れて使い魔にすると言う奥の手も一応あるが、碧はそれでは嫌だろう。


 毒を飲ませたんだったらまだしも、古くなったフード程度で健康な成猫が半日も持たずに死ぬなんてことはないと思うけどね。


「そんじゃあ私は大学に行くけど、何か帰りに買ってきて欲しい物があったら連絡ちょうだい」

 日常品の買い出しにも行きたくないかもだからね。


 そう言いながら食べ終わった朝食のお皿を台所に持って行ったら、電話が鳴った。

 おや。

 退魔協会じゃん。

 まだ4月だから仕事は基本的に請けないって言ってあるのに。



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ボクの食べ物を切らすなんて 下僕失格だにゃ!
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