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問題点

「ちなみにその妹さん本人はどう思っているの?」

 本人が呪いを信じてなくって神社に行くのに後ろ向きだとしたら無理やり連れ出そうとしても誘拐扱いになりかねないし、タクシーや神社で運転手や宮司にこっそり助けを求められたらかなり切ない事になる。


「うっかり本人の前で母に呪われてるんじゃ無いかって言って、母が俺の事を散々馬鹿にしながら『呪いなんて無い』って言ったからか、今更聞いても『お母さんが反対しているから』としか言わないんだ」

 困った様な顔をしながら西江が言った。


 う〜ん、被害者本人の前で呪われてるからお祓いしようって言い出したのはちょっと無神経かも?

 まあ、本人の問題なんだから心当たりも含めて話をしない訳にはいかなかったかもだけどさ。

 イマイチ、妹さんとの関係も微妙?


「ちなみに妹さんは本人なり親なりが呪われる心当たりはあったの?」

 西江母ではなく、関係ない第三者が呪っている可能性はゼロではないからね。


「無いらしい。

 まあ、ウチに来た時はまだ中学生だったから両親が何をやっているかなんて知らなかっただけかもだが」

 溜め息を吐きながら西江が言った。


「父親には相談したの?」

 義理の妹夫婦がどんな人だったかは、知っていても不思議はない。

 子供にとって叔父叔母は『親戚の大人』と言う一括りで終わってしまうが、大人にとっては義理の家族と言うのは場合によっては面倒な利害関係が生じかねない相手なのだ。それなりに観察しているんじゃ無いかな?


「父曰く、叔父は滅茶苦茶モテる人で、叔母も誰からも好かれる明るい美人だったから、誰かが妬むことはあってもお金を払って呪詛を掛けるほどの事は無いだろうって」

 おやま。

 もしかして妹と西江母が折り合いが悪かったのって、美人で人気があった妹がイケメン男を捕まえたのを嫉妬していたって感じなの?

 西江は比較的普通な顔立ちだから、親もそれに準じたレベルな可能性はありそう。


 と言うか、どう言う経緯で自分の母親が妹と仲が悪いって知ったのか、聞きたいかも。

 大人って自分の子供の前ではそれなりに取り繕うから、嫉妬での不仲なんて絶対に隠しそうなものだが。

 お金を集りに来るとか、その他迷惑をかける様な人間だから不仲だったって言う状況だったら、普段ならまだしも娘がとばっちりで呪われているかもと言う場合だったら正直に話すだろうし。


 そう言えば。

「ちなみに西江の父親は呪詛の存在自体は信じているの?」


「存在する事は知っているが俺が視えると言うのは眉唾だと思っているみたい?

 一応昔、子供の頃に黒い霞が人に憑いてるって言ったせいで専門家に調べてもらったら才能がないと言われたらしくてね」

 西江が答えた。


 ううん?

「呪詛が存在することを信じていて、退魔師と伝手も一応あるのに、妻が呪詛なんて存在しないと断言するのには口を出さないんだ?」

 ちょっとおかしくない?


「叔母夫婦が亡くなった時に、妹を引き取るのを母がかなり嫌がってね。

 家に来てからも邪険にしていたし。入院してから人が変わった様に優しく接する様になったのを見て、父としては波を立てたくないみたいなんだ」

 西江が困った様に言った。


「ちなみに、妹さんって他に親戚はいるの?

 父親側なり、貴方達以外の母方の親族とか」

 最近は一人っ子も増えたから、親戚があまり居ない事も珍しくないと思うが、祖父母世代なら生きてそうじゃない?


「うちの母方の祖父母は生きているが、妹の実父側は居ないらしいね。

 少なくとも引き取れる人は居なかったようだし、妹が入院しても見舞いに来ていると言う話も聞かない」


 なるほどねぇ。

 西江の父親としたら、ちゃんと経済力がある自分達がいるのに孤児になった姪を養護施設に入れるのは流石に体面が悪いが、妻が引き取った姪を虐待したりしたらそれも困る。なので入院する事で波が立たないならそれが一番って事?

 典型的な事なかれ主義だね〜。

 呪われているかも知れない姪がどうなろうとあまり気にしてないのかな。

 長期入院なんてそれなりにお金が掛かりそうだけど、金で解決するなら構わないってやつかね?


「取り敢えず。

 体調不良の原因が呪いだとしたら、呪詛返しをしないと状況は改善しないと思う。

 でもよほど強い呪詛じゃない限り、しっかりと信仰心と昔からの儀式や教えを維持してきた神社で厄祓いをすれば呪詛返し出来る可能性は高いよ。

 ただしこれは神社に行く必要があるし、予約もしておく方が良いでしょう。

 そんでもって、神社に行けないとか、厄祓いでも太刀打ち出来ないぐらいな呪詛だったら退魔協会に依頼すれば、ほぼ確実に人が来て呪詛返しをしてくれる」

 それこそ、碧でも返せないような呪詛だったらもう死んでるでしょ。


「だったら退魔師に来てもらう方が良いかも?」

 西江が口にした。


「神社の厄祓い料金は5千円から1万円程度。あとはタクシー代が必要なぐらいでしょうね。

 退魔協会に依頼した場合は本当に呪詛かどうかやその強度とかを調べる調査員が来るのに数万円、実際に退魔師を派遣してもらうのに数十万円掛かると思った方が良いわよ?」

 私らの受け取る報酬が最低ラインで10万円台なので、入院する程の呪詛だったら確実に20万から50万円ぐらいはするだろう。

 想定以上にパワフルだったら100万円だってあり得なくはない。


 まあ、のたうち回って苦しんでいるんじゃ無いみたいだから、そこまで強烈な呪詛じゃあ無さそうだけど。


「数十万円?!

 こないだ君が軽く手で払っただけで消えていたじゃ無いか?!」

 西江がちょっと憤慨したように言った。


 確かに肩についていた糸を払うような仕草一つに数十万円はぼったくりに思えるよね〜。

 でも、これって特殊技能なのよ?


「こないだ無料で先生を祓っていたのは、ごく軽い呪詛だったし、講義に支障が出たら面倒だからよ。

 貴方の妹さんを助ける謂れは私には無いし、妹さんのは入院するような強い呪いなんでしょ?

 濃さが違うでしょうに」

 目に見えるなら、分かってるんでしょ?


「ああ……。そうだったな、済まない」

 西江が頭を下げた。


「ちなみに、お金よりももっと重要な問題として、呪詛って祓ったら絶対確実に呪いを掛けた人へ倍返しになるの。

 貴方の知っている誰かが妹さんを呪ったんだったら、下手をしたらその人が死ぬけど……構わないのね?」

 話を聞く限りちょっと母親って人格的問題がありそうな気もしないでも無いが、従姉妹の命を救う代わりに自業自得とは言っても死んで良いと思っているの?


 母親は呪詛で妹さんが苦しんでいる状況を活用しているだけで、呪ったのは別口かもだけど。



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― 新着の感想 ―
呪詛が見えるなら才能はありますよね 色々と怪しい点が……
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